著者 | 鈴木光司 |
出版社 | 角川書店 |
読破期間 | 1998.5/9〜5/10 |
やっぱり予想通り前二作を上手くひっくり返してくれましたね。
ストーリー的にはソフィーの世界や、スタニワフ・レムの短編SF小説(大平ヨンシリーズだったと思う)のプロットと同じなのですが、行って戻るって点が違うくらいですか。まあありがちですね。そう言えば、超能力とか、超常現象とかを、スタニワフ・レムの小説では世界の情報を演算しているコンピュータのバグで説明していましたね。
しかもリングウィルスの変種の転位性ヒトガンウィルスもありがちって言うか、普通のガンそのものの特徴なので、あまり新鮮味は感じないって感じです。ただ必ず浸潤すると言う特徴くらいですが、実際本当のガンに関してもウィルス説あるくらいですから、まあありふれたアイディアですね。
ただ、もう一度自分達の世界の有り様を再認識すると言う意味ではこの小説は意味があるでしょう。自分達の住むこの世界が入れ子状の構造を持っていて、より上位の世界によって生み出されたと言う思想はいくつかの小説でも読んだ事があります。私のスタンスはと言うと、いかに自分が仮想現実の存在だろうと、コンピュータの生み出した情報に過ぎなかろうと、それは、「既に実在である」と言うものです。つまり、仮想現実の生も、(我々が現実と思っている)現実の生も等しく生きる価値はあると思っています。どのような生であろうと、精一杯生きるしかないのではないでしょうか?この本を読んでそう言う事をふと考えたりしました。
この本のエンディングがらせんのエンディングと同じ様な所を描いているのが実はちょっと気に入っています。高山竜司がリングウィルスのワクチンを開発した時点でループで語られる真実の片鱗に気付くべきでしたね。
お名前 | 評価 | コメント |
鈴木祥一 | やっぱり良い意味で裏切ってくれました。
まあストーリー的にはありがちなので、二つ星です。 |