“市民ケーン ★★
CITIZEN KANE
(1941年アメリカ映画)

制作・監督:オーソン・ウェルズ
脚本:オーソン・ウェルズ、ハーマン・J・マンキヴィッツ
主演:オーソン・ウェルズ、ジョゼフ・コットン

 

昔から評判の高い作品でした。一度は見ておきたいという気持ちから借りました。今は、う〜ん、こういう映画だったのか、という思い。
見て楽しいという映画では全くありません。名作だと心から思う作品でもありません。しかし、オーソン・ウェルズの次第に鬼気迫っていくような演技、カメラには、圧倒されてしまったという映画ではあります。当時と現在の60年という時代の差も大きいと思います。当時としては衝撃的な映画だったのかもしれません。
映画は、新聞王であり、大実業家・大富豪だったチャールズ・ケーンの死から始まります。早速ニュース映画会社が、ケーンの生涯をまとめたものを制作します。しかし、ありきたりである、もっと何かないか、ということから、ケーンの最後の言葉となった
バラの蕾の謎を追うことになります。
そうした設定のもとで、ケーンの生涯が語られていきます。
幼くして両親の元を離れたケーンは、25歳で自分の自由になる莫大な財産を手中にし、新聞経営に乗り出します。そして、大統領の姪との結婚、州知事選への立候補。しかし、選挙中2番目の妻となる歌手とのスキャンダルを暴かれ、政治生命を失う。かつては市民の側になって、企業経営者らの不正を攻撃していた筈のケーンでしたが、選挙落選後はむしろ市民と敵対するかのような行動振りが窺えます。
子供時代に母親の愛情から引き離されたケーンは、人を愛することを知らず、他人に自分への奉仕的な愛を要求するのみ、という人物になっていた。彼の生涯には、幸福という言葉が全く無縁なものであった、という気がします。フビライ汗の建てたという宮殿から名前をとった、ザナドゥという広大な邸宅も、むしろ虚しいばかり。
バラの蕾の謎は解明されないまま、ストーリィは終わります。しかし、最後に炉の火の中で燃えるバラの蕾という名のある家具のようなもの。
画面でよく判らなかったのですが、ケーンが母親から別れる雪の中でもっていた橇にように思えます。母親の愛情から幼くして引き離されたことが、ケーンの人生の分かれ目になっていた、それを象徴するのが
バラの蕾と書かれた橇だったのではないかと思います。
第三の男以上に、 オーソン・ウェルズの凄みを感じさせられた映画でした。

本作品は、1941年度アカデミー賞オリジナル脚本賞を受賞。

                                                                            

2000.04.09

 


 

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