短夜 夜はすぐに寝付くし、ぐっすりと眠り目を覚ます。 普段通りだけれど、最近は何だか知らないけれど寝足りない。 眠いのである。 疲れが溜まっているのだろうけれど、そう云う覚えはない。 それで、太陽のせいだと云えば、『異邦人』のムルソーじゃあるまいし、と馬鹿馬鹿しく聞こえるだろうから、 云わぬこっちゃない。 まあ、つつがなきかな。 で、朝の早くない日はいったん目が覚めて、又寝をしている。 又寝と云うのは内田百閒のマネっ子で、百閒先生曰く。 <元来が寝坊の様であって、八時間眠ったのでは足りない。 八時間で起きると、後に寝不足の感じが残る。 いい歳をしながら、そんなにいつ迄も寝ているのは、根が利口でなく、どこかゆるんでいるのか、 或いは起きている間が人並み外れて利口な為に、その疲れで眠るのか、そのどっちだか私にはわからない> 眠いのは、夏は短夜(みじかよ)だからと思ってみたが、辻褄は合わないのは承知している。 代わりに俳句を引いてみた。 まずは百鬼夜行をうたった子規の句。 百鬼園こと百閒先生の句。 オッと、おばけの夢を見なければいいが。 |
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リサイクル 10年ほど前に買ったパソコンを処分しようと考えて、 買ったときの段ボール箱に詰め込み家の中の邪魔にならない場所に置いたのは4カ月前で、 その儘にしている。 処分するにも手順を踏まなければならない。 メーカーに回収リサイクルの申し込みをして、 料金を支払い、伝票を受け取り、郵便局に引き取り回収の手続きと、全部で6つの手順がある。 何だか億劫なので今まで放っていたのである。 いっそ日曜日ごとに近所を回っている電気製品の回収業者に持っていって貰おうか、 と思ったけれど、その気になって待っているとなかなか来ない。 或いは家の前を通っているから見てみると、何とも頼りなさそうなおやぢなので気が進まなかった。 やれやれ。 もうひとつハードーディスクをどうするか。 メーカーの営業所で、ハードーディスク内のデータを消去するソフトを販売しているらしい。 一回使用のライセンスで何百円だから買おうかと思ったけれど営業所に出かけるのも億劫である。 暑いしね。 それでハードーディスクを取り出して壊すことにした。 段ボール箱から本体を取り出して、ドライバーで作業は5分とかからない。 メーカーに電話してひとつめの手順が済んだ。 10年前のパソコンだけど、まだ十分使えるのだ。 ただし、最近のメモリを食うソフトは動かないだろうし、 マイクロソフトは先月からセキュリティ修正のアップデートを打ち切った。 まあ、それよりも以前からネットには接続しないようにしていたから、そのときウイルス対策ソフトも外した。 すると負荷も減って、案外と快適に使えたものだが、 何しろこの4、5年は使っていなかった。 10年前のデスクトップだから、ブラウン管のディスプレイは場所を取る。 机ひとつ分を占拠するので、段々と目障りになったのである。 使えるけど使わない。 それでもはじめの5年間はよく働いた。 もって瞑すべし。 |
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残暑 外を歩くと汗が出るから、小さく折り畳んだ手拭いで汗を拭く。 ♪残暑は続くよオ、いつまでもオ。 ぼんやりとテレビを見ていたら、熱中症の予防についてお医者が講釈していた。 曰く。 朝ご飯は食べること。 水分は一日2リットル摂ること。 水に麦茶や蕎麦茶はいいが、緑茶やコーヒーはカフェインを含むからいけない。 利尿作用があるので脱水状態を起こしやすいからと。 まあ、云われなくてもそれぐらいの分別はあるのである。 うちでは日に2度麦茶をつくる。 冷蔵庫にはいつも冷えた麦茶があるようにしている。 夜は西瓜か桃を食べる。 ことしのは甘い。 西瓜のはしまで甘いのはどう云うことだろう。 まあ、旨ければそれでいい。 これで水分は摂れている。 そのうえ寝酒はハイボール。 グラスに氷を半分のところまで落として(たぶん多すぎ)、ウヰスキーを注ぐ。 よく冷えたソーダ水をたっぷりと加えて出来上がり。 一杯目は格別で、ソーダ水の泡がシュワッとしたとこで一口呑む。 この清涼感はビールでは味わえない旨さもある。 |
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東京の戦争 空港の搭乗手続きのカウンターで、飛行機の到着が遅れるため出発は30分以上遅くなりますと云われた。 余裕をみて早く来たので随分と待たされることになった。 その間に読んだのは先日亡くなった吉村昭さんの『東京の戦争』(ちくま文庫)。 <東京での戦争は、開戦から五カ月後の昭和十七年四月十八日の東京初空襲からはじまった、と言っていい。 中学三年生に進級したばかりであった> その三年後の四月十三日の空襲で、吉村さんは日暮里の家を焼き出される。 この回想録は感傷と云うものがない。 当時の生活の些事(さじ)が淡々と描かれる。 昭和二十年三月十日の東京大空襲では10万人が亡くなった。 夥しい死骸が街中にあったに違いない。 その焼け死んだ人々がどう云うように葬られたかなどが書かれている。 終戦の前年の夏、勤労学徒として軍需工場で働いていた吉村少年は肺結核にかかる。 清らかな空気の地で静養するために、吉村さんは奥那須の旭温泉におもむいた。 逗留している宿に電報が届く。 そこには「ハハシス スグカエレ チチ」と青い文字で記されていた。 その時分の鉄道は特急、寝台車などは廃止され、一般の旅行も極端に制限されていた。 軍関係者や軍需工場の社員の出張と疎開のための乗車が優先され、 それを示す旅行証明書によって乗車券を手にすることが出来た。 一般の者への乗車券は、各駅ごとにその数が限られていて、前夜から長い列ができ、朝になって売り出されたものを買ったと云う。 <入手できぬ者が多かった> <私はひるむ気持ちをふるい立たせて近づき、駅員と打ち合わせを終えた駅長の前に立ち、 「母が死にました。家に帰りたいのです」 とふるえをおびた声で言って、電報を差し出した。 それを手にした駅長は、電報を見つめ、私に視線をむけた。 まったくの無表情で、私はにべもなく断られると思ったが、駅長は駅員を呼び、 「上野駅まで一枚、この中学生に渡してやってくれ」 と、言った。 駅員が乗車券を出してきて私に渡し、私は代金を支払って駅長に無言で頭を深くさげた。 駅長は黙っていた。 事務室から直接ホームに出た私は、ハハシスの電報が旅行証明書と同じ、いやそれ以上の効果があるのを知った。 私は、駅長の人情味のある好意に胸が熱くなり、涙ぐんだ> 飛行機は着陸する前に、一度大きく旋回して街の上空を通過した。 窓からはビルや道路の車の列が見えた。 何気なく眺めていると、あちこちにプールが見える。 学校のプールだけでなく、色んなビルの屋上にプールを備えている。 見渡すプールはどれも水をたたえていて水色をしていた。 その色の鮮やかなこと。 ときどき陽の光を反射させてキラキラしていた。 |
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雨台風 このところ台風がぽんぽんと発生している。 夏の台風とは珍しい。 先週の台風7号は、紀伊半島に向かっていると思ったら、 高気圧に頭を押さえられて上陸できずに東の沿岸をちんたらしていた。 そのうち宮城県沖を過ぎて熱帯低気圧になった。 今ちんたらしているのは台風10号で、九州の宮崎に上陸し、その後は九州縦断かと思いきや、 いつまで経っても進まないようである。 東西に張り出した高気圧の間を通り抜けようとするらしいのだけど、 西の高気圧に頭を押さえられて停滞しているのだろう。 テレビのニュースで見ると雨降り台風で、風は余り強くはないようだ。 雨降り台風に長く居座れても困るだろう。 土砂災害の危険もあるし。 きのうは台風10号の影響で神奈川県を流れる酒匂(さかわ)川が増水したと云うから、 夏の台風は迷惑すると云いたいが、天変地異にこんなことを云っても詮ないことである。 |
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砂書帖 ・ 新聞記事から ▼ 太陽系の惑星が現在の9つから12になるかも知れないと云う。 国際天文学連合が惑星の新定義案を発表し、 ①太陽(恒星)を周回する②自己重力を持ち球体に近い形を保っている---ことを惑星の条件にした。 これに従えば、冥王星の衛星と考えられていた「カロン」、火星と木星の間にある「セレス」、 それに太陽から最も離れた軌道を回る天体「2003UB313」が新たに惑星になると云う。 ▼ 2003UB313は、2003年に初めて撮影されて、冥王星よりも大きいのだとか。 一方で、冥王星は惑星とはいえないと云う見方をする専門家もいるそうだ。 ▼ 国際天文学連合はチェコのプラハで開催中の総会で検討し、24日の会員投票で是非を決める。 承認されると1930年に九番目の惑星である冥王星が発見されて以来、76年ぶりに新たな惑星が加わると云う。 |
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