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●「はずれ姫」● ★★ |
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2006/09/26 |
題名から得た印象、そして事前に読んだ書評からは思いもよらない趣きの短篇集、5篇。 どの主人公も類稀な=人並みな生活から零れ落ちたような男、女ばかり。 頭も股もユルイ若い女、小さな飲み屋の内で生きる中年女、引きこもりの男、人と交われない男。 そんな彼らが、自ら閉じこもった世界の中で淫靡な妄想を繰り広げる。そのきっかけとなるのは餃子のタネ作りだったり、白い豆腐、バスタブだったり。ちょっと変じゃないかというパターンばかりなのですが、妙に明るくカラッとした雰囲気があるので、ついこれらの主人公に引き込まれて共感してしまう、という面白さがあります。 こんなのは身体に毒だよと言われても、妙な味わいについ惹かれて止められない、そんな味わいがこの短篇集にはあります。
5篇の中で圧巻なのは表題作の「はずれ姫」。
その他「ナッちゃんの豆腐」もかなり面白い。淫靡な妄想を広げる中年女版「フランダースの犬」というところでしょうか。 マキの包むもの/はずれ姫/ナッちゃんの豆腐/蛍を飲む/サリーの恵み |