日常茶飯

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#72 
目次

ソフトは軽い方がいい

 ウイルス対策ソフトは、最近ではセキュリティ対策ソフトと自称するようになった。 不正侵入(ファイヤーウオール)、フィッシング詐欺、スパイウェア、迷惑メール(スパム) と、何でもやりますと云うのはいいが、しだいにパソコンの動作が鈍く重くなってきた。

 10年前から使っているけれど、 はじめはノートン アンチウイルスだったが、やがてウイルスバスターに乗り換えた。 理由はまえに書いたから、ここでは繰り返さないが、この2つはウイルス対策の双璧だとは思っている。 で、ウイルスバスター。 2007版になって一段と重くなって、メイン画面を起動すると、用もないのにサイドバーが現れる。 すぐに現れれば辛抱するが、なかなか現れないから、すかさず閉じるのも面倒だな。 何でも対策しますソフトに、何でもやらせていると重くて仕方がないから、余分な機能は切っている。 フィッシング対策など。 それでも、リアルタイム検索機能と云うのは、何でもかんでもソフトを監視するので、 ごくたまにではあるがテキストファイルをエディタで開くのに莫迦(ばか)に時間がかかって、仕事の邪魔をするのは憎らしい。

 新聞(日経)に、この何でも対策しますソフトの動向が載っている。 この手のソフトの価格が、高価と廉価に二極化したと云うもの。 高価な方は高機能なのは当たり前で1万円台。 シマンテックの「ノートン」なのはわかるが、これにジャストシステムが加わる。 「カスペルスキー」と云うソフトで、元ロシアのスパイの名前である。 はげ頭のおやぢ(前にも書いた)は、 ノートンさん(以前のパッケージでは髪のあるオジサンが聴診器を首からさげていたが、このノートンって何者と思った)に挑戦するらしい。

 それから安いソフトは、更新料不要と云うもの。 イーフロンティアの「ウイルスキラーZERO」(聞いたことがない)、とソースネクストの「ウイルスセキュリティZERO」が 更新料が要らないのだと。 あれっ、と思うのがトレンドマイクロの「ウイルバスター」はどうしたの。 記事では、販売シェアはシマンテックが首位。 2位はトレンドマイクロで、いまはソースネクストとその座を競っている、と云う。 それから、マイクロソフトも参入しているが、 <さほどシェアを確保できていないもうようだ>、とか。

 はじめから云ってるように、この分野で覇者になるには、軽くなることである。 何でも対策ソフトが邪魔して動作が重くなるのは困る。 <兎に角軽い。入れているのがわからない。気にならない>、こんなコピーのソフトが現れたら、すぐに乗り換えるよ。
'07年03月15日

最終回

 ドラマ「相棒」の最終話をみたけれど、2時間ものとは知らなかったので途中から。 このシーズン5は、刑事ものだから<殺人>事件が起きる。 <特命係>、水谷豊と寺脇康文のコンビが解明する真相は、 被害者と犯人の関係の意外性で、このドラマはそれを狙っている。 意外性と云っても向こうが出すメニューだから、展開しだいなのだが。 そんな感じで、シーズン4の変態サンものよりはおもしろかった。

 で、その最終話。 警視庁の事件を公安が割り込んで奪うから、 捜査一課は不本意ながら協力的である。 <トリオ・ザ・捜一>はガードマンも引き受ける。 いつでも暇な、<組織犯罪対策5課>もなぜだか仕事をしている。 最終回だからか、いつも「よっ。ひまかア」と云ってる5課長の西山惇も張り切っている。 事件は、省庁をまたがるキャリヤ組の同期生の陰謀。 仲間割れして殺人事件となるが、上層部はこれを秘密裏に事実を葬ろうとする。

 この陰謀劇に、<相棒>のふたりが絡むと、喜劇に展開する。 それに権力闘争劇も隠されていて、さいごに得をしたのは官房室長の岸辺一徳と云う落ち。 途中からみたから、まあこんな具合かな。 只、このドラマは、犯行の動機の描写が弱い。
'07年03月14日

個人情報流出

 ご存じ、きょう朝刊の記事である。 見出しには、<大日本印刷の個人情報流出 43社分863万件と発表>とあるから、 何だまたかと思ったが、今度は事情が違うらしい。 社会面の下にある広告の場所には、大日本印刷関連で<お詫びとお知らせ>が並んでいるのは異様である。 記事のほうに戻ってみると、ダイレクトメールの印刷のための顧客企業43社の個人情報が過去最大規模で流出と。 内部犯行で、犯人はその一部を詐欺グループに売り渡した。 漏れた情報は企業によって異なるが氏名や住所のほかクレジットカードの番号が含まれている、と云うもの。 そのなかにはカード会社やプロバイダーも含まれるから、人ごとではないのでASAHIネットのホームページをみると、 何にもないからよかったものの、 流出したソネット、@ニフティをみるとカーソルでグウーッと下のページを見ないと見つからない。 巫山戯るな。

 そう、あの社会面の広告は異様なのではない。 43社と大日本印刷を加えた44のお詫び広告が載るのが筋で、それがないほうが異様なのだ。 そうなると社会面は広告が記事を追い出して仕舞う(一度みてみたい)。 新聞は、売上げよりも広告収入で身過ぎ世過ぎするのが身上だもの、それを何とかするのが商売である。 つまり広告しない料簡なのは、消費者は随分なめられたものである。

 で、気になる犯人は記事によると警視庁は先月、逮捕している。 氏名もでている。 ところが、これはジャックスの顧客情報流出事件の容疑者と云うもので、 しかも容疑は、<大日本印刷の備品のMOの窃盗容疑>、と云うのは呆れるね。 もう少し進んでいたと思ったら、この手の犯罪は旧態依然なのである。 情報を盗んだ罪ではなく、たまたまそこにあった会社のMOにコピーして、MOの窃盗罪だって。 そうなると、自前のMOにコピーすると罪にならないのか。 たまたまジャックスの顧客情報は会社の備品だったので、逮捕したと云うことなのか知ら。 ほんの少し前、ペットを殺されても器物損壊の扱いだった。 つまりモノ扱いだった法律が、いまではれっきとした犯罪である。 個人情報は犬猫以下の扱いと云うことか。 まあ、犬猫も大切な命だよ。

 個人情報のうちクレジットカードを重要にみるようだが、それは違う。 カード番号と有効期限を知っていれば本人になり済ましネットで買い物は出来るが、 その不正はカード会社が補償するのは常識で、これは銀行とは違って心配することはない。 分をわきまえている。 カードの情報が盗まれたなら再発行すればいい。 ところが、大事な個人情報は、氏名、生年月日、住所、電話、などの基本情報である。 変えることの出来ない情報である。 まあ、このうち引越でもすれば減るだろうが誰がする。

 これまでは社員が職員が寝ぼけてネットに流出しました、と500円の商品券で御免ね。 で済まされた。 今度は違う、一部であるが詐欺屋に流したのだから何をするかわかったものではない。 裁判にかければ500円どころじゃない、相場は3万円ぐらい。 この際だから、被害者は集団訴訟でもやるのが世のためだ、と唆すのである。
'07年03月13日

まるで核家族

 日曜の夜9時は、たいがいTBSドラマ「華麗なる一族」をみている。 おもしろがってみるとか、熱心にみるというのではなく、何となくみている程。 主人公のキムタク(この名前をパソコンで打つのは初めてだけど、ATOKは一発で変換した)は、 冶金(やきん)屋で阪神特殊製鋼の専務。 その親父(おやじ)の北大路欣也(これも一発で変換したので妙だなァ)は、万俵(まんぴょう)財閥の家長。 親父は長男の会社と長男を犠牲にして、銀行合併を成し遂げる。 その後すぐに合併されるのであるが。 まあ、梗概はどうでもいいとして、この一族と云うか家族は、何かおかしい。

 閨閥(けいばつ)結婚で結ばれた一族が、父と子の葛藤でばらばらになってゆく。 それは親父の不徳の致すところだけども、それでも不自然だなあとみていたら、思い当たった。 ちっとも財閥家らしくないのである。 これじゃ丸で核家族の親子ようだ。

 この財閥家には他人が住んでいない。 執事だとか家政婦だとか、ふるい云い方では下男(しもおとこ)や下女(メイド)がいない。 あんなに広い屋敷の庭は誰が草を刈るのか。 年に一度や二度、植木屋をたのんでも間に合わないだろう。 住み込みの職人がいてもおかしくはないのにね。

 ドラマの時代は日本が先進国になる前、 昭和四十年代の高度成長期。 うろ覚えだけど、原作(山崎豊子)の万俵家は十何代続いた姫路の大地主。 旧家(きゅうか)に爺や、婆やがいても当然である。 たしかこれと同じ時代を描いたふるいドラマに、向田邦子の脚本で「寺内貫太郎一家」がある (文春文庫に脚本が、新潮文庫に<幻の>処女長篇小説がでています)。 東京谷中(やなか)にある寺内石材店には、相馬(そうま)ミヨ子と云うお手伝いの住み込みがいる。 どうも下町の石屋に比べてみても、<華麗な>一族の家は安っぽいなあ。

 尤もこの一族にも、ひとり他人の女がいる。 その鈴木京香(これも一発で変換するから覚えさせているのだな)は、一族を指示するのが役回りだからちょっと違う。 落語『抜け雀』の台詞に、<あれは女ではない。 あれは鉋(かんな)だ。 なあ? 人の命を削るやつだ>と云うのがあるけれど、 彼女はこれを上回る悪女に過ぎない。
'07年03月12日

困ったはなし

 パソコンソフトの製品をバージョンアップする。 つまり製品の最新版のパッケージを買うときは優待販売でまけてくれるから、 つい油断して買って仕舞う。 特にパソコンを買ったときにバンドルされたワープロソフトなんかは、 次のバージョンアップのときに、その手に引っ掛かる。
 ワープロの一太郎とのつきあいは10年以上である。 パソコンを買うときに、ワードがついているのと、一太郎との2つがあった(当時は選べたのですよ)。 で、一太郎を選んだ。 それから、バージョンアップの知らせに応じたので、新しいパッケージが配達されて、ソフトを更新した。

 何の変哲もないことだけど、テレビを買い換えるのとは一寸ばかり違うのだ。 テレビの場合、壊れたので仕方なく買い換えるのは由緒正しいやりかたで、 そのほかに、まだ映るけれど薄型にしようか、と買う人もいるだろうが… これはソフトの更新に似ている。 いずれにしても古い方は消えて仕舞う(手数料なんかは払うけれどもね)。

 ところがソフトは、前のバージョンは使い途(みち)の無いまま残る。 捨てるには気が引けるから、用もないのに持っていた。 それに一太郎は毎年バージョンアップするから、一々応じるわけにはいかない。 それで、飛び飛びにバージョンアップしている。

 ここで誤解のないように云っておくと、一太郎のジャストシステムの悪口を云うつもりじゃない。 製品版のソフトを買い換えたときの、前のパッケージの行き場である。 十年経てば、いろんなソフトの不要済みがたまってくる。 それで一年前、思い切って、あれもこれもゴミに捨てて清々した。 先日はウィンドウズ98を捨てた。 マイクロソフトがセキュリティについてサポートを打ち切ったせいで、 忍びないが在っても使わないのである。 と、書いている途中で、捨てたあとの一太郎の優待版が気になった。

 ぽいぽい捨てたのはいいが、バージョンアップ版と云うのは、 古い方があるのが前提で、それを確認して更新する。 最新版だけでは、インストール出来ないものがある。 一太郎はどうだったか。と、ここで数分中断して確かめた。 これを読んでる人も数分休んで続きを読んで貰(もら)えれるといいのだけど。 でも変な展開を期待されても困るが、問題はなかった。
'07年03月11日

散歩

 よく知らずに申すのだが、激しいスポーツと云うのは本当は体によくないのじゃないか。 かねてから、そんな気がしている。 激しい運動は体内に活性酸素を生み出すと云う話もあるし。 玄人(くろうと)のスポーツ選手は案外と長生きしてない。 これもきちんと調べたことではないけれど印象である。 それで、ウォーキングはいいんじゃないかと随分前からやっている。 大仰(おおぎょう)なものではない。単なる散歩である。

 週末の天気のいい日なんかは惹かれて、朝から外(おもて)をぶらぶら歩く。 あっち行ったりこっち行ったり、ポケットにデジカメを入れてうろうろしてる。 でも、近所にはカメラで撮るものは滅多にあるものではない。 暫く歩かなかった道を歩いて、建物が立っているのを発見したり、 いつのまにか更地になっていたり、と土地開発が盛んになったと思ったりする。 が、ただ何となくうろうろ歩いても、おもしろくも何ともないね。

 ちかごろでは、地図をよく見る。 はじめは本物の紙の地図だったが、 いまはWebの地図で、 これは色々あるが、例えば不動産屋のもの。 ちょっと前、CMで盛んにやってた、ネットで騒げるエイブル、のようなものである。 賃貸住宅を地図で見ながら探すと云うサイトで、条件をかければ空き屋のしるしは消えるから、 これはなかなかの詳細な地図になる。 これで、お店なんかを見つけて、それを目当てに歩くルートを探す。 そんな作戦会議を行う。 これは目的があるから愉しみもある。 お薦めです。

 最近は、その賃貸住宅サイトで空き屋の情報も表示させるようにしている。 住宅の写真と云うのは意外に途中の目印になるのである。 おもしろがって、うろうろすることもなく歩くようになった。 ただし、紙の地図と同じで、いい加減なのも確かである。
'07年03月09日

空気清浄機

 冬のあいだは部屋の空気が乾燥するから、加湿器を入れようと思っていた。 それでことしの初めに、加湿空気清浄機を居間に置くことになったのである。 加湿が主であって空気清浄の方は従。 つまりおまけのつもりだったが、機械の方では逆に考えているらしく、電源を入れて加湿を切ることは出来ても、 清浄機能は電源が入っているかぎり働くのである。 弱運転で電気代は一日約2円と云う触れ込みだから、 まあ、邪魔にはならないので電源を入れている。

 加湿は気化方式で、タンクに入れた水が湿ったフィルタに風を当てるというもの。 これなら蒸気や霧がでるのではないし、加湿し過ぎることがない。 おまけと思っている空気清浄は、この加湿に加えて<除菌イオン>(これは眉唾か知ら、まだよく分からないが)を放出することで、 <ハウスダストの中のダニのフン・死がい・花粉・カビ菌などを一気に空中で分解除去します> と、説明書に謳っていて、アレル物質に効く、カビ菌に効く、ウイルスに効く、ニオイに効く。 でも、そんなに汚れているようではないし、匂いと云ってもペットが居るわけではない。 そんな調子で様子を見ていた。

 空気のクリーンサインというランプがある。 奇麗なときは緑色で、それが汚れの程度に応じて、橙から赤になりファンが回り風を放出して空気を巡回させる。 使っているうち、ニオイに敏感なのはわかった。 御馳走を嗅ぎつける。 あさ起きてコーヒーを入れて飲んでいると、いつの間にやらその匂いを嗅ぎつける。 夜は夜で、寝る前に居間でちょっとばかりお酒を呑んでいると、 それを嗅ぎわけて赤いランプで騒いでいる。
'07年03月08日

啓蟄

 きょうは二十四節気の一、啓蟄(けいちつ)。 冬ごもりの虫がはい出る意で、季節の節目に当たるのだが、西高東低の冬の気圧に舞い戻った。 天気図の等圧線が縦に伸びていた。 朝は感じなかったが、夕方うちに帰る途中はけっこう寒かった。

 いま、部屋の中は暖かい。 啓蟄の虫とはどんな虫か知らと思っていたのだけど、 どうやら昆虫の蛹(さなぎ)のことだと云う。 蝶々だどかネ。 先ほど、寝酒でも呑もうとグラスに氷を落とし、 ウヰスキーを注いでから、 炭酸水の栓を開けるとポンと鳴った。
'07年03月06日

店員さん、やーい

 きのうは莫迦に陽気な天気で、恩恵を受けすぎたのか知らないけれど一夜明けると筋肉痛。 きょうは天気が崩れて、あすは寒の戻りだそうだ。
 ところで、きょう月曜版の日経の記事「クイックサーベイ」は百貨店のアンケート調査。 百貨店に行く<習慣>が消費者から消えつつあると云うもの。

 全国の百貨店売上高はここ十年、減少を続けている。 今回の調査では百貨店に<全く行かない>、<数か月に一回しか行かない>人が六割を占めた。 週に一回以上足を運ぶ人は一割しかいない。 そもそも百貨店の強みは繁華街、駅前と便利な場所に旬のものをそろえ、知識のある店員が商品選びを助言してくれるところにあった。 それが、いまでは家族で過ごす便利な場所は、巨大駐車場を備え映画館や飲食店街も併設するショッピングセンターが取って代わった。 尤(もっと)も、百貨店衰退の原因は競争相手の出現だけではない。
 <会社の近くにあるが開いている時間に行けない>、 <店員がすぐに声をかけてくるのでゆっくり見られない>、 <質問に答えられない店員が多い>、 <空調が効きすぎて長くいられない>。 すべて百貨店が生み出した不満だと。
 <以前から指摘されているこうした声になぜ一向に応えようとしないのか。不思議だ>、 とは記事を書いた編集委員の弁で、以上が記事の抄録。

 記事の主(ぬし)である編集委員氏は、冒頭で子どもの時分を白状している。 日曜日は一家揃って百貨店で買い物に行った。 そのあとは食堂で、お子様ランチ。 それから屋上でゴーカートに乗る。 これが楽しかった。 そんな具合で、さぞかし子ども時代の思い入れでもって百貨店を怒っているようである。 もう、おとななんだし、株屋の新聞の編集委員なのに百貨店のことも知らないから、可笑(おか)しくなった。

 百貨店の売り場にいるのは、メーカーの派遣社員(あるいはアルバイトかも)である。 百貨店の制服を着ているものだから、てっきり店員にみえる。 商品に詳しくても当たり前である。 アンケート調査で<質問に答えられない店員>と云うのは、本物の店員だったりする。 だから<声>に応えられる訳がない。 只、メーカーの人だから客が望む品がないときは携帯で確かめて、 ライバルである筈の別の百貨店を案内すると聞いたことがある。 で、お客は、親切なデパートねぇ。 なンて云うのである。
'07年03月05日

月齢

 きょう朔日(ついたち)は晴れで、昼間は春のような陽気だった。 先日、近所の何処だったか家の庭先に桜の花が咲いていた。 莫迦桜ではなく、四月になったと勘違いしただけだろう。 ことしの夏は暑くなる、と云う予測が新聞に載っていた覚えがあるが、 怪しいのは梅雨で、毎年いつ明けたのか曖昧なので、さて、どうなることか。

 夕方、日が沈んだ頃、蒼蒼とした東の空をふとみると、月が出ていた。 まるまると満ちているけれど、まだ満月ではない。 帰ったあと調べてみると、満月は四日の日曜で、月齢14.5だそうである。 考えてみると、月齢(げつれい)と云うものは生活の中から消えて久しい。 子供の時分は、天文観測なんてモノをやっていたので詳しかったのだけど。 たぶん、「天文ガイド」や「理科年表」をみて知っていたのだと思う。

 むかしの新聞には月齢が載っていた。 とは、内田百閒(ひゃっけん) の『東京焼盡』(中公文庫、ちくま文庫)や、『百鬼園戦後日記』(ちくま文庫)で知ったのだが、 これがどうやら当時から怪しいのだ。 月齢はすでに生活とは無縁になっている。 『東京焼盡』の昭和二十年(1945)の日記を見ると、こんな件(くだり)がある。

 <1月九日火曜日二十四夜。 日附の下の何夜と云ふ記入は、今年になれば柱歴も不自由にて月の齢(よはひ)が解らなくなると思ひ、 あらかじめ去年の柱歴から続けて心覚えをして置きたる也。 世間に暦が無いので、新聞が昔の様にその日その日の暦を載せる様になり、 先づ毎日新聞が始めたからそれから月齢を写し取る事にした。 ところが朝日新聞もこれにならつて暦を出す様になつたので見ると一日違つてゐる。 自分の心覚えと引き合はしてどつちに則(のつと)る可きか解らなかつたが、 結局毎日新聞の方は本当の月齢にてコンマ以下の数字を添へ、 朝日新聞のは月齢による旧暦の日附の呼び方に従ってゐるらしく…>

 すでに六十年前には暦は習慣としてあるのみ、と云うことか知らん。 新聞は月齢の<コンマ以下>を知らないのである。 野口雨情(うじょう)の童謡「十五夜お月さん」はちかごろ耳にしなくなった。 だからか、その先の歌詞は忘れて仕舞った。
'07年03月01日

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