小池真理子作品のページ


1952年東京生、成蹊大学文学部卒。編集者、フリー・ライターを経て、78年に発表した「知的悪女のすすめ」がベストセラー。89年「妻の女友達」にて第42回日本推理作家協会賞(短篇部門)、96年「恋」にて 第114回直木賞、98年「欲望」にて島清恋愛文学賞、2006年「虹の彼方」にて柴田錬三郎賞、13年「沈黙のとき」にて第47回吉川英治文学賞を受賞。

 


 

●「 恋 」● ★            直木賞

 

 
1995年10月
早川書房刊

1999年4月
ハヤカワ文庫化

 2003年1月
新潮文庫化

  
1999/11/03

1972年、連合赤軍による浅間山荘事件の傍らで、もうひとつの事件があった。
その25年後、当時女子大生であった主人公・
矢野布美子により、 事件の真相が一人称で語られていく、というのが本書のストーリィ。
布美子がアルバイトに通うこととなった大学助教授・
片瀬信太郎には、捉えがたい魅力を持った妻・雛子がいた。片瀬の自宅に通ううち、布美子はまるで絡めとられるように、優雅かつ奔放に振舞う2人の虜になっていきます。さながら、蝶が蜘蛛の巣にかかるように。その結果、3人の間に倒錯的と言うべき親密な関係が 出来上がっていきます。しかし、それは永久に続くものではなかった...
この作品と同じような官能的な雰囲気を、以前どこかで味わったなあと考えたら、三島由紀夫が思い出されました。しかし、三島と比較すると、本ストーリィには奥行きがないように思えます。三島の描いた世界は、もっと徹底していたものではなかったか。本書では、読みつつ3人の関係に入り込めない、すぐ壁にぶつかってしまう、と感じざるを得ませんでした。女性の読者であれば、もっと違った印象を受けるのでしょうか。
本書は、完成度の高い作品かもしれません。でも、私個人としては最後まで没入できなかった作品です。

 


 

to Top Page     to 国内作家 Index