フェイ・ケラーマン作品のページ


1952年アメリカ・ミズーリ州セントルイス生。夫は同業のジョナサン・ケラーマン。「水の戒律」に始まるピーター・デッカー&リナ・ラザラス物が代表作。

 


 

●「慈悲のこころ(上下)」● 
 
原題:THE QUALITY OF MERCY”




1998年6月
創元推理文庫
(各920円+税)

 

1998/08/15

なんといっても注目すべき点は、あのシェイクスピアを主人公にした歴史冒険活劇であるということ。
シェイクスピアの行動がよくわからない、名声を得る以前の時代。それと当時実際に起きた1594年のロデリーゴ・ロペス事件をからめて、見事な歴史冒険活劇に仕上げた作品。
主人公ウィリアム・シェイクスピア(ウィリー)の人物設定は、頭は既に禿げかかっているものの、心優しく、青い瞳のきれいな永遠の詩人、28才というもの。妻子を実家に残し、ロンドンで役者稼業。剣の腕もそれなりに立ち、悪党共にひとりで立ち向かう勇気を持っている。
そのウィリーが、親友ハリー・ホイットマン殺害の真相究明に立ち向かう中で、隠れユダヤ教徒のレベッカ・ロペスと恋に落ち、とんでもない大活躍をしてみせるというストーリィ。
そこで当然連想してしまうのは、三銃士ダルタニャン。しかし、ダルタニャン程の超人的活躍はないものの、当時のイギリス社会の生活振りを細かく描き出していて、当時の雰囲気を窺い知る楽しみがあります。
その一方で、エリザベス女王は、かなりひどく猥雑に書かれています。でも、そんな女王像に現実感があって、何故か納得して笑ってしまいます。
ストーリィは、ハリー殺害の犯人探しとロペス事件の二つが軸となっていますが、後者の方がダイナミックな割に、前者の方はちょっと物足りない印象。
何故この題名?という疑問は当然起きることと思いますが、それは最後のお楽しみ。多分、納得できます。

 


 

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