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30.公孫龍 巻一 青龍篇 31.公孫龍 巻二 赤龍篇 32.公孫龍 巻三 白龍篇 33.公孫龍 巻四 玄龍篇 |
【作家歴】、重耳、晏子、孟嘗君、楽毅、星雲はるかに、太公望、華栄の丘、子産、沙中の回廊 |
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三国志(第5~12巻)、孔丘 |
30. | |
「公孫龍 巻一 青龍篇」 ★★ |
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2024年04月
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「公孫龍」という名前、宮城谷作品を読んできた中で聞いたような気もしますし、思い違いかもしれませんが、何となく聞き覚えがあるといった程度。 Wikipedia で検索すると、中国戦国時代の政治家・思想家、論理学者とのこと。一方、詭弁家とも言われたらしい。 それはともかくとして、本巻は公孫龍の誕生と、最初の歩みを描くストーリィです。 主人公は、<周王朝>の王子稜。しかし、王子稜の生母死去の後に父王の夫人になり上がった陳妃が悪計を企み、<燕>に人質として送られることになったばかりか命まで狙われます。 燕へ赴く途中にそうと知った王子稜は、自分を船が転覆して死んだことにし、「公孫龍」という名を以て自由な商人として生きる道を選びます。 そんな公孫龍を、周から付き従ってきた家臣らが支えます。 折しも偶然、強国<趙>の公子2人(後の恵文王・平原君)を賊の襲撃から救ったことから厚遇を受け、飛躍の端緒を掴みます。 久しぶりの宮城谷作品、中国の大河歴史小説ということで、胸がワクワクします。 その理由として、公孫龍が国に仕えず縛られず、自由な立場でいることを貫こうとたからだろうと思います。 同時代ということで、<斉>の孟嘗君の名前も登場しますし、公孫龍が<中山国>の将軍であった楽毅と直接出会う場面もあります。 思い返せば、宮城谷作品の中で「孟嘗君」「楽毅」は、私が特に面白いと感じた作品。公孫龍と合わせ皆、国から自由であったところが共通点です。 ストーリィ展開は、順調に行き過ぎという面は勿論ありますが、テンポが早く、また風雲児的成長譚という趣きもあって楽しいことしきり。 次巻が楽しみです。 人質の旅/山賊との戦い/王の書翰/太子の席/公子何の客/剣と刀/光と影/月下の闘い/北の天地/郭隗先生/燕王の賓/旭放と光霍/主父の招待/山中の光明/中山滅亡/楽毅のゆくえ |
31. | |
「公孫龍 巻二 赤龍篇」 ★★ |
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2024年05月
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第二巻。 まずは趙における内乱、主父と長子=公子章と、次子で既に王位を継承した恵文王の側との間に起きた争いに公孫龍たちが巻き込まれます。 次いで舞台は燕に。そこでは楽毅が魏から燕王への使者として訪れてきて、公孫龍は楽毅を燕に留めようと奮闘。 その後に公孫龍は、斉から仕入れた塩の代金である黄金の運搬を命じられ、斉へと向かいます。 斉を訪れる折角の機会、孟嘗君との出会いを公孫龍は期待したのですが・・・。 宮城谷さんの中国歴史小説は、重厚なものが多いという印象なのですが、本作については軽やかさが感じられ、だから楽しい、そして楽に読んでいけます。 その理由は、公孫龍が自由な立場にあるからでしょう。 請われても王にも誰にも仕えず、国にも囚われることはありません。その自由さを公孫龍自身が満喫している処があるから、また楽しい。 今後、孟嘗君や楽毅とどう関わっていくのか。 孟嘗君や楽毅と同時代の人物、という処にも魅力を感じます。 沙丘の風/主父の陰謀/肥義の死/沙丘の乱/夏の戦陣/安陽君の死/乱の終熄/苦難の大商人/新制の国/楽毅の到着/辛抱の秋/堂の蟋蟀/暗中飛躍/田甲事件/ふたつの井戸/運命の明暗 |
32. | |
「公孫龍 巻三 白龍篇」 ★★ |
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稀代の名将=楽毅との関りが増していく本巻、俄然面白くなったと感じます。 前半、様々に有能な人物が、公孫龍という人物、その行動に惹かれてその周りに集まってきます。 読んでいてもそれは感じられること。その理由は、公孫龍が国という枠に縛られず、自分自身が信じる正義を基準として行動しているからに他なりません。 後半、趙の恵文王と燕の昭王の間を公孫龍が繋ぎます。 二人の王が連携するに至ったのも、間に立った公孫龍という人物を、二人の王それぞれから信頼を勝ち得ているが故。 そして本巻で最も面白い部分へと進みます。 斉に対して趙・秦・燕・魏・韓の五国連合が成立、楽毅率いる燕軍が先頭に立ち、斉への侵攻に向かいます。 その辺りは「楽毅」で読んでいる筈なのですが、すっかり忘れているので、興奮しながら楽しめた次第。 さてこの後、本物語はどう進むのか。次巻が楽しみです。 製鉄事業/崖上(がいじょう)の囚人/雪中の救出/西帝と東帝/好機到来/東征の軍/策の陰陽/凱旋のあと/消えた公孫龍/盗賊退治/外交の術/若者たち/連衡の軍/済西の戦い/臨淄(りんし)制圧/ふたりの公孫龍 |
33. | |
「公孫龍 巻四 玄龍篇」 ★★ |
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ついに最終巻。 楽毅による斉侵攻の途中、そしてその後が各国の争いが描かれます。 楽毅を信頼していた燕王が死去し、楽毅を嫌っていた太子が王位を継承したことから楽毅は趙に亡命、それを機に燕の国力は著しく低下していきます。 一方、孟嘗君が死去した後の薛は、5人の息子たちの間で後継争いが生じ、ついには斉と魏の陰謀により滅ぼされてしまう。 そうした中で、武力を増す秦による他国侵略の勢いは止まらず、という状況。 そうした情勢の中で、「飄々」と言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、公孫龍は自在に各国を行き来し、自分の考えに基づいて正しい道を歩んでいく。 それは、どの国にも属さず、地位や褒賞を求めない、そんな姿勢を一貫して守っているからでしょう。 また、地位がないからこそ他人への羨望や見下すことがない、そうした自由さ、柔軟さこそ公孫龍という人物の魅力に他ならないと、改めて感じます。 なお、「連載を終えて」では“戦国四君”の内、斉の孟嘗君のみを描き、他の三君は描くに至らなかったこと、また趙の平原君(本作に登場)についての考え等が明かされており、成程と得心しました。この章も見逃せない処です。 この最終巻を読み終えて、満足です。 和氏の璧/完璧/豪商たち/飢える燕/あらたな危道/周の危機/莒(きょ)の城/薛(せつ)の内訌/楽毅の亡命/後継者/刎頸の交わり/栄枯の道/恵文王の覚悟/川と城/閼代(あつよ)の戦い/沙丘ふたたび/連載を終えて |
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