ジョン・コリア作品のページ


John Henry Noyes Collier 1901年英国ロンドン生。20歳の時詩集「バリケイド」を自費出版。その後詩作を続けながら<タイム・アンド・タイド>誌の編集に数年間携わった後、29歳の時に処女小説「彼の猿妻」(His Monkey Wife) を発表、注目を浴びる。その後米国に渡り、<ニューヨーカー>等の一流誌に作品を発表、短編作家としての地位を固める。自薦短篇集“Fancies and goodnights”(51)にてMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞、国際幻想文学賞を受賞。


1.炎のなかの絵

2.ザ・ベスト・オブ・ジョン・コリア

3.ナツメグの味

 


      

1.

●「炎のなかの絵」● ★☆         訳:村上啓夫




1984年04月
早川書房刊

改訂第3版
(1300円+税)


2003/08/07

不思議な話、不気味な話の数々。それでも、その中になんとなくユーモラスな雰囲気が漂っているのが、ジョン・コリアの作品の魅力だろうと思います。
ビルの屋上から落ちていく夢を見たところそれが現実となってしまう「夢判断」、牝猫の恐るべき復讐劇を描く「マドモアゼル・キキ」、新式ネズミ取り機のデモで親友とも言うべきネズミのジョージを死なしてしまう衝撃を描いた「鋼鉄の猫」辺りが、印象に残ります。
また、貧乏ながら熱愛しあう若夫婦がお互いの為と保険を掛け合ったところ、逆転劇ともいうべき結末を招く「保険のかけ過ぎ」は、O・ヘンリ「賢者の贈りものと好対照で、面白い。
本書中、ザ・ベスト・オブ・ジョン・コリアにも収録されていた「記念日の贈物」ロマンスはすたれない」「ガヴィン・オーリアリ」「霧の季節」「炎のなかの絵(マハウンド・プロダクション)」が好作品であることは、いうまでもないこと。

夢判断/記念日の贈物/ささやかな記念品/ある湖の出来事/旧友/マドモアゼル・キキ/スプリング熱/クリスマスに帰る/ロマンスはすたれない/鋼鉄の猫/カード占い/雨の土曜日/保険のかけ過ぎ/ああ、大学/死の天使/ガヴィン・オーリアリ/霧の季節/死者の悪口を言うな/炎のなかの絵/少女

       

2.

●「ザ・ベスト・オブ・ジョン・コリア」● ★★★

 


1989年02月
ちくま文庫刊

絶版



1991/02/20

“ブラック・ユーモア”と評されている。当たらずと言えども遠からずという気分ですが、やや違うのではないかと思います。
いずれにせよ、かなり奇態な小説です。つい、内田百「冥途」と比べてしまう。
はっきり言えることは、ジョン・コリアの作品には明るさと、よく言われる“センス”が光っていること。それがコリア作品の特徴であると共に魅力です。

19篇の中で特に印象的だったのは、次の篇。
・蚤がスターになる「名優ギャヴィン・オリオリ」
・マネキン人形に恋した店員を描く「ある恋の物語」
・プレイボーイが犬にされてしまう「葦毛のウマの美女」
・豚にこき使われる若夫婦を描く「わが最愛のメアリー」
・金持ちの伯父を殺そうとした男がとんでもない目にあう「異本・アメリカの悲劇」
・珍しいランに主人公が取り込まれてしまう「緑の木かげ、みどりの思い」

名優ギャヴィン・オリアリ/ある恋の物語/葦毛のウマの美女/わが最愛のメアリー/霧の季節/結婚記念日の変ったプレゼント/マハウンド・プロダクション/女だけの地獄/壜の中のパーティ/緑の木かげ、みどりの思い/ロマンスはいつの世にも/異本「アメリカの悲劇」/ある主題の変奏曲/夜だ、青春だ、パリだ、月も照っている!

  

3.

●「ナツメグの味」● ★★      訳:垂野創一郎他




2007年11月
河出書房新社
(2000円+税)

 


2007/12/20

 


amazon.co.jp

恐ろしげな話、薄気味悪いような話もありますが、それでも各篇の内にあるユーモアがそれらに勝る、というのがジョン・コリアの魅力。
本書は18篇を収録した、そのジョン・コリアの新刊短篇集。
ただし新刊といっても、内4篇はザ・ベスト・オブ・ジョン・コリアにも収録されていた作品です。

まず冒頭の「ナツメグの味」。最後の最後でのけぞるような気分にさせられるところが、堪えられない魅力です。
実は、書かれていない部分、ジョン・コリアがペンを止めたその後にこそ、ジョン・コリアならではの面白さがあるのです。「ナツメグの味」然り、そして「魔女の金」然り。
その一方で、書かれてしまった結末にも、「壜詰めパーティ」の如く爆笑してしまう面白さがあるのですから、とてもジョン・コリアの面白さは一様には言い表せません。

「ナツメグの味」のほか特に面白かったのは次の篇。
・小切手なるものを知らなかった村人たちは、小切手帳をてっきり金に替えられる魔法の券と思い込む悲喜劇「魔女の券」
・子供のいうことは信じるべきだった「だから、ビールジーなんていないんだ」
・悪魔だからといって必ずしも悪人でなく、また油断ないとは限らない・・「悪魔に憑かれたアンジェラ」「地獄行き途中下車」
・地獄でロマンスの花咲くこともある「魔王とジョージとロージー」

ナツメグの味/特別配達/異説アメリカの悲劇/魔女の金/猛禽/だから、ビールジーなんていないんだ/宵待草/夜だ!青春だ!パリだ!見ろ、月も出てる!/遅すぎた来訪/葦毛の馬の美女/壜詰めパーティ/頼みの綱/悪魔に憑かれたアンジェラ/地獄行き途中下車/魔王とジョージとロージー/ひめやかに甲虫は歩む/船から落ちた男

 


   

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