傑作時代劇映画105本を紹介した一冊。約
600頁と分厚いし、書店の平台ではとても目立っていました。幸い図書館に入庫していたので、リクエストして良いかと迷わずに済んだ次第。
ポスターと代表的場面の写真が各作品毎に添えられているので、時代劇映画が好きな人ならとても楽しい一冊に違いありません。
ただし、時代劇映画の歴史を辿った本ではありません。著者である川本さんの好みによって選ばれた作品ばかりですから、何故あの人があまり出て来ないのか、明朗時代小説が少ない、という面はあります。その分、好みによって選ばれているだけに全体を通じて一貫しているという、明快さがあります。
川本さんの好みは、重荷を背負った孤独なアウトロー、そして壮絶な殺陣(チャンバラ)にあるらしい。
したがって、本書でもっとも目立った俳優は市川雷蔵。
孤高かつ気品のあるヒーローと言えば、市川雷蔵を置いて他にいないでしょう。「眠狂四郎」シリーズだけではありません、股旅ものの傑作「ひとり狼」、大乱闘が15分間も繰り広げられるという「大殺陣・雄呂血」など是非観てみたい。その雷蔵に明るくユーモラスな「浮かれ三度笠」(まるで山手樹一郎「わんぱく公子」的)という作品もあるというのですから、これも観てみたい。
他で目立つのは、決して主役でなく敵役が多いのですけれど、仲代達矢さん。「用心棒」「椿三十郎」「切腹」では主演の三船敏郎さんに負けず印象的ですし、「上意討ち・拝領妻始末」「いのちぼうにふろう」等々幾つもの傑作に出演しているのです。時代劇俳優という訳ではないはずなのに、これは凄い。ちょうど日経新聞「私の履歴書」を仲代さんが連載中だったので、格好のタイミングでした。
作品では、中村錦之助主演の「宮本武蔵・五部作」が断然光ります。これは武蔵の人間的成長を描いた名品であり当然のこと。
本書中出番の多いところでは、片岡千恵蔵、大友柳太郎、勝新太郎という面々が目立ちます。殺陣というと近衛十四郎さんが忘れられないのですが、登場は「十兵衛暗殺剣」他という程度。
坂東妻三郎、市川右太衛門さんの登場がないのは、活躍の時代が少し前の所為らしい。
また、時代劇は可憐な娘役を演じる女優抜きには語れないという川本さんの意見に私も同感。藤村志保さんは綺麗かつ可憐だったなぁ。岩下志麻さん、入江たか子さんの登場も多い。新東宝から流れてきた女優さんたちがとかく「元グラマー女優」と書かれているのには笑ってしまう。
※なお、最近の作品で紹介されているのは「たそがれ清兵衛」「雨あがる」「隠し剣鬼の爪」。
|