“おくりびと” ★★
(2008年日本映画)

監督:滝田洋二郎
脚本:小山薫堂
出演:本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、杉本哲太、吉行和子

 

葬儀の際に身体を清めたり死化粧を施したりする納棺師を題材にした映画。

楽団が解散となって職を失ったチェロ奏者の小林大悟は、やむなく妻の美香を連れて故郷の山形に戻ってきます。人材募集の広告で好条件だったことから面接に出向くと、何と仕事は納棺師の仕事だったという次第。
他にできることもなく成り行きで納棺師という仕事を始めた大悟ですが、仕事への覚悟が出来た訳でなく、何となく後ろめたいものがあって妻には内緒のまま。
しかし、必然的に大悟の仕事は友人にも知られることとなり、ついには妻にも。友人も妻も大悟の仕事に嫌悪の情を示す。それでも大悟は・・・・、そしてやがて・・・というストーリィ。

良い映画でした。
題材の面白さ、魅力もさることながら、脇を固める山崎努、余貴美子、吉行和子というベテラン勢の存在が光っています。
もちろん主役の本木雅弘さんも熱演。また妻・美香役の広末涼子さんは初々しい若妻役をいかにもそれらしく演じていて好感が持てます。
ただ、納棺師の仕事をきれいに描き過ぎていると感じるところがありますが、それは納棺師を題材とした映画なのですから是とすべきなのでしょう。

ストーリィは必然的に納棺師、葬儀、死という組み合わせになりますから、目頭が熱くなってくるのは当然のことで、それは納棺師とは本来関係ないこと。
そうした感動を抜きにして、死とは何なのか、人の死を見送るとはどういうことなのか、納棺師とは必要な仕事なのか、大切な仕事なのか、と思いながら観ていました。
映画の中でみられるような、短絡的に穢れた仕事と思うことはありませんが、かといってしてみたい仕事とは思えない。でもつきつめて考えていくと、老人介護との間にどれだけ差があるのか、にも行き着いてきます。
仕事の必要度、貴賎、世間の評価、報酬とは、所詮バランスがとれない関係にあるのですね。
冒頭、納棺の仕事は“すきま産業”であると社長が言いますが、人が疎む仕事こそ尊重すべし、と感じます。

話がすっかり横道にそれてしまいましたが、静かで気持ち良い感動に包まれる好作品です。

2008.09.20

 
   


  

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