[第四期=3]

[アイホール演劇学校第八期生終業公演]

「マヨヒガ」

遠野に伝わる「迷ひ家[マヨヒガ]」の民話をモチーフに、アイホールに集った若者達の思いを。
鮮やかに表現していく作品に挑戦しました。
大筋のお約束ごと以外は生徒達が構成し、生徒一人一人が自分を題材に、
出会いと旅立ちを表現していくものとなりました。

【演出から】「『マヨヒガ』をなぜ上演したか」

八期生は、アイホールの都合、ハッキリ言えば伊丹市の無責任さから、
2年間の約束が1年で卒業することとなった。
その不幸な八期生に、既存の戯曲ではなく、このような作品を創造することを求めたのは、
私のもとでしかできないことに、勇気を持って取り組んでもらいたいと考えたからです。
自分の言葉で、自分を語る。
それもフィクションとノンフィクションの狭間で。
自分の過去と未来とを見つめながら、集団の中で自分も光り、他人も輝かせて行く努力。
八期生ひとり一人が、舞台の上でしか掴めないモノをつかみ取ってほしいと思いました。
八期生が学んだ「創造のための基礎技術」は、いまEQとして注目を集めています。
その技術を駆使し日常も非日常でも、自分を再発見し表現して行くことをもとめます。
『マヨヒガ』が、皆さん一人一人に心に残るものを贈れることを祈って。

『マヨヒガの構造』

道に迷った若者が、いつか見たことのある、懐かしい場所に出て、懐かしい1本の木と出会う。
忘れていた木、心をふるわせる木との再会。
気がつけば同じように木に見とれている人達がいる。
声をかければ、皆懐かしい想いの中に沈んでいるのがわかる。
素晴しい木…何か心の中から沸き上がってくるような木…。
どんなに素晴しい木なのか、周りの人達に伝えたいと話し始める。
そのうち見ている木は、人それぞれに違うらしいことに気付く。
人の話しを聞けば自分の木が消えてしまうようなそんな想いに駆られて、
自分の中に生まれてきたものを吐き出さずにはいられなくなる。
この木とすごしていた日々、自分はどんなに素晴しかったか、自分はどんなに幸せだったか。
友もいて、毎日が輝いていて…。
他の人達もまた、輝く日々を話し始める。
一人一人が幸せに包まれていくように語り続ける。
彼等を感じて、なにかが今蘇ってくる。
自分が見失っていたもの、自分に足りなかったもの、自分の姿を見つけた時…木が消えていく。
…木を静かに見送る若者達。
見知らぬ人達が懐かしく古くからの友人のように感じられて笑顔を見交わすとき、
それぞれに自分の進む道が見えてくる。
名残惜しく、一人、一人と去っていく。
そして舞台にはなにもない。

基礎訓練から演劇化への過程

1人のレッスン。
木の思い出探検・木の思い出の場所の探検による、感覚の記憶のトレーニング
木の思い出探検・事件の再体験・事実の再発見による、感情の記憶のトレーニング

2人のレッスン。
相手を発見する、相手を観察して推理する「オリエンテーション」のトレーニング
相手に語りかける・相手から聞き出す「コミュニケーション」のトレーニング

多数参加のレッスン。
話す位置、聞く位置、見守る位置、関わっている位置、無視する位置、孤立している位置……など、
自分の位置と相手役達との距離や上手・下手など位相の違いからくる、感じ取れるものの違いを実験し理解する。
テンポとリズムの様々な組み合わせが、多数参加の場合、大きな潮流となって場の雰囲気を支配する事の発見。
多数参加の中で、常に自分の行為の目的をしっかりと把握し、他の人の動きや段取りの狂いなどに影響されずに、
自分の目的達成の為の様々な道筋を発見し、到達努力をしていくことの訓練。



看板 『マヨヒガ』 台本A班

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