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52.旅立ノ朝-居眠り磐音江戸双紙51.- 53.声なき蝉-空也十番勝負 青春篇 No.1- 54.恨み残さじ-空也十番勝負 青春篇 No.2- 55.剣と十字架-空也十番勝負 青春篇 No.3- 56.異郷のぞみし-空也十番勝負 青春篇 No.4- 57.未だ行ならず-空也十番勝負 青春篇 No.5- |
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無月ノ橋、探梅ノ家、残花ノ庭、夏燕ノ道、驟雨ノ町、蛍火ノ宿、紅椿ノ谷、捨雛ノ川、梅雨ノ蝶、野分ノ灘 |
鯖雲ノ城、荒海ノ津、万両ノ雪、朧夜ノ桜、「居眠り磐音江戸双紙」読本、白桐ノ夢、紅花ノ邨、石榴ノ蝿、照葉ノ露、冬桜ノ雀 |
侘助ノ白、更衣ノ鷹(上下)、孤愁ノ春、尾張ノ春、姥捨ノ郷、紀伊ノ変、一矢ノ秋、橋の上、東雲ノ空、秋思ノ人 |
春霞ノ乱、散華ノ刻、木槿ノ賦、徒然ノ冬、湯島ノ罠、空蝉ノ念、弓張ノ月、失意ノ方、白鶴ノ紅、意次ノ妄 |
※ → 「空也十番勝負」 公式サイト
51. | |
「居眠り磐音江戸双紙50. 竹屋ノ渡」 ★☆ |
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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第50巻。 若かった坂崎磐音も既に48歳、嫡男の空也も早や14歳です。 御側御用取次に復職した速水左近の念願ということもあり、その仲介により磐音、空也父子が11代将軍の家斉に召し出されます。そしてその拝謁の場で、磐音が家斉から神保小路での直心影流尚武館道場の再興を命じられ、空也もその後継を命じられます。 その一方、豊後関前藩の中居半蔵からは磐音の父で未だ国家老の職にある坂崎正睦の体調不良と、その間隙を突くような不穏な空気のあることが知らされ、完結編である51巻へと繋がっていきます。 |
52. | |
「居眠り磐音江戸双紙51. 旅立ノ朝」 ★★ |
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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズの第51巻、最終巻。 エピローグ後編は、前編「竹屋ノ渡」からさらに2年後、舞台は豊後関前です。 |
53. | |
「声なき蝉-空也十番勝負 青春篇-」 ★★ |
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“居眠り磐音江戸双紙”シリーズ完結を以て始められた新シリーズ。磐音の嫡子=坂崎空也を主人公とする、青年剣客による武者修行ストーリィ。 “十番勝負”と副題されているからには少なくとも10巻が予定されているのでしょうか。 本書はその最初となる<1番勝負>の巻。 “磐音”最終巻「旅立ちの朝」の最後、空也は家族に別れを告げて武者修行に旅立ちますが、最初に目指した先は薩摩藩。他国者の出入りを厳しく排除し、またお家流である東郷示現流は門外不出として秘匿している特異な藩。 当然ながら空也が簡単に薩摩藩に立ち入れる筈もなく、上巻では何とか薩摩藩への道を探る空也と、それを断じて妨げようと執拗に空也をつけ狙う外城衆徒(正規の藩士ではないらしい)との苛烈な戦いが描かれます。 下巻は、外城衆徒の放った毒矢に傷つけられ滝壺に転落した空也が、瀕死の状態で川を流されているところを幸いにも助けられ、2ヶ月後にようやく意識を取り戻した後のストーリィ。 空也を救ったのは、薩摩八代藩主の御側御用を長年務め、江戸から所領地に戻る途中の渋谷重兼と江戸育ちのその孫娘=眉月。 そのおかげで空也は、薩摩藩内で重兼の庇護のもと、示現流とは同根同流ともいえる野太刀流を修行できることとなります。 題名の「声なき蝉」とは、肥後藩内~薩摩藩内と自らの出自を隠すため<無言の行>を貫き口が利けないふりを通したことと、地上に出るまで7年間を地中で過ごす蝉に、空也が自分を模したことからの題名。 16歳から18歳までの2年余に亘る空也の成長と眉月との恋が描かれ、本上下巻とも読み応えはたっぷりです。 “磐音”の場合は故郷で親友との死闘、脱藩とマイナスからのスタートでしたが、空也の場合にはそれがなく、爽やかで天分に溢れた青年剣士としての、未来に向けた清新なストーリィに仕上がっています。 また“磐音”でのおこんに勝るとも劣らないヒロイン=眉月の存在も魅力的。 これからの展開がとても楽しみです。 (上巻) 序章/1.十六の夏よ/2.関所の舞い/3.国境めぐり/4.再び矢立峠へ/5.願掛け行 (下巻) 1.眠りの中で/2.再起/3.薬丸新蔵/4.具足開き/5.赤松の囚われ人/終章 |
54. | |
「恨み残さじ-空也十番勝負 青春篇-」 ★★ |
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“空也十番勝負 青春篇”第2弾。 薩摩藩を出た空也は人吉藩に戻り、タイ捨流丸目道場で修業を続けます。 道場主の丸目種三郎は、空也を狙う東郷示現流との関わりを承知したうえで滞在を認めます。 その道場で空也が親しく交わるのは、常村又次郎。 丸目に滞在を許されたからといって空也は城下の人吉だけに留まらず、人吉藩内の山中に分け入り厳しい修業を引き続き重ねようとします。その過程で、山賊たちとの対決、秘境の村=五箇荘樅木への立ち入りも。 そして空也を狙うことを諦めない酒匂兵衛入道の弟子たちとの闘い、最後はその一人との勝負が<二番勝負>となります。 青春&風雲といった印象が強く、ドラマチックな展開だった「声なき蝉」に比べると随分穏やかになってしまったと感じますが、そこはそれ、薩摩藩が格別の場所だったと思うべきでしょう。 本作でも、着実に成長していく空也の姿が感じられ、それなりに楽しめました。 前作で印象的だった登場人物、空也と互いに恋し合う渋谷眉月、武名を上げんと江戸に乗り込んだ野太刀流の薬丸新蔵も再び姿を見せるところは嬉しいこと。 続刊が楽しみです。 1.新入り門弟/2.江戸の旋風/3.樅木の郷/4.五木の子守歌/5.ふたたびの |
55. | |
「剣と十字架-空也十番勝負 青春篇-」 ★☆ |
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“空也十番勝負 青春篇”第3弾。 第1・2弾で凡そのストーリィ方向は見えて来たので、興味は少々減った観あり。それでも読むのは惰性でしょうか。 前巻の最後で行く先不明のまま船に乗り込んだ空也が行き着いたのは、五島列島の福江島。 しばし肥前福江藩下の、樊噲(はんかい)流桜井冨五郎道場に滞在し、道場弟子たちと交流を深めた空也でしたが、東郷示現流の追手たちの気配を感じてさらに中通島へ。 さらにそこで出会った謎の女=しまの協力依頼を受け入れた空也は、しまの雇い入れた船で、肥後丸の主船頭である奈良尾の治助との落ち合い場所である野崎島へと向かいます。 隠れ切支丹が住むという野崎島には、しまが追っている長崎の出島から出奔したプロシヤ人神父、その正体は恐るべき異人剣士マイヤー・ラインハルトが潜んでいる筈。 3番勝負の相手は異人剣士、というのが本巻の設定ですが、そこにそれ程の面白さはありません。 本巻の面白さは、見知らぬ土地への旅行き、私も行ったことのない五島列島の島めぐり、というところにあると言ってよいでしょう。実際、地図を眺めながら五島列島のことを少しは知ることができた、という気分です。 もちろん江戸での磐音や薬丸新蔵の様子も、折々に織り込まれています。 空也の旅程を磐音に知らせるのは、薩摩藩の渋谷重兼と、その孫娘で空也の想い人でもある眉月という次第。 1.島の道場/2.福江の海と山/3.小梅村の新蔵/4.島の女/5.異人の剣技 |
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「異郷のぞみし-空也十番勝負 青春篇-」 ★ |
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“空也十番勝負 青春篇”第4弾。 率直に言って、もはや惰性で読んでいる、という感じです。 それでも、青春ストーリィという趣きがあるからこそ、引き続き読んでしまいます。 前作の舞台である五島列島から再び船に乗った空也が向かった先は、高麗(朝鮮)を目にできる地=対馬。 そこでは対馬藩と朝鮮との交易を探る公儀隠密と関わったことから、対馬藩からも追われることに。対馬藩と手を結んだ朝鮮剣士たちが空也の後を追います。 対馬から脱出した空也は壱岐島に寄り、壱岐島に隠れ住むように暮らしていた剣士と交流します。 そしてさらに、平戸島へ。 何やら、武者修行であることは誤りないにしろ、どこか島巡り観光をしているような印象も否めず、そして人との交流もあまり濃くならず転々としているという風で、何となく物足りなさを感じる次第。 一方、江戸の坂崎磐音一家、尚武館道場の様子も描かれますが、こちらはすっかりホームドラマになった風。 “空也”シリーズの中では、物足りない巻になりましたね。 1.陸影はるか/2.尚武館の具足開き/3.薩摩からの便り/4.猿岩の二人/5.高麗剣法 |
57. | |
「未だ行ならず-空也十番勝負 青春篇-」 ★☆ |
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“空也十番勝負 青春篇”第5弾にして完結編。 冒頭、長崎街道を歩き、大村を経て空也は長崎へ。 途中の大村から道連れとなったのは、篠山小太郎と名乗る剣士。気さくな反面、正体不明なところもあり、という人物。 長崎に着いた空也が早速訪ねたのは、五島列島で出会った長崎会所の密偵=高木麻衣。 次いで対馬の杣小屋で出会った長崎奉行所の密偵=鵜飼寅吉。 その2人のおかげで長崎奉行=松平石見守に面談した空也、石見守の命により江戸から奉行所に赴任してきた配下の「大坂中也」という偽名をもらい、長崎奉行所の長屋を住まいとして修業を続けます。 舞台が長崎、そして長崎会所と長崎奉行所の庇護下にあるということで、これまでの4作に較べて割と平穏。 空也が麻衣に案内され長崎を歩くあたり、空也らと一緒に当時の長崎を観光して回っているような楽しさあり。 また、かつて父・磐音が長崎にやって来た時に出会った望海楼の女将らと空也が会う場面には懐かしさ余りあります。 とはいいつつ、空也と薬丸新蔵を流派の仇と執拗に狙う東郷示現流酒匂一派の陰が常にちらつきます。 一方、幾つかの事柄が本作で決着がついていく、という印象。 渋谷眉月が江戸へ戻ることを決め、祖父の重兼と一緒に長崎で空也に再会。その後江戸に戻った眉月は尚武館道場へ。磐音・おこん・睦月らと会い、空也との仲が皆に認められた形に。 さらに睦月の縁談がまとまります。 そして最後は、酒匂兵衛入道の次男=次郎兵衛と新蔵が江戸で対決、嫡男=太郎兵衛と空也が長崎で対決し、本作の幕が下ろされます。 なお、「空也十番勝負」と名付けられながら五番勝負が終わったところでの完結の由。 著者の佐伯さん自身が喜寿(77歳)を過ぎ体調維持が難しくなったこと、空也も20歳となりもはや「青春篇」とも呼べまいということで「空也十番勝負 青春篇」で了とすることにした、とのことです。 予想外の結末で終わったことからその後を確かめたいという思いがある一方、正直なところホッとする気持ちもあり。 いずれにせよ、空也と眉月2人の元気な姿をまたお目にかかりたいものです。 (上巻) 1.改名/2.父の秘密/3.新蔵の迷い/4.小太郎の正体/5.過ぎし日に (下巻) 1.エリザ号入港/2.江戸戻り/3.長崎の眉月/4.同門勝負/5.崇福寺の戦い |
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