M31

 

著者 スティーブン・ライト
訳者 森田義信
出版社 角川書店
読破期間 1998.3.22〜3.24
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難物である。

正直言って読み始めた瞬間、しまった、買うんじゃなかった、ループか、ブレイン・ヴァレーを買うべきだったと言う思いが頭をよぎりました。その思いはグウェンが、自分のUFO拉致体験を語るところまで続いてました。

しかし、その先は、いったいこの狂気の(この世で唯一の正気?の)物語はどこに向かってたどり着くのかと言う興味で一気に読み進んでしまいました。もっともはなから、これはM31星雲に向かう旅だと言うことは前置きされていたのですが。

結局真相は語られること無く、(語られた?)何とも言えない後味を残して物語りは終結?(始まり?)しますが、これを救われたと見るか、狂っていると見るかで物語の様相は大きく変わってくるような気がします。しかし、実際のところは真実は私がつかんでいるところとは程遠いところにあるような気がします。

この物語の中で真実と狂気は果てしなく境界があいまいになり、そしてM31はそんな多次元空間のはるか彼方にある。それは錯覚であり幻想であると同時に真実(ある人にとって)かもしれない。しかしその真実は決して肯定されることが無い。(大多数にとって。)しかしそんなのって、真実なのだろうか?

ここに描かれている家族(?)は常に狂気の面を見せているのですが、読みすすめていくうちに、時折Family Romanceと言うこの物語の副題にぴったりと言う気がする錯覚を感じ始めます。家族のようであって本当の家族ではないかもしれない。それぞれのつながりはかなりでたらめ。近親相姦やレイプ、その結末、あるいはもっと異質な何か。気が触れている(ように見える)のはエイリアンだからなのか?それとも単に異質なからなのか?さらわれた(さらう)のはエイリアンなのか、それともこの狂った家族なのか?にもかかわらず、なぜかこれが家族と言う気がしてくる。でたらめなのに親密。(絶対そんな事はないと思うが。)
 
この本読んで私は改めて自分の考え方を思い返してしまいましたね。私の考え方って個人の真実はたとえ他人に認められなくてもそれは個人の中では真実なんだって考えの持ち主な訳ですが、(もちろんその真実はあくまでその個人の中(もう一つの宇宙)だけで通用するものであって、決して他人に強制できるものではないが)この本の家族って、結局そういう考え方をすると、外からはどう見えるかって鏡のように見せつけてくれているように感じたわけです。もっとも私の場合、それで人殺してもいいとか、には向かわないわけですが。しかし、よほどの自制心が無いと私も狂人の一歩手前と言うのをまざまざと見せ付けられたような気がしましたね。(ほとんどの人がそうである、私だけじゃないと思いたいですが。)

この本はノーマルな人にはお勧めできませんね。しかしアブノーマルな人にもそれを助長しそうで恐いし。私こそはこの本を解明できると言う強い信念を持った人が読むと面白いのかもしれません。(もし分かったら教えてくださいね。)

M78星雲に向かう旅の話だったらもっと一般受けして明るかったかもしれませんね。(なんせ光の国だから。(^_^;))


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鈴木祥一 かなりえぐかった。

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