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1.十二歳 2.未来の息子 3.しずかな日々 5.みきわめ検定 7.るり姉 9.坂道の向こうにある海(文庫改題:坂道の向こう) 10.フリン |
ダリアの笑顔、市立第二中学校2年C組、恋愛小説、純愛モラトリアム、どんまいっ!、かっこうの親もずの子ども、シロシロクビハダ、その青のその先の、消えてなくなっても、未来の手紙、伶也と |
伶也と、14歳の水平線、明日の食卓、見た目レシピいかがですか?、つながりの蔵、さしすせその女たち、緑のなかで、昔はおれと同い年だった田中さんとの友情、こんぱるいろ彼方、純喫茶パオーン |
ぼくたちの答え、ミラーワールド、きときと夫婦旅、ともだち、みかんファミリー、ご利益ごはん |
●「十二歳」● ★★☆ 講談社児童文学新人賞 |
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2007年12月
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主人公のさえは、小学6年、12歳。子供から脱皮する年頃を迎えた少女の微妙に揺れる心の内、戸惑いを新鮮に描いた好作。
さえはポートボール大会でも活躍するし、ピアノの発表会もそこそこにこなし、絵も上手、水泳も得意、おまけに成績も上々と、要するに何でも人並み以上にできる子である。 小学生から中学生になるというのは、子供時代において大きな変化の時期だと思いますが、それにしてもさえの場合は極端に過ぎる。 ※同じ12歳の少女を描いても島本理生「あなたの呼吸が止まるまで」とは対照的。両作品を読み比べてみるのも良いと思います。 |
●「未来の息子」● ★★ |
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2008年02月
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一般的に短篇集というと、同じ傾向の作品がまとめられていることが多いのですが、本書はその点各篇の趣きがバラバラ。 ユニークで心温まる話があると思えば、不気味でどう捉えれば良いのか迷う話があったりと、ちと困惑してしまいました。 ユニークで心温まる話は「未来の息子」と「月島さんちのフミちゃん」。 いずれもなんとなく不思議でよく判らないながらも、後味が濃く残るといった短篇集。 未来の息子/三ツ谷橋/月島さんちのフミちゃん/女/告白 |
●「しずかな日々」● ★★★ 野間児童文芸賞・坪田譲治文学賞 |
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2010年06月
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本書に描かれているのは、ごく普通の小学生の、ごく普通の日常生活の日々に過ぎません。 でもそこには、自分の前に世界が開けているという実感があります。何とそれは輝かしく、明るく、楽しい日々であることか。 全ての子供たちにこんな輝いている日々があったらどんなに幸せなことかと思わざるを得ません。 ただしそれは読み終えてから思うこと。読んでいる最中はただ、主人公の枝田光輝(みつき)と一緒になってこの幸せな日々を過ごす楽しさを満喫するのみです。 これだけストーリィの中に入り込んでいることが楽しく、かついつまでも忘れたくない余韻を残す作品はそうあるものではありません。 多くの子供たちに是非読んで欲しい一冊。お薦めです。 なお、ストーリィは次のとおり。 |
●「体育座りで、空を見上げて」● ★★ |
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主人公・和光妙子の中学3年間をつぶさに描いた、青春&成長ストーリィ。
プロローグは、小学校生活最後の学活から。 よくもまぁ中学生の心の内をこうも見事に描けるものだなぁ、と感心することしきり。そうだったよなぁ、こんなだったよなぁ、と心の底から懐かしさが込み上げてくる気がします。 プロローグ/一年三組/二年七組/三年九組/エピローグ |
●「みきわめ検定−超短編を含む短編集−」● ★☆ |
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2012年06月
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椰月さんの「あとがき」にある一文をそのまま引用すると、 日常の中で見過ごしていること、見なかったふりをしたこと、取り返しのつかないこと、そこに隠されている心理と真実、その発見。そんな、カーヴァーの書く「やっちまった感」が大好き、とのこと。 本書に収録されているのも、そんな趣向の短篇ばかり。 そんなことあるなァ、そんなこと思ってしまうことあるよなァ、と楽しい短篇もあれば、ちょっと理解できないままの短篇もあります。 その中で抜群に面白かったのは、表題作の「みきわめ検定」。 日常生活、切り出してみようと思えば、いろいろなストーリィが生まれるものなのかもしれない、と納得。 みきわめ検定/死/沢渡のお兄さん/六番ホーム/夏/と、言った。/川/彼女をとりまく風景/きのこ/クーリーズで/西瓜 |
●「枝付き干し葡萄とワイングラス−超短編を含む短編集−」● ★★ |
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2012年06月
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本書「あとがき」によると、収録されている短篇はいずれも、椰月さんが「読みたいと思う短編」で、いずれ陽の目をみられたらいいなあと思いつつ書き留めておいたものだそうです。
ありふれた日常生活のある一時を切り出したストーリィ。 本書中、最も共感してしまうのは「風邪」。判るなぁ、そうなんですよねぇ、熱が出て寝込んだ前後の気分は。 城址公園にて/風邪/夜のドライブ/たんぽぽ産科婦人科クリニック/プールサイド小景(仮)/七夕の夜/枝付き干し葡萄とワイングラス/甘えび/おしぼり/どじょう |
●「るり姉(ねえ)」● ★★ |
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2012年10月
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「るり姉」という題名から連想するのは、エレノア・ポーターの名作「スウ姉さん」。 時代の違いもあるでしょう、スウ姉さんが身を犠牲にして家族のために尽くすという典型的な長女気質の女性だったのに対し、本書のるり姉は、その奔放な明るさ故に姪の三姉妹に慕われる叔母という立場。 本ストーリィの中心となる渋沢家は、看護師として働く母親が早くに離婚したため、高校生のさつきを筆頭に、中学生のみやこ、小学生のみのりという女性ばかりの一家。 るり姉は常に明るく、元気良く、皆がその明るさに鼓舞され、元気を出すことができるという存在。 登場人物一人一人の生き生きとした人物造形がたっぷり楽しめる、愛すべき家族小説。 さつき−夏/けい子−その春/みやこ−去年の冬/開人−去年の秋/みのり−四年後春 |
●「ガミガミ女とスーダラ男」● ★☆ |
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2013年07月
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「Webちくま」に20.05.09〜21.04.24の間連載された、抱腹絶倒の夫婦バトル物語。 読み始めたすぐそばから、なっ、何なんだ、この夫婦は!のひと言。 椰月さんのあとがきを読むと、コレ、小説ではなく、エッセイなんですよねぇ・・・・。 それにしてもまぁ、よくぞここまで・・・・。 |
●「坂道の向こうにある海」● ★★ |
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2013年04月
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小田原にある同じ特養老人ホームで働く同僚だった4人を主にして描く、恋愛成長ストーリィ。 朝子と正人は現在恋人同士の関係にあるが、元々正人は朝子の5歳下の同僚=梓の恋人だった。略奪愛という結果になったが、朝子が梓に申し訳ないと思うのは、正人と関係ができてから3ヶ月間それを梓に内緒にしていたこと。 恋愛というのは唯一無二のものではない、幾度か経験することによって自分の恋愛関係も成長していくものである、ということを謳ったストーリィ。 主役となる4人が代わる代わる第一人称の主人公、語り手となるので、本人たちの心の有り様がすんなりと受け止められ、読み易い。 |
●「フリン immorality」● ★★☆ |
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2013年01月
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題名の“フリン”、即ち“不倫”。 ただ、本書を読むと、一口に“不倫”といっても実に様々な姿があるなぁというのが実感。 本連作短篇集の主人公たちは、いずれも<リバーサイドマンション>の住人。 ちなみに、「葵さんの初恋」ではその初々しさが気持ち好く、次の「シニガミ」ではその結末に因果応報と思い、「最後の恋」では中年サラリーマンの一途さに思わず陶然。 葵さんの初恋/シニガミ/最後の恋/年下の男の子/魔法がとけた夜/二人三脚 |
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