1995年10月
早川書房刊
1999年4月
ハヤカワ文庫化
2003年1月
新潮文庫化
1999/11/03
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1972年、連合赤軍による浅間山荘事件の傍らで、もうひとつの事件があった。
その25年後、当時女子大生であった主人公・矢野布美子により、
事件の真相が一人称で語られていく、というのが本書のストーリィ。
布美子がアルバイトに通うこととなった大学助教授・片瀬信太郎には、捉えがたい魅力を持った妻・雛子がいた。片瀬の自宅に通ううち、布美子はまるで絡めとられるように、優雅かつ奔放に振舞う2人の虜になっていきます。さながら、蝶が蜘蛛の巣にかかるように。その結果、3人の間に倒錯的と言うべき親密な関係が
出来上がっていきます。しかし、それは永久に続くものではなかった...
この作品と同じような官能的な雰囲気を、以前どこかで味わったなあと考えたら、三島由紀夫が思い出されました。しかし、三島と比較すると、本ストーリィには奥行きがないように思えます。三島の描いた世界は、もっと徹底していたものではなかったか。本書では、読みつつ3人の関係に入り込めない、すぐ壁にぶつかってしまう、と感じざるを得ませんでした。女性の読者であれば、もっと違った印象を受けるのでしょうか。
本書は、完成度の高い作品かもしれません。でも、私個人としては最後まで没入できなかった作品です。
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