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12.水辺にて 13.この庭に 14.f植物園の巣穴 15.『秘密の花園』ノート 16.渡りの足跡 17.ピスタチオ 18.不思議な羅針盤 20.雪と珊瑚と |
西の魔女が死んだ、丹生都比売、エンジェルエンジェルエンジェル、裏庭、からくりからくさ、りかさん、春になったら苺を摘みに、家守綺譚、村田エフェンディ滞土録、ぐるりのこと |
エストニア紀行、鳥と雲と薬草袋、冬虫夏草、海うそ、丹生都比売−梨木香歩作品集−、西の魔女が死んだ−梨木香歩作品集−、私たちの星で、椿宿の辺りに、歌わないキビタキ |
●「沼地のある森を抜けて」● ★ |
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2008年12月
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題名、そして「からくりからくさ」に連なるという帯の宣伝文句からして情趣ある不可思議な物語を予想していたのですが、それとはちょっと異なる展開。 主人公は、一人住まいの独身OL・上淵久美。やはり独身OLだった叔母の時子が亡くなった後、上の叔母である加世子に説得され、時子のマンションと共に先祖伝来のものというぬか床を引継ぎます。 フリオのために/カッサンドラの瞳/かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話1/風の由来/時子叔母の日記/かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話2/ペリカンを探す人たち/安世文書/かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話3/沼地のある森 |
●「水辺にて」● ★☆ |
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2010年10月
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川、湖にカヤック(極北等に住むイヌイットが工夫した小舟)を浮かべ、水面を滑るように漕いでいくと、そこには地面の上から見るのとは違った景色が見えてくる。 確かにその通りでしょう。水面近くにいると目線は低く、周囲は静かで木々や風や鳥の様子がよく見えるようになる。その辺りのことは、カヌーイストである野田知佑さんのエッセイにも書かれていること。 風の境界1〜2/ウォーターランド1〜2/発信、受信。この藪を抜けて/常若の国1〜3/アザラシの娘1〜3/川の匂い 森の音1〜3/水辺の境界線/海からやってくるもの/「殺気」について/ゆっくりと/隠国の水1〜2/一羽で、ただただじっとしていること |
●「この庭に−黒いミンクの話−」●(絵:須藤由希子) ★ |
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2007/01/09 |
「からくりからくさ」のラストでマーガレットが産んだ赤ん坊、ミケルを主人公にした物語とのこと。 北の地の雪に囲まれた家の中に篭って日々を過ごしているミケルが主人公。 最後の数頁で、それらは皆ミケルが高熱を出して寝込んでいる間にみた夢だったと明かされます。 |
●「f植物園の巣穴」● ★☆ |
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2012年06月
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主人公はf植物園に勤める技官。 最初からそうだと言ってもらえればもう少し読みようがあったと思うものの、後にして判るからこその妙味、と言えばそうなのかもしれません。 よく判らないまま読み終わろうとしていたところ、最後の僅か5頁で、優しく吹き付けてきた風がそれまでの鬱陶しさをきれいに吹き払い、温かい景色を目の前に繰り広げて見せた、という風。 |
●「『秘密の花園』ノート」● ★★ |
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ズバリ、バーネットの名作「秘密の花園」にかかる、梨木香歩さんによる案内本、解説本です。 何も解説本を読まなくったって、「秘密の花園」の素晴らしさは十分味わえる、というのは事実でしょう。 インドにいた頃のメアリと、ヨークシャに来てから変わり始めたメアリを象徴するものは何か。 「秘密の花園」ファンに是非お薦めしたい一冊。僅か70頁というこの薄い一冊を読むだけで、さらに同作品を読む楽しさが広がる筈です。 |
●「渡りの足跡」● ★★ 読売文学賞(随筆・紀行賞) |
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2013年03月
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梨木さん自ら、鳥の渡りを追ったエッセイ。 単なるバード・ウォッチングの観察エッセイではありません。梨木さんの目は、鳥たちを人間と同じようにとらえています。 梨木さんは鳥の渡りを追って、自らもカムチャッカ半島まで足を伸ばします。そして、知床で見たオオワシの姿を、この土地でも見い出すのです。思わず、梨木さんと一体になって興奮してしまう場面。 鳥の渡り、鳥や小動物たちの人生ドラマに、違う場所に移り住んだ人々の勇気あるドラマを重ね合わせたエッセイ本。 風を測る/囀る/コースを違える/鳥が町の上空を通過してゆく/渡りの先の大地/案内するもの/もっと違う場所・帰りたい場所 |
●「ピスタチオ pistachio」● ★★ |
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2014年11月 |
本書の舞台はアフリカ、ウガンダ。 主人公はフリーライターの「棚」こと山本翠。 まるで符丁が合うかのように、棚とアフリカの関わりが急速に中待っていく中、不思議な出会いが棚を待ち受けているという展開は 、梨木さんらしいストーリィ。 アフリカの大地を舞台にした不思議な出会いと言っても、その背後には人と人、さらには人と生き物の関わりを深く感じます。まるで悠久の世界観を語っているようなストーリィ。 |
●「不思議な羅針盤」● ★ |
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2015年10月 2011/01/21 |
2007〜09年雑誌「ミセス」に連載されたエッセイの単行本化。 そう、身近な周辺事で、ふと気が付いたことについて語っているという感じです。 いかにも梨木さんらしいなと感じる点は、ほぼ共通して、梨木さんとその対象物との関わり具合、という視点があること。 |
●「僕は、そして僕たちはどう生きるか」● ★★ |
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14歳のコペル君、染織家の叔父さん=ノボちゃんから、清浄なヨモギの生えているところを知らないかと聞かれ、思い出したのはユージンの家のこと。 でもそれはあくまで舞台設定にしか過ぎません。 本書は、人が生きていく上での究極のテーマに触れた作品。 |
●「雪と珊瑚と」● ★★★ |
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2015年06月
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最初の1頁を読んだだけで、主人公の珊瑚、そして珊瑚を主人公とする本ストーリィに強く惹かれました。その辺りは流石。 珊瑚は、母親が失踪し高校中退して以来一人で生きてきた女性。20歳で結婚したものの1年で離婚、今は赤ん坊の雪を抱え、仕事探しの前に託児所探しをしている身の21歳。 何より良いのは、珊瑚そして雪の、母娘の成長ストーリィとなっているところです。 都合が良過ぎる、現実はこんなにうまくいくなんてことはない、という常識論を振りかざすのは野暮というもの。本書の魅力は、あくまで珊瑚と雪という母娘の清冽なビルドゥングロマンにあるのですから。 |
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