奥田英朗作品のページ No.2



11.純平、考え直せ

12.我が家の問題

13.噂の女

14.沈黙の町で

15.ナオミとカナコ

16.我が家のヒミツ

17.向田理髪店

18.ヴァラエティ

19.罪の轍

20.コロナと潜水服


【作家歴】、イン・ザ・プール、マドンナ、野球の国、空中ブランコ、サウスバウンド、ララピポ、ガール、町長選挙、家日和、オリンピックの身代金

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リバー、コメンテーター

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11.

●「純平、考え直せ」● ★★☆


純平、考え直せ画像

2011年01月
光文社刊

(1400円+税)

2013年12月
光文社文庫化



2011/02/24



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坂本純平、21歳
現在、新宿歌舞伎町をシマとする六明会傘下の
早田組に所属する、ヤクザ2年目のチンピラ。
なんて恰好の良い人だろうと兄貴分=
北島敬介に憧れて暴力団入りしたものの、いざ入ってみると部屋住みで雑用に追われる奴隷のような日々。こんな筈じゃなかったと後悔する一方、いずれはと夢を抱くという、複雑な状況。
そんな純平、いきなり親分に呼びつけられたと思ったら、敵対する組の幹部を殺ってくれと、
鉄砲玉を命じられます。
粋がって引き受けたものの、実行日まで僅か3日。その間、純平の身の上に何が起きるのか?というストーリィ。

なんてうまいストーリィ設定だろうと、舌を巻きます。
残された時間は○○というストーリィは病気による余命○○まで、というのもありますが、
ベニオフ「25時という本書によく似たストーリィもあります。
しかし、それらの作品と違って本作品が輝いているように感じられるのは、ヤクザ間の抗争、鉄砲玉という愚かしい犯罪を描くストーリィでありながら、何ともユーモラスで温かな雰囲気が次第に満ちていくからです。

純平が暴力団に入ったのは、家族に恵まれず、孤独で、ほかに居場所がなかったから。
それなのに、純平が鉄砲玉になることを打ち明けた途端、大勢の人たちが純平のことを心配してくれることが明らかになります。純平、決して一人ではなく、実は大勢の人と繋がっていたのです。
人間は決して一人ではないんだ、ということを改めて感じさせられた一冊。
本ストーリィでは、何と言ってもネットの使い方が上手い!
何度も唸らされてしまう、痛快な佳作。お薦めです。

                

12.

●「我が家の問題」● ★★☆


我が家の問題画像

2011年07月
集英社刊

(1400円+税)

2014年06月
集英社文庫化



2011/07/23



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柴田錬三郎賞を受賞した家日和に続く“平成の家族小説”シリーズ第2弾、6篇を収録。
絶妙の面白さという点では、「家日和」以上と感じます。

「甘い生活?」の主人公は、妻の待つ家に帰りたくない新婚の夫。他5篇とは少し趣向が異なりますが、家に帰りたくないという主人公の気持ち、判るんだなぁ。
「ハズバンド」の主人公は、会社で夫はお荷物な存在なのではないかと気づいた妊娠中の妻。
 ※この2篇、主人公が妻、夫を評して言う表現が上手い!
「絵里のエイプリル」の主人公は、実は両親、お互いに離婚したがっているのではないかと気づき動揺する女子高生の娘。主人公を女子高生に設定したことで、傑作と言いたい面白さが生まれました。
「夫とUFO」は、UFOを見た、宇宙人と交信中と語る夫の身を心配する妻。
「里帰り」は、結婚して初のお盆休み、お互いの実家への帰省をどうしようかと悩む新婚夫婦。共通の悩みをもつご夫婦はきっと多いことでしょうね。
「妻とマラソン」は、妻がランニングにはまった理由を知って気遣う小説家の夫。本篇は「家日和」に収録されている「妻と玄米御飯」大塚康夫・里美夫婦が再登場。前作から4年後の物語です

それぞれユーモラスなドラマが展開されるのですが、夫あるいは妻を真剣に心配するのも大事な家族だからこそ。そこに確かな愛情が感じられて、実に気持ち良い。
「我が家の問題」という表題、滑稽さを表すものかと思って読み始めたのですが、本人たちにとっては真剣にならざるを得ない問題。読み終わってから初めて、中々味のある題名であると感じた次第。
6篇を読む中で良いなぁと感じたのは、どの主人公も悩みを打ち明ける、悩みを相談する仲間をしっかり持っていること。
そう、一人で解決できない家族の問題も、相談できる相手がいれば道は開けるというものです。

重松清さんの温かな家族小説とは一風異なる、切なさと絶妙の面白さを兼ね備える傑作家族小説。お薦めです!

甘い生活?/ハズバンド/絵里のエイプリル/夫とUFO/里帰り/妻とマラソン

              

13.

●「噂の女」● ★★☆


噂の女画像

2012年11月
新潮社刊

(1500円+税)

2015年06月
新潮文庫化



2013/01/04



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舞台はある地方都市。その中でさらに小さな社会での事々が各章にて描かれます。
会社同僚、麻雀仲間、料理教室、親族、パチンコ仲間、託児所、談合仲間、檀家、警察署、議員とその支持者といった具合に。
そんな各章の共通項となっているのが、
糸井美幸という若い女。大して美人でもないが、肉感的な魅力をもっていて如何にも男好きしそうな女。そして様々な噂有り。というのが「噂の女」という題名の所以。

その美幸、各章ごとにその姿をどんどん変えていきます。中古車販売会社の女事務員、麻雀荘の店員、結婚準備中の女、老社長の愛人、同・後妻、クラブのママ、檀家総代、事件容疑者、県会議員の愛人、と。
いかにも金持ちの男を手玉にとってのし上がった悪女、という風なのですが、それ程の悪女とは感じられないところが面白さ。
所詮小さな地方都市でのこと。うまくやった、のし上がったからといってたかがしれたもの、可愛げさえ感じられる、ということなのです。

奥田さん、本書で書きたかったのは、市井のちっちゃい人たちのちっちゃい話、普通の人たちの間で交わされるどうでもいいおしゃべり、だそうです。
糸井美幸という強烈なキャラクターが地方のちっちゃい人たちに対して際立っているために、ついつい美幸に気を引かれてしまうのですが(私も男性なので)、実はその背後にある地方都市のちっちゃさこそが本書の面白ではあるまいか。
かつての同級生に電話すればすぐ美幸の噂が耳に入る。談合組織や市役所との癒着を大事にするのも地方社会だからこそ、等々。
そう見極めると、各章、ちっちゃい人たちの愚痴ばかりの会話も実に身近な話題で、リアルにユーモラスなのです。

強かな女の成り上がり物語+地方都市のちっちゃさぶり、人の好さぶりを描いた連作風小説。 面白いこと、請け合いです。

中古車販売店の女/麻雀荘の女/料理教室の女/マンションの女/パチンコの女/柳ヶ瀬の女/和服の女/檀家の女/内偵の女/スカイツリーの女

                     

14.

「沈黙の町で」 ★★


沈黙の町で画像

2013年02月
朝日新聞出版

(1800円+税)

2016年01月
朝日文庫化



2013/06/01



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中学校内で、男子生徒が倒れ死んでいるのを教師の一人が発見します。どうやら所属しているテニス部の部室棟屋上から転落死したらしい。事故か、あるいはイジメを苦にした自殺か、それとも・・・。
生徒の死からその真相を巡って、生徒たち、生徒の親、警察・新聞社等々へと波紋は広がっていき、やがて大きくそして長く関係した人々の心を揺るがしていく。
彼の死の真相は何だったのか。関係者の心中を描いていく過程で徐々に事件の経緯が明らかにされていく、というストーリィ。

なにやら宮部みゆき「ソロモンの偽証」三部作に似た事件です。
しかし事件の真相は、生徒たちではなく、警察や検事の手によって諦めることなく追及されていきます(現実ではすぐ事故として片づけられてしまうようなが気がしますが)。
事件発生後すぐ、同じテニス部の2年生4人がイジメの傷害容疑で警察に逮捕(内2名は14歳未満のため補導・児童相談所送り)されたことによって、被害者の親族、逮捕された生徒の親たち、学校の教師たちの状況を大きく揺るしていきます。

本作品については、事件、ミステリが主眼なのではなく、多くの人々の心が様々に揺るがせられていくその様子を描き出すことに主眼があるように感じます。その契機となる事件として、事故か自殺かはっきりしない生徒の死こそ、これ以上相応しいものはない、ということではなかったか。
そして、中学生の胸の内は大人とはまるで違うものであること、大人たちがまるで思ってもみなかった想いや経緯が中学生たちの間に隠されていた、という事実が強く印象に残ります。

    

15.

「ナオミとカナコ」 ★★


ナオミとカナコ画像

2014年11月
幻冬舎刊

(1700円+税)

2017年04月
幻冬舎文庫化



2014/12/04



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学生時代からの親友同士である女性2人が主人公。
小田直美は、ストレスの多い老舗百貨店の外商レディで未だ独身、一方の加奈子は銀行員の夫を持つ専業主婦。
その加奈子が夫の激しいDVに日常的に晒され、怯え慄いて訴え出ることも出来ないでいると直美が知った時・・・・。
いつしか2人は、加奈子の夫である
服部達郎を殺害して排除するしかないと心に定めます。

共犯者となって犯罪行為を実行するに至るまでには、直子と加奈子それぞれに鬱屈した毎日がある訳ですが、だからといっても2人の計画と行動は余りに稚拙。率直に言って、うゎーっと目を覆いたくなる程です。
その後は一頁一頁、ヒヤヒヤ、ハラハラドキドキするばかり。
本作品の紹介文に
「やがて読者も2人の<共犯者>になる」とありましたが、こうしたことを意味していたのかどうかはともかくとして、しばしば心臓に悪いとまで感じてしまうのは、共犯者同等の心理状態にあるから、でしょうか。

完璧な犯罪を目指すサスペンス、完璧と思われる犯罪を解明する見破るミステリ、それに対して本作品は全く異なる展開です。
全く新しい趣向のサスペンス、と言って良いでしょうか。

読み手である自分まで追い詰められた気分になり、読み終えた時にはもう、ヤレヤレのひと言に尽きます。

本作品を気に入るかどうかは読み手の好み次第かもしれませんが、一旦読み始めたらずぶずぶと足を取られてしまうストーリィです。ご用心を、そしてハラハラドキドキを満喫してください。

「ナオミの章」は犯行以前、「カナコの章」は犯行以後を描くストーリィ。

ナオミの章/カナコの章

         

16.
「我が家のヒミツ ★★


我が家のヒミツ

2015年09月
集英社刊
(1400円+税)

2018年06月
集英社文庫化



2015/10/28



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家日和我が家の問題に続く“平成の家族小説”シリーズ第3弾、6篇収録。

「虫歯とピアニスト」の主人公である敦美は、自分たち夫婦に子供はできそうもないと感じている。
「正雄の秋」の主人公である植村正雄53歳は、同期でライバルの河島が営業局長に昇進、反対に自分は昇進の道を外れると知り、動揺する気持ちを抑えきれずにいる。
「アンナの十二月」の主人公であるアンナ16歳は、生れてすぐ離婚したと母親から教えられた実父に、初めて会いにいく。演出家という華やかな実父と、スーパー店長である平凡な父親をついつい比べてしまうのだが・・・。
「手紙に乗せて」の主人公である亨の母親が53歳で急死。残された父親は呆然自失状態が続いているが、上司である部長は何故か亨の父親のことを気遣ってくれ・・・。
「妊婦と隣人」の主人公である葉子は、第一子出産を控えて産休中。出入りも殆どなく、物音も殆ど立てないマンションの隣人が気になって仕方なくついつい・・・・。
「妻と選挙」は、前2作でも登場した大塚康夫・里美夫婦がまたしても登場。今回は、里美が市議会議員に立候補すると言い出し・・・。

どの篇にも、微妙な味わいと面白さがあります。じわーっと込み上げてくるユーモアもありますし、家族こその温かみも感じることができます。
本書収録の各篇に共通するの(秘密)は、秘めた思いやり、のようです。特に敦美の夫である孝明、正雄の妻である美穂、アンナの継父という各人の主人公に対する気持ちには、じーんと来るものがあります。
ストーリィといい、語り口といい、流石奥田さんは上手い!

異色の展開である「妊婦と隣人」は、意外性に面白さあり。
また、「正雄の秋」と「手紙に乗せて」は私と同世代であるだけに身に染みて感じられます。
3回目の登場となった大塚夫婦については何をか況や。これからも常連メンバーで居てほしい処です。


虫歯とピアニスト/正雄の秋/アンナの十二月/手紙に乗せて/妊婦と隣人/妻と選挙

         

17.
「向田理髪店 ★★☆


向田理髪店

2016年04月
光文社刊
(1500円+税)

2018年12月
光文社文庫化



2016/05/09



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本書の舞台は北海道中央部にある苫沢町。財政破綻して以来町は寂れていく一方で、将来に何の希望も見いだせないという過疎の町・・・と聞けば、苫沢町が夕張町をモデルにしているのは明らかでしょう。
そんな苫沢町を舞台に、寂れる一方の町、その町で暮す住民たちの様子を描いた連作風長編。
本書にて狂言回しと言うべき存在は、町の噂が集まりやすい理髪店の、ネガティブ思考の店主=
向田康彦

“町物語”と言えば
アンダスン「ワインズバーグ・オハイオ」以来数多くの作品をこれまで読んできましたが、本書についてちょっと異なると感じるのは、町が“舞台”ではなくそのまま“主役”になっている処だろうと思います。
最初こそ、寂れていく一方で何の魅力も感じられないようなこの苫沢町ですが、各篇ストーリィを味わう内に次第に気持ちが変化し、最後には苫沢町も捨てたものじゃないと明るい気持ちになれたのですから、この辺りの匙加減はやはり奥田さんならではの上手さでしょう。

「向田理髪店」:札幌で会社勤めをしていた息子の和昌が突然家業を継ぐと帰郷しますが、康彦はとても喜べず・・・。
「祭りのあと」:幼馴染の老父が突然倒れる。心配なのはむしろ看病する老妻の方なのだが・・・。
「中国からの花嫁」:国際見合いによる中国人花嫁とはいえ野村大輔40歳がようやく結婚し、皆はお祝い気分なのですが、大輔本人は皆を避ける風。
「小さなスナック」三橋早苗42歳が帰郷してスナックを新規開店。男共は興奮して足繁く店に通いますが・・・。
「赤い雪」:映画のロケ地に苫沢町が選ばれ、一時ながら町に活気が生まれるのですが・・・。
「逃亡者」:町出身の広岡秀平が詐欺グループの主犯格として指名手配されるという事態に皆が愕然。町の皆が心配したのは秀平の両親のこと。

向田理髪店/祭りのあと/中国からの花嫁/小さなスナック/赤い雪/逃亡者

         

18.
「ヴァラエティ variety ★☆


ヴァラエティ

2016年09月
講談社刊
(1200円+税)

2019年09月
講談社文庫



2016/10/16



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単行本未収録の短編x6、ショートショートx1、対談x2をまとめた一冊。
奥田さん曰く、まとまらなかった短編集、眠っていてお蔵入りしたかもしれない作品たち、とのこと。

「おれは社長だ!」「毎度おおきに」は、よく考えもしないままに準大手の広告代理店を退職して独立起業した中井和宏、38歳を主人公にした連作。独立して社長という立場になると、会社員時代とは異なる苦労、変貌もできるという、リアルでユーモアもある2篇。
「ドライブ・イン・サマー」は、アメリカ映画によくあったスラップスティックコメディ(ドタバタ劇)。いくら肉感的な美女とはいえ、マイペースで信じ難い行動をする女性を妻にした結果、思わぬ災難が巻き込まれてしまったという滑稽な篇。

「住み込み可」:最後のオチがそうなるとはなぁ。もう歴史の一幕になった感じもします。
「セブンティーン」:母親だから判る娘の企み。母親には母親の課題がある、という処でしょうか。
「夏のアルバム」:ちょっと心に残る一辺。

イッセー尾形さん、山田太一さんとの対談では、奥田さんの素顔が覗けるという楽しみあり。

題名どおり、ヴァラエティに富んだ、奥田さんらしい一冊と言えます。


おれは社長だ!/毎度おおきに/<対談>奥田英朗Xイッセー尾形:「笑いの達人」楽屋ばなし/ドライブ・イン・サマー/<ショートショート>クロアチアvs日本/住み込み可/<対談>奥田英朗×山田太一:総ての人が<人生の主役>になれるわけではない/セブンティーン/夏のアルバム/あとがき

          

19.

「罪の轍 ★★


罪の轍

2019年08月
新潮社

(1800円+税)

2022年12月
新潮文庫



2019/09/14



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東京オリンピックを目前に控えた昭和38年の東京が舞台。
空き巣による仕業か、と思われた元宝石商老人の殺害事件。
そして続いて起こったのは、町の豆腐屋に過ぎない両親の末っ子である男の子の誘拐&身代金要求事件。
それぞれの事件で容疑者として浮上したのは、共に北国訛りのある、そして知能足りずを莫迦にされている若い男・・・。

犯人側において脳機能障害のある
宇野寛治という若い男、犯人を追う警察側においては警視庁捜査一課の若い刑事=落合昌夫を、それぞれ主軸にして、犯人・警察の両方の側から描いた社会派長篇ミステリ。

警察の捜査過程、犯人側の様子、その両面を順々と描いていく展開だけに、何故事件が起きてしまったのか、それに対する警察の捜査ぶりはどうだったのかが、読み応え十分に書き綴られていきます。

どんな事情があっても殺人事件というのは辛い後味が残るものですが、宇野寛治という青年の半生余りに切ない。
何故利尻島を出て東京に行きたいと思ったのか、東京で出会った人間たちにどういう思いを抱いたのか、何故黙秘を貫かず事情聴取にあたかも積極的に応じるのか・・・・。

かつてあの頃を舞台にした社会派ミステリ、
水上勉「飢餓海峡」、松本清張「砂の器」等に連なるものが本作にはあります。

・・・というのは模範的感想ですが、実は個人的に面白かったのは、あの頃の時代性が描かれている処。
東京から利尻島まで、青森まで急行あるいは特急〜青函連絡船〜さらに鉄道とどれだけ時間がかかったことか。
身代金要求の声を録音するためにソニーからテープレコーダーを借りたり、捜査陣への連絡は無線機がないため機動的に動けず、電話は公衆電話か自宅電話かいずれにせよ固定型、日韓間に国交が回復していないため逃走犯の追及ができない、等々。
とくに鉄道旅好きには、急行「八甲田」と特急「しらとり」、所要時間も含め惹かれますね〜。

           

20.

「コロナと潜水服 NOVEL CORONAVIRUS AND DIVING SUIT ★★


コロナと潜水服

2020年12月
光文社

(1500円+税)

2023年12月
光文社文庫



2021/01/25



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現代の、大人の、おとぎ話、と言いたい短篇集。

ちょっとした壁にぶつかってしまった主人公たち。そんな時、彼らが出会った不思議なものは・・・。
それらの不思議さが、絶妙に楽しいのです。
だから読み終わった時には実に爽快で、開放感たっぷり。
コロナ感染への心配ばかりで憂鬱な日々の中、思いがけない贈り物をもらった気分です。

その中で
「コロナと潜水服」、コロナは勿論分かりますが潜水服とは何ぞや? この篇、実にユーモラス。
また、
「パンダに乗って」は、私の好きなロードノベル。この篇を最後に置いているところに拍手、です。

「海の家」:49歳の小説家。妻の不倫が明らかになり謝罪されますが、どこか妻は平然としている様子。怒りを抑えきれず、海の近い葉山で古い一軒家を借り、一人暮らしを始めるのですがそこで出会ったのは・・・。
「ファイトクラブ」:早期退職勧告を拒否したために郊外の工場に警備員補佐として左遷された会社員5人。古いスポーツ用具を取り出して遊んでいたところ、そこに現れたのは・・・。
「占い師」:プロ野球選手の恋人。調子が上がれば距離が遠ざかって焦り、調子が落ちれば頼って来る。フリーアナウンサーの主人公は占い師にいろいろ相談するのですが・・・。

「コロナと潜水服」:5歳の息子に何と、コロナ感染の危機を察知する能力が備わっていたとは! 濃密接触者となってしまった主人公、さぁどうする?
「パンダに乗って」:願い叶って中古のイタ車“フィアット・パンダ”を新潟で手に入れた主人公。さぁ東京へ帰ろうと古いカーナビの電源を入れたのですが、「案内を開始します」と言いながら案内する先は、思いも寄らぬ処ばかり・・・。

海の家/ファイトクラブ/占い師/コロナと潜水服/パンダに乗って

   

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