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1.シルエット 3.生まれる森 4.ナラタージュ 5.一千一秒の日々 8.クローバー 9.CHICAライフ 10.波打ち際の蛍 |
君が降る日、真綿荘の住人たち、あられもない祈り、アンダスタンド・メイビー、七緒のために、B級恋愛グルメのすすめ、よだかの片想い、週末は彼女たちのもの、Red、匿名者のためのスピカ |
夏の裁断 |
●「シルエット」● ★☆ 群像新人文学賞優秀作 |
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2004年11月 2018年04月 2004/02/15 |
「シルエット」という作品を紹介するのは、あとがきの島本さん自身の言葉を引用するのが、もっとも適切でしょう。 率直にいって抽象的である印象は拭えません。 「ヨル」は作者15歳の時、「植物たちの呼吸」は16歳の時に雑誌に掲載されたという各々15頁程の掌篇。 シルエット/植物たちの呼吸/ヨル |
●「リトル・バイ・リトル」● ★★☆ 野間文芸新人賞 |
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2006年01月
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「明るい小説にしようと、最初から最後までそれだけを考えていた」というのが、島本さんのあとがき。 その言葉どおりの作品、と言いたい。 主人公は、橘ふみという高校を卒業したばかりの女の子。 |
●「生まれる森」● ★ |
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2007年05月 2018年07月 2004/02/15 |
少女から大人への移行期を、恋愛をモチーフに描いた作品。 予備校の教師との恋愛に入れ込み、その挫折から乱交に走って、あげく妊娠・中絶に至ったというのが、冒頭での主人公の置かれた状況です。 その主人公を徐々に立ち直らせたのは、夏休みの間住まわせて貰った友人のアパートでの一人生活と、高校時代の同級生キクちゃんとその兄弟たちとの新しい繋がりだった。 中年の予備校教師との恋愛関係、破綻という筋書きは陳腐という気がしますが、人と人との繋がり合うことから主人公が再生していく展開は快く、明日への希望を感じ取れるところが嬉しい。 あとがきの島本さんの言葉を紹介すると、次のとおり。 同世代の女の子を描いているだけに、清新な印象あり。 |
●「ナラタージュ」● ★★★ |
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2008年02月
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この本を読めたことを幸せに思う、本書はそんな作品のひとつです。 主人公は大学生の工藤泉。彼女は突然かかってきた一本の電話から、せっかく忘れかけていたあの人への想いを再び募らせていくことになります。 本書の素晴らしさは、大学生である作者が大学生の主人公を描いているという、まるでリアルタイムにストーリィが流れていくような清新さにまずあります。 ※「ナラタージュ」:映画などで、主人公が回想の形で、過去の出来事を物語ること。 |
●「一千一秒の日々」● ★★ |
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2009年02月
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マガジンハウスの文芸誌「ウフ」への連載作品の単行本化。 器用に立ち回ることができず、ありのままの感情でぶつかっていくが故に傷つくこともある。 脇役だった登場人物が次の篇では主人公となり、主人公だった人物が脇役となり、たすきがけリレーのように各ストーリィは渡されていきます。 ※本書の登場人物で私が好きになったのは、遠山、針谷、加納と男性ばかり3人。私にしては珍しいことですが、島本さんの願望がこめられた男性像だからかもしれません。 風光る/七月の通り雨/青い夜、緑のフェンス/夏の終わる部屋/屋根裏から海へ/新しい旅の終わりに/夏めく日 |
●「大きな熊が来る前に、おやすみ。」● ★★ |
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2010年03月
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これまでの島本作品は、若々しく温かみのあるものが殆どでしたが、本書はこれまでと趣きを異にします。比較するならば、グッと大人になったと言えるでしょうか。 恋愛もの3篇。各篇に登場する男女2人は恋人〜恋人未満、同棲〜同棲に近い間柄です。 最初の「大きな熊が来る前に、おやすみ。」は、知り合ってすぐの徹平と同棲を始めた珠実のストーリィ。優しさと暴力。危うさを孕む2人のこれからの安穏を祈らずにはいられません。 この3篇の組み合わせがあるからこそ、最後に平凡だけれども温かさのある1篇があるからこそ、読後の喜びも大きい一冊。 大きな熊が来る前に、おやすみ。/クロコダイルの午睡/猫と君のとなり |
●「あなたの呼吸が止まるまで」● ★★☆ |
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2011年03月
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うまいなぁ、島本理生。 引きずり込まれて読み進んではいたものの、最後の最後で唸らされました。「リトル・バイ・リトル」を初めとしてこれまでの作品も皆それなりに上手いと思っていたのですが、本作品はこれまた見事に上手い。 主人公は12歳の小学生、野宮朔。母親が出て行って以来、舞踏家の父親とずっと2人暮らし。公演前の父親は準備に夢中で帰宅が遅くなることも度々。父親に連れられて舞台裏にも顔を出す朔の周りはいつも大人ばかり。 単純に少女の悲劇を書いた作品ではありません。朔は暴力を受けながら、自分の中にそれを望む気持ち、欲望があったのではないかと震え慄く。年齢の割にしっかりとした少女とはいえ、その内には子供らしい不安を抱えている。その虚を衝かれたと言うべきでしょう。そこには未だ大人ではない少女の切なさ、哀しさがあります。 12歳の少女の心の内を巧みに描き出した2年ぶりの長篇。島本理生ファンには是非読み逃さないで欲しい佳作です。 ※同じ12歳の少女を描いても椰月美智子「十二歳」とは対照的。両作品を読み比べてみるのも良いと思います。 |
●「クローバー」● ★☆ |
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華子と冬治という双子の姉弟を主人公とした、大学生的青春+恋愛編といった連作ストーリィ。
華子は恋愛に積極的で、とかく他人を振り回してしまう性格。それでも憎めないのは、華子が自分の欲求に対して率直だからでしょう。 華子、冬治、雪村容、そして華子に付きまとう熊野氏という個性豊かな4人が織り成す故に、楽しくもありまた苦さもある青春+恋+成長物語。 クローバー/猛獣使い/不機嫌な彼女たち/東京、夏の陣/水面下/来訪者、いくつかの終りと始まり/淡い決意/向こう岸へ渡る ※モラトリアム…学生など、社会に出て一人前の人間となることを猶予されている状態のこと。 |
●「CHICAライフ−2003〜2006年のできごと」● ★★ |
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雑誌「ViVi」に2003年07月〜06年06月号まで連載したエッセイの単行本化+漫画家おかざき真理さんとの対談。 島本さんは真面目な文学少女というイメージを持っていたので、それなりにあっさりとした日常エッセイだろうと思い読み始めたのですが、それがとんでもない! 「問題のある男性とばかり付き合っている気がする」という冒頭の一文、ええっ、と思いましたが、読み進んでいくと判ります。島本さん、結構いろいろな男性と付き合ってきたらしい。意外や意外だなぁ・・・。 本エッセイならではの面白さは、各篇の末尾に「その後」がつけ加えられていること。これが結構面白いのです。 |
●「波打ち際の蛍」● ★☆ |
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2012年07月 2008/08/13 |
島本さん自身「あとがき」にて、「もう一度初心に返りたい、という気持ちがじょじょに強くなり、今、この小説を書き終えて、ようやく「ただいま」と言えた気がします」と語っているラブ・ストーリィ。 主人公は、前の恋人からDVを受け、人と関わり合うのが恐くなってしまっている女性、川本麻由。 DVの経緯がとくに語られる訳でなく、麻由と蛍の少しずつ少しずつ進捗し、まだまだ先が長いだろう様子が純粋に描かれるストーリィ。 |
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