誉田
哲也作品のページ No.3



21.ドンナ ビアンカ−恋愛捜査(魚住久江)シリーズNo.2−

22.
増山超能力師事務所

23Qrosの女

24.ケモノの城

25.歌舞伎町ダムド−歌舞伎町セブンNo.2−

26.インデックス−姫川玲子シリーズNo.7・短篇集−

27.武士道ジェネレーション−武士道シリーズNo.4−

28.硝子の太陽N(ノワール)−歌舞伎町セブンNo.3−
  (文庫改題:ノワール-硝子の太陽−)

29.硝子の太陽R(ルージュ)−姫川玲子シリーズNo.8−
  (文庫改題:ルージュ-硝子の太陽−)

30.増山超能力師大戦争


【作家歴】、妖の華、吉原暗黒譚、ジウT、ジウU、ジウV、ストロベリーナイト、ソウルケイジ、シンメトリー、武士道シックスティーン、武士道セブンティーン、武士道エイティーン

 誉田哲也作品のページ No.1


インビジブルレイン、歌舞伎町セブン、感染遊戯、レイジ、ドルチェ、あなたの本、あなたが愛した記憶、幸せの条件、ブルーマーダー

 誉田哲也作品のページ No.2


ノーマンズランド、あの夏二人のルカ、ボーダレス、歌舞伎町ゲノム、背中の蜘蛛、妖の掟、もう聞こえない、オムニバス、フェイクフィクション、アクトレス

 誉田哲也作品のページ No.4


妖の絆、ジウX、マリスアングル 

 誉田哲也作品のページ No.5

  


    

21.

「ドンナ ビアンカ Donna Bianca ★★


ドンナビアンカ画像

2013年02月
新潮社刊

(1500円+税)

2016年03月
新潮文庫

2020年06月
光文社文庫



2013/03/20



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ドルチェに続く所轄署刑事=魚住久江もの、第2弾。
姫川玲子”シリーズのような殺人事件を扱うのではなく、生きた人間の事件を扱う、女性刑事だからこそ活きるところありということで、名付けて“恋愛捜査”シリーズなのだそうです。
本書題名、イタリア語で「ドンナ」とは女性、「ビアンカ」とは白い、という意味だそうです。題名からして女性に捧げる想いを感じさせられます。

さてストーリィ。水商売で女手一つで育ててくれた母親も既に死去し、今は誰も身寄りはないまま一人生真面目に働いてきた村瀬という男性が登場します。
その村瀬のストーリィと並行して、中野署管内で飲食店チェーンの役員が誘拐されるという事件が発生、魚住久江が練馬署から指定捜査員として加わる事件捜査ストーリィが進行します。
当然ながら2つのストーリィは関連している訳ですが、量的にはほぼ拮抗していてどちらが主ストーリィとも言い難い様相。事件捜査は現在進行形、村瀬が主人公となる部分は事件発生に至る背後事情を描く構成となっています。

ストーリィ全体としては、事件捜査部分より、村瀬という41歳の独身男性の中国人キャバ嬢=瑤子に対する切ない恋心に引っ張られているのは間違いない処。その恋愛ストーリィを捜査側から魚住久江が支えるという構図になっています。

本作品の読み処は何と言っても、村瀬と瑤子2人が胸に抱いている純な想い。とくに村瀬の瑤子に対する想い、行動は、そんじょそこらの恋愛ものに引けを取りません。

凶悪事件、サスペンスが目当ての方には物足りない事件捜査ものでしょうけど、恋愛もの好きな方には是非お薦めしたいところです。本書はそんな、新趣向の恋愛&事件ものシリーズ。

         

22.

「増山超能力師事務所 ★☆


増山超能力師事務所画像

2013年07月
文芸春秋刊
(1500円+税)

2016年05月
文春文庫化



2013/08/09



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新シリーズのスタート、とのこと。
超能力者となればどんなストーリィなのか。さぞやSF的であろうと思いきや、ちと風変わりな興信所物語というところ。
超能力者が数多くいる現在、ようやく13年前に
超能力者協会が発足し、その能力程度に応じて一級超能力師、二級超能力師という資格認定が行われることになった、というのが舞台設定。

本作品の主役となる増山超能力師事務所は、所長の増山圭太郎が一級、住吉悦子が一級合格間近、ブ男の中井健が二級、一番下っ端の高原篤志が漸く6年かかって二級に合格したばかり。そして経理担当のおばちゃん事務員の大谷津朋江を加えて総勢5人というのが冒頭の体制。超能力師とはいえ、やっている仕事は浮気調査等々、一般の興信所と大差はないというのが苦しいところ。
超能力と言っても超能力が万能である訳でもなく、それはそれで苦労あり。普通の人間が当然に経験から察することのできることを超能力頼みだからかえって気付かなかったりすると、朋江の超能力者評は手厳しい。

冒頭からユーモラスな雰囲気あり。二級にも合格できていない超能力者を何と言うかというと「無能力者」だそうですから噴飯してしまう。
中途半端な超能力などかえって無い方が幸せかもしれない。でも備わってしまっているからにはそれに応じた生き方をするしかないというのは、サラリーマン共通の悩みとイコールのようで親近感が大いに湧きます。
シリーズ1作目である本書は、上記5人+αが各々抱えている事情を含めての登場人物紹介という傾向が強い。本当の面白さは次巻以降なのでしょう。
   
まずは楽しく読めればいいかなと思う次第。
畠中恵“しゃばけ”シリーズの舞台を現代に置き換えて、さらに誉田哲也風にアレンジするとこうなる、という印象の一冊です。

1.初仕事はゴムの味/2.忘れがたきは少女の瞳/3.愛すべきは男の見栄/4.侮れないのは女の勘/5.心霊現象は飯のタネ/6.面倒くさいのは同性の嫉妬/7.相棒は謎の男 

                

23.
「Qros(キュロス)の女」 ★☆


Qrosの女画像

2013年12月
講談社刊
(1600円+税)

2016年09月
講談社文庫化

2022年07月
光文社文庫


2014/01/28


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姫川玲子”シリーズでハードな警察サスペンスの書き手というイメージの強い誉田さんが、あえて別趣向をとして「幸せな嘘の物語」として書いた長編作品。
ストーリィの舞台は芸能界、それも芸能雑誌記者の視点から描いたところがミソ。でもそこにもミステリ要素が混じります。

QrosのCM美女がいつのまにかネットで話題になっている。美しさだけでなく、CMで共演した他の人気俳優・女優たちを喰ってまさに主役といった存在感を放っているため。しかし、彼女の正体は一切伏せられていて皆目不明。“Qrosの女”とは一体何者なのか。
彼女の正体をめぐって、芸能雑誌記者たちが動き始めます。如何にもミステリあるいはサスペンス小説風の展開ですが、その正体は意外にあっさりと明かされます。
しかし、そこからが本書の読み処。謎をめぐって芸能記者、謎の美女本人、芸能プロダクション、俳優たちが蠢き始めます。
本書は各章で主人公を変え、各人の視点から描くことによってストーリイを立体的に浮かび上がらせることに成功している、という印象です。

最初こそサスペンス小説風でしたが、終わってみれば軽快な都市型ドタバタ劇とも言えます。それでもスリリングさ、ユーモラス、意外や意外といった要素がてんこ盛り、それなりに楽しめました。
しかし、現代社会においてネット上の攻撃とは何と恐ろしいことか。大衆雑誌の暴露記事など大したものではないよなぁと思えてきます。

     

24.
「ケモノの城 ★★


ケモノの城画像

2014年04月
双葉社刊
(1600円+税)

2017年05月
双葉文庫化



2014/05/10



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17歳の少女=香田麻耶が警察に保護を求めてきます。足に生爪が無いばかりか身体中に長い期間に亘って暴力を受けてきたような傷跡。監禁および暴力事件か。
さっそく所轄署の刑事が麻耶が監禁されていたマンションに駆け付け、その部屋にいた30代女性を署に連行します。
麻耶の証言によると自分に暴力を加えていたのは「
ウメキヨシオ」という男性と「アツコ」という女性の2人、そして部屋の所有者である父親の靖之は2人に殺されたという。
改めて警察がその部屋を捜索したところ、浴室の壁から大量のルミノール反応(血痕)が見つかります。事件は即、親子殺傷事件として捜査本部が設置され、刑事たちの捜査が本格的に開始される・・・というストーリィ。

しかし事件はその後、驚くべき展開を告げます。信じ難いような事実が次々と現れ、刑事たちの捜査が進むに連れ驚くべき事実が明らかにされていきます。
そもそもアツコという女性は誰なのか? 複数人の夥しい血痕は誰のものなのか?
姫川玲子”シリーズを初めとして誉田作品には信じ難いような残虐な場面が登場しますが、本書はそれを遥かに凌駕し、ミステリ、サスペンス、犯罪小説という枠を易々と越えて、まるで鬼畜が遺した残虐劇としか言いようのないドラマが展開します。
目を覆いたくなるような展開であるものの、誉田さんの筆力に圧倒されて全く目を背けられません。

ストーリィは、麻耶・アツコという2人から始まるドラマと、同棲中の若い恋人=
辰吾聖子のドラマが並行して進みます。
問題のウメキヨシオという男性はどんな人物だったのか。それは中々明らかにされませんが、本書で本当に恐ろしいのは“感染”という事実です。
その意味が実感として判るのは本書を読んでみてのこと。
読了後は、まるで暴風に蹂躙された気分。

       

25.
「歌舞伎町ダムド ★★


歌舞伎町ダムド画像

2014年09月
中央公論新社
(1600円+税)

2017年02月
中公文庫化



2014/11/02



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直接的には歌舞伎町セブンの続編となる物語ですが、歌舞伎町封鎖事件ジウの延長線上にもある物語。

冒頭、自らをジウの後継者と自称する残虐性嗜好をもった殺し屋が登場します。その殺し屋が名乗っている名前が「
ダムド」、本作品の表題でもあります。
そのダムドが殺した相手は、偶然にも
“歌舞伎町セブン”が依頼を受け同夜に殺そうとしていた相手。
そして「ジウ」にも登場した新宿署の
東(あずま)弘樹警部補が登場。ある人質立てこもり事件の発生以降、何者かが東を付け狙います。
その東を間に挟み、正体不明の
“新世界秩序”を継承する一味と歌舞伎町セブンのメンバーが対立する、というストーリィ。

相変わらず誉田さんが描く殺戮シーンは残虐性極まりないものですが、そこが誉田サスペンスの迫力でもあり魅力なのですから、見過ごすことはできません。
ただ、表題にもなっているというのに殺し屋のダムド、その残虐性の一方でどこか間が抜けたようなところがあり、本書の読み応えを多少減じていることは否めません。
なお、前作で新たに歌舞伎町セブンのメンバーとなった女殺し屋の
ミサキ、彼女の経歴が本書で明らかにされますが、何とまぁ驚き。

※歌舞伎町を舞台とする裏社会での争闘ストーリィ、まだまだ続きそうです。

  

26.

「インデックス INDEX」● ★★


インデックス画像

2014年11月
光文社刊
(1500円+税)

2017年08月
光文社文庫化



2014/12/06



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姫川玲子”シリーズ、第7弾。今回は短篇集。

池袋署強行犯係担当係長としての活躍から、警視庁初任時の事件と部下に関する回想、そしてついに本庁に復帰してからの事件と、様々な事件における玲子の活躍を描いた短篇集。
とくに池袋署時に担当する事件は、殺人事件とは限らないところが本書のお楽しみどころ。

シリーズの中の位置づけとしては、池袋署〜本庁復帰という両方にまたがる短篇集ですが、姫川ファンとしての楽しみは、玲子の様々な側面を見ることができることでしょう。
事件に対する姿勢、刑事としての思い、そしてすぐ一人で突っ走ってしまう玲子に皆が頭を抱える様子等々。

なお、収録8篇中、事件に関係ない2篇が混じっているところが見逃せません。
とくに
「彼女のいたカフェ」は、唯一玲子ではなく、客としての玲子に憧れていたブックカフェのバイト店員を主人公とした、異色の篇。
また、本書では、玲子と同僚刑事あるいは上司との間における、言葉のやりとりも愉快なのですが、その点で楽しめるのが
「落としの玲子」

事件に対する玲子の本気度を示すような
「アンダーカヴァー」から始まり、姫川玲子という魅力度抜群のキャラクターを多角的に描いた観のある短篇集、玲子ファンには見逃せない一冊です。

アンダーカヴァー Undercover/女の敵 Female Enemy/彼女のいたカフェ The Cafe in Which She Was/インデックス Index/お裾分け Share/落としの玲子 Reiko the Prober/夢の中 In the Dream/闇の色 Color of the Dark

     

27.
「武士道ジェネレーション ★★


武士道ジェネレーション

2015年07月
文芸春秋刊
(1500円+税)

2018年09月
文春文庫化



2015/08/19



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高校3年間を1年ずつ描いた剣道小説武士道”シリーズ、てっきり3作で完結と思い込んでいたのですが、思いがけない第4弾。
さてストーリィはというと、主人公である
香織早苗の大学4年間はざっと語っただけで一気に飛ばし、大学を卒業してすぐに行われた早苗の結婚シーンから幕を開けます。
もちろん披露宴の場には香織を始めとして、シリーズお馴染みの登場人物が顔を揃え、その席から早や剣道=武士道一直線の香織モード全開です。
これまでの3作は
「○○○ティーン」と冠されていましたが、本書は「ジェネレーション」。香織の師である桐谷玄明先生たちの世代から剣道・武士道を受け継ぐべき、香織や早苗、黒岩伶那たち次の世代を描く、という意味の題名かと思います。

従来通り、香織と早苗が交互に第一人称にて語るという構成。相も変わらず香織が早苗を引っ張り回し、何だかんだ言いつつも2人の迷コンビが互いに補い合い、新しい道を開いていくという展開です。
香織と早苗の掛け合いは楽しく、また現代日本にあって剣道=武士道一直線のストーリィはそれだけで読み応えたっぷり、前3作にも増して爽快かつ痛快なストーリィとなっています。

スポーツ推薦で有名大学に進学したものの勉強はまるでダメ、教職も取れず、香織の卒業後の進路はどうなるのか。早苗はどんな相手とどんな経緯で結婚したのか。2人のファンにとっては気になるところですが、その辺りはほんの序段。
桐谷玄明先生が心臓の病で倒れ、桐谷道場の存続問題が浮上します。何とか道場を存続させたいと願う香織の奮闘、それを手助けする早苗という形で2人のコンビが復活となれば、ファンとして嬉しくない筈がありません。

道場の後継問題をきっかけに香織が更なる高みにある武士道を目指すというのが、本ストーリィの中心軸。早苗が側面から桐谷道場を手助けする一方、早苗の夫であり香織の兄弟子である
沢谷充也が香織を厳しく鍛えるという展開。そこに充也の友人である米国人ジェフ・スティーブンスや、香織の指導する小中学生たちが加わり、ストーリィはそれなりに賑やかです。

好いなァ、このシリーズ。何と言っても香織や早苗を始めとする登場人物たちがそれぞれに魅力いっぱいである上に、ストーリィのテンポも良く、すこぶる気持ちが良い。
現代に蘇る武士道ストーリィ、この魅力は堪えられません。

1.一張羅/2.思いのほかハッピーでした/3.大仰天/4.こんなはずでは・・・/5.後継者/6.時代が動き始める予感/7.裏奥義/8.変わったこと、変わらなかったこと/9.師匠談/10.訊いてみました/11.異邦人/12.これは、意外と根の深い問題かも/13.好敵手/14.タイミング悪過ぎ/15.大炎会/16.逃げちゃ駄目だ/17.猛特訓/18.袖振り合うも・・・/19.武勇伝/20.違う、違うの!/21.御馴染/22.なに考えてるのよ・・・/23.求道者/24.重大発表がございます/25.未来像

   

28.
「硝子の太陽N Noir(ノワール) ★★
 (文庫改題:ノワール−硝子の太陽−)


硝子の太陽N

2016年05月
中央公論新社刊
(1500円+税)

2018年12月
中公文庫化



2016/06/03



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<ジウ>サーガX姫川玲子、二大人気シリーズ衝撃のコラボレーション」とのこと。
本書は
歌舞伎町ダムドに続くストーリィで、歌舞伎町セブン東弘樹警部補が共闘するサスペンス。

冒頭、少女の誘拐したうえに犯人の卑劣な行動ぶりが描かれます。何のための誘拐か、犯人はどんな人物なのか、当然ながらこの段階でそれは明らかにされません。
そして、フリーライターの
上岡慎介が何者かに惨殺されるという事件が発生。
事件の背後に何があったのか。そこから
陣内陽一を始めとし、歌舞伎町セブンが動き出します。
一方の警察側では、特捜本部から外されたものの新宿署の東警部補がたった一人で動きます。
そしてその背後では、沖縄の米軍基地反対デモをめぐる騒動が大きくなりつつあるという状況。

途中、コラボ企画のサービスなのでしょう、警視庁捜査一課の
勝俣健作、姫川玲子がそれぞれ顔を出します。
しかし、純粋にストーリィだけを見るならば、陣内、東、犯人と視点が分散されていて、やや散漫な印象を受けざるを得ません。
それでも最後、歌舞伎町セブンがもたらす緊迫感は流石。

まぁストーリィの良し悪しは別として、たまにはこんなコラボ企画を楽しませてもらえることは、ファンとしては嬉しいことです。
さぁ、この後は続いて姫川玲子の「ルージュ」巻です。

 

29.
「硝子の太陽R Rouge(ルージュ) ★★
 (文庫改題:ルージュ−硝子の太陽−)


硝子の太陽R

2016年05月
光文社刊
(1500円+税)

2018年11月
光文社文庫化



2016/06/05



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コラボ企画における“姫川玲子”シリーズ側。

ノワールを読んだ後「ルージュ」を読むと、両方の事件の捜査が並行して進んでいることが判ります。
さて、どちらを先に読むのが正解か? まぁどちらを先に読んでも間違い、ストーリィが判らずということはないのですけれど、判り易さからいえば「N」が先で「R」は後にした方が適切のようです。

本書は、
姫川玲子が警視庁捜査一課殺人班に復帰した後の初の長篇ストーリィ。玲子、かつての部下たちを集めたかったところなのですが、確保できたのは菊田和男一人のみ。その菊田も今は玲子と同じ主任警部補なので、多少変化があります。
さてストーリィはというと、冒頭から姫川ものらしい残虐な犯行ぶりが披露されます。
玲子率いる「11係」もその
祖師谷一家殺人事件に投入されますが、捜査は膠着して少しも進展せず。そのため途中から玲子たちは、フリーライターの上岡が殺された代々木事件に転出させられます。
しかし、そこで些かも動じず、祖師谷事件・代々木事件の両方の解決を目指すところが玲子らしいところ。

“姫川玲子”シリーズの魅力は、玲子特有のひらめきとその突破力。それは本書でも変わりません。しかし、コラボ企画ゆえの複雑さから興味が分散され、今一歩迫真的な展開にならなかった点が惜しまれるところ。だからといって最後の結末はなァ・・・・玲子が可哀相過ぎます。

「N」と「R」の両作品で存在感を発揮していたのが、玲子と同じ捜査一課主任である
勝俣健作。見方によっては犯人以上の極悪人ではないかと思われる次第。
なにはともあれ、今後の姫川玲子シリーズが楽しみです。

      

30.

「増山超能力師大戦争 ★☆


増山超能力師大戦争

2017年06月
文芸春秋刊

(1600円+税)

2020年06月
文春文庫


2017/07/07


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増山超能力師事務所シリーズ、第2弾。
前回は連作短篇という内容でしたが、今回は長編です。

増山超能力師事務所に、主人が失踪、何かあった場合には増山さんに相談しろと言われていたと、その夫人が相談に訪れます。
失踪したのは、大手企業で超能力の痕跡を消す「DMイコライザー」開発研究の一員だった
坂本栄世という研究者。
その坂本は、
増山圭太郎が良く知っている人物であるだけに、圭太郎はその頼みを引き受けない訳には行きません。

しかし、事件は産業スパイらが絡む厄介なものらしく、増山が懇意にする警視庁公安部の
五木も、この事件には手を出すなと忠告する程。
用心しつつ調査を続けた増山でしたが、あろうことか事務所に所属する超能力師の面々までが敵に襲われる事態に・・・。

前作は登場人物紹介という面があり、本当の面白さは次巻以降だろうと書いたのですが、まだそこまでには至らずという感じ。
結局、超能力師であっても、事件をさっさと解決するような超能力は誰も持たず、それなら超能力って何の意味があるの?と言いたくなってしまうところが本ストーリィにはあるからです。

本シリーズ、まだまだ続きそうです。
その面白さはこれから徐々に高まっていく、と期待したいところです。

           

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