小塩節著作のページ


1931年長崎県生、東京大学独文科卒。専攻はドイツ古典主義文学。
1998年現在、フェリス女学院院長、中央大学名誉教授。

 


   

「木々を渡る風」● ★★     第97回日本エッセイストクラブ賞受賞

 

  
1998年4月
新潮社刊
(1700円+税)

2002年5月
新潮文庫化
 

  
1998/05/10

ドイツ、信州を中心に、これまで筆者が折々にふれて来た木々に対する思い、 想い出を短くまとめた56篇。

四季別にまとめられているので、季節感と共に、木々の清涼感が伝わってくるような印象を受けます。また、ドイツ、信州の木々の写真も豊富に収録されているので、木々が身近に親しく感じられます。
また、筆者の語らいは、まるで木々を長年の友人として扱っているかのようです。それだけに心地よい気分に浸りながら読むことができます。

ヘッセゲーテも引用され、クリスマスに樅の樹を祭る 由来も語られる。北欧文化や古都に触れる楽しさもあり。
ただひとつ気になったこと。
ヘッセ「ペータ・カーメンチントを真似して、筆者も一枝の花を山から折り取り、 少女に手渡したそうです。
「その少女が、いまも私のかたわらにいてくれる家内なのである」
そんな幸福な結果を得られる人間は、あまりいないのですけれど...。

   


 

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