【舞台衣装・小道具との仕事】時代考証や登場人物に与えられた嗜好から、色・形・素材などが検討される。以外と時代考証がいい加減な戯曲があるから注意しなければならない。 その時代にある筈もないものが舞台に置かれることは、その芝居の性質を決めてしまうから、 演出としては熟慮した上で置かなければならない。 例えば戦国時代のド田舎城中の宴席では、土器の盃に銅(カネ)の銚子または白い瓶子を用いるべきなのに、 朱漆の盃や漆の銚子が使われたら、それだけで「なんじゃそれ」となって演出の勉強不足が露呈する。 刀と太刀と剣も、時代を象徴するし、置き方も違う。刀で言えば戦国真っ盛りでは、向かって右に柄がくるのに、 戦がなくなると向かって左に柄を持ってくる。利き腕の違いもあるから、若干の相違はあるが、 左手で鞘を握って右手で抜くなら、向かって右に柄がくる方が合理的だと思う。 「ジーンズのシェイクスピア」とよばれる芝居が1970年代にあった。 衣装をジーンズ・デニムでシンボル化した時、演技や演出上の諸問題まで、 その衣装をコンセプトとして展開された。 ・舞台衣装・小道具の抜き出し(演出の附け帳) 台本の中にある、衣装・小道具についての記述をすべて抜き出してみる。 衣装や小道具は、観客に視覚的な強烈なメッセージを伝えるものだけに、上演の場に適合する工夫が必要だ。 (1500人入る小屋で濃い化粧をしても、遠目に美しく見えるだけだが、100人の小屋ではとんでもない厚化粧に見える) また、抽象化することも可能だし、時代考証を徹底して、実際に過去の品々を用いることも可能だ。 演出は上演時の懐具合と俳優の力量や小屋の規模から、演出の工夫に見合うものを選択すればいい。 ただ、安易に妥協した小道具選びや衣装選びだけは避けたい。演出上致命的なミスを犯しやすい。 2014年3月『宮城野』作:八代静一を上演した。 その時の附け帳は、台本上の台詞などから抜き出したものや座敷を想像してまとめた。 台本上から読み取れるもの ・写楽の浮世絵 ・出刃包丁 ・矢立て ・座敷の座布団 ・料理 岡場所の座敷から想像されるもの ・猫足膳、酒器、箸 ・朱の煙草盆 ・お引きづりの着物一式 前帯結び ・男物着物一式 着流し 縞・小紋など ・座敷の一式 ・三味線一式 ・三味線掛け ・燭台 ・枕屏風 ほとんどの道具は手作りした。 |
猫足膳 | 燭台 | 枕屏風 |
三味線 | 脇息 | 三味線掛け |
宮城野 舞台写真 |
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