“雨あがる” ★★  
(日本映画)

監督:小泉尭史
脚本:黒澤明
原作:山本周五郎
出演:寺尾聡、宮崎美子、三船史郎、仲代達矢

 

山本周五郎原作による、庶民的な浪人夫婦を描いた、軽い一篇。
私のハンドル名の由来となっている、同じ山本周五郎原作の短篇「人情裏長屋」にも通じる作品です。

無外流道場の師範代まで勤めた剣の達人でありながら、優しすぎる性格故に、これまで2つの剣術指南役をしくじり、浪々の身にある浪人夫婦が主人公。
降り続ける雨に川止めとなり、宿で一緒になった一般の人々との交流、たまたま出会い交わることとなったその土地の藩主との交流から、物事にこだわらず、些細な幸せを大事にする夫婦、三沢伊兵衛とたよの姿が浮かび上がってくるストーリィです。
しかし、気取りのない人柄のその主人公にしてからも、時折ひとり森の中に入り込み剣を振るわないと、気持ちを穏やかに保っていることはできない。剣を離して生きる事のできない武士の性、処世の厳しさを感じさせられます。

時代劇にしては珍しいとも思える、気持ちの良い作品。
主演の寺尾聡さんは飄々とした主人公を演じ、亡父・宇野重吉さんを偲ばせるような好演。それに増して楽しんだのが、宮崎美子さん演じるその妻の爽やかさ。彼女のデビュー・ドラマを思い出させられるようで、嬉しい。

日本映画はいいなぁ、としみじみ感じた作品でした。
寺尾聡さんは、本作品にて日本アカデミー賞最優秀男優賞を受賞。

1999年ヴェネチア国際映画祭特別招待“緑の獅子賞”受賞作。

2003.07.21

 


  

 to 映画note Top     to 最近の映画 Index