伊岡 瞬作品のページ


1960年東京都武蔵野市生、日本大学法学部卒。2005年「いつか、虹の向こうへ」にて横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。

  


     

●「桜の咲かない季節」● ★☆


桜の咲かない季節画像

2012年08月
講談社刊

(1600円+税)

  

2012/09/08

  

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ヒロインの桜子は古い一軒家で亡父の跡を継いで占い師。
主人公であるフリーカメラマンの
耕太郎は、桜子の幼馴染で、その家の一部屋を仕事部屋として使わせてもらっている関係。実は耕太郎、ずっと桜子を好いているのですが、桜子の父親であった七ノ瀬天山の死に責任を感じている引け目から、その気持ちを打ち明けられないでいます。
桜子が関わることになった数々の難題。その解決のため背後で耕太郎が活躍するというパターンの連作風長篇小説。
“連作短篇集”ではなく“連作風長篇小説”と思うのは、2人の恋の行方もまた本ストーリィにおける重要な関心毎だからです。
占い師といえば
瀬尾まいこ「強運の持ち主を思い出しますが、本作品では桜子が不運な事柄についての予見能力を備えているという設定ですから、その分スリリング。

「守りたかった男」は、酒乱の妻に始終暴力を振るわれている鉄道模型好き夫という夫婦に起きた事件の真相を、耕太郎が突き止めます。
「翼のない天使」は、ずっと絶縁状態になる母娘の和解相談を受けた桜子のため、耕太郎があれこれと奮闘。
「ミツオの帰還」は、問題児が帰ってくるという噂を聞いた耕太郎が桜子を守るため、過去の事件を聞いて回る内に真相に迫ります。
「水曜日の女難」は、耕太郎が若い美人からしきりに纏わりつかれるという話。桜子との関係は大丈夫か?
「桜の咲かない季節」は、えっ桜子が廃業?という話。

桜子と耕太郎のコンビが楽しいのは勿論ですが、2人を見守る商店街の面々("情報部"とか)も好ましい。
各篇ストーリィの中身はバラエティに富んでいてそれなりに楽しめますが、やはり注目点は2人の恋模様。占い師相手の恋は、苦労が多いようです(笑)。

守りたかった男/翼のない天使/ミツオの帰還/水曜日の女難/桜の咲かない季節
※「翼のない天使」に登場した名作映画は「市民ケーン」と「素晴らしき哉、人生!

 


  

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