日常茶飯

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目次

ネコバスって、乗ってみたいな

 内田百閒に「掻痒記」と云う一文がある。 掻痒(そうよう)とは、痒(かゆ)いところを掻(か)くことで、 隔靴(かっか)掻痒の感と云えば、はがゆい感じを意味するそうだ。
 「掻痒記」は、頭に湿疹(しっしん)のようなものができて痒くてたまらない。 しきりに頭を掻きむしるが、いくら掻きむしっても虫がおさまらない。 どうしても人に掻いて貰(もら)わなければ、承知出来なくなって来た。 妻は初めから逃げを張り、女中には云いにくいし、子供は小さくて役に立たないのである。 するとお貞さんが、無茶苦茶なところがあって、その役目を敢然と引き受けてくれた。 こんな調子で、百閒は自分のわがままを綴る。 自己弁護や自己卑下なぞせず平気で、ひたすら傍観者のように書いて行く。 その文章が百閒を裸にしてしまう。 そこに上質な諧謔の精神が生まれる。
 黒澤明の遺作、『まあだだよ』は百閒を描いた映画だが、 これは黒澤のどの作品にも似ていない。 賛否両論と云うよりは、悪評が多かった様に記憶する。 松村達雄が扮する百閒に、門下生役の井川比佐志や所ジョージが演じる師弟の交流物語。 これに違和感や気味悪さを感じたと評したものがあったと思う。
 知る限りではひとり淀川長治は、「まことに美しく私は泣いた」と評した。 淀長さんは、これを見た若い人に片っぱしから聞いてみた。 照れくさい。時代おくれ。ついてゆけない。 それに淀長さんは馬鹿かと思ったと、書いている。 続けて、「干からびた地面からは、このような枯れ木の若者が伸びるのか。 この映画、乾いた土に水の湿りを与える」 と、評した。
 この映画で黒澤明は百閒の愛読者であることを白状した。 俳優の土屋嘉男氏によると、これは百閒の名を借りた、黒澤明の裸の姿だと云う。 「自分の弱点をさらけ出す百閒先生に心を打たれていた。 弱みを見せることの大嫌いな自分を、とうとう脱ぎ捨てて自由になった」、と。 それは、長女の黒澤和子さんの、『回想 黒澤明』を読むとよく分かる。 まるで黒澤明の肉声が、生き生きと聞こえてくるように綴られている。 そして、意外な素顔が見えてくる。
 『魔女の宅急便』を夜中に観て、翌朝に目を腫らして、「すごく泣いちゃったんだ。身につまされたよ」。 だとか、『となりのトトロ』の、「ネコバスって、乗ってみたいな。そう思わない?」。 こんな肉声を聞くと、黒澤明が百閒の愛読者だったと云うのは分かるし、 『まあだだよ』は本当に黒澤映画なんだと思える。


淀川長治の銀幕旅行、『まあだだよ』
http://www.sankei.co.jp/mov/yodogawa/930302ydg.html
'05年01月31日

雑記帖 ・ この欄

 ▼ この欄を始めたのは、確か去年の3月下旬だった。 それから2週間ほど経った頃、タイトルの「日常茶飯」を検索すると、 掛かる件数が Google で6千件程度あった。 Yahoo! ではもっと少なかったと記憶する。
 改めて検索すると、何と16万件以上もある。 キーワード「日常茶飯」で掛かるサイトが増えたのは、 去年から流行っているブログと関係しているのかな。

 ▼ この欄は半月経つと、新しいページを用意して、リンクを張り替える。 プログラミングで云うところの線形リストの構造で、 トップページにリンクされるのは、新しく用意したページで、 それに続いて一つ前に新しかったページがリンクされ、順次古い方へとリンクされて行く。 こう云う作りにすると、古くから在るページはリンクの後の方へ行ってしまうし、 新しいページはネット上に現れてから余り日が経っていない。 だから、検索エンジンに引っ掛かりづらいと思っていたら、 Google は最新のページをヒットしているようだ。 いやぁ、驚いた。

 ▼ Web ブラウザの表示では、フォントのサイズを小さくして、文字を小さく表示している。 この欄だと、一行に34文字である。 フォントのサイズを小さくすると、字が潰れたように見えたり省略されてしまうのが困る。 とくに平仮名の濁点と半濁点の区別が曖昧になる。 ただ、これにはフォントに癖があって、それを知っていると余り困らない。 濁点は例えば、「は」に点々の「ば」では点々は垂直方向であり、 半濁点の「ぱ」では丸が斜めの点々になる。 何処のサイトで読んだか忘れたが、ブログ(blog)をプログ(plog)と云う人が増えたとか。
'05年01月30日

オペラ座の怪人

 ミュージカル『オペラ座の怪人』の映画版が明日から全国東宝洋画系にてロードショーだそうで、 どおりで最近いろんなところであのテーマ曲が流れている。 制作・脚本・作曲はミュージカルのアンドリュー・ロイド=ウェバーだと云う。 劇団四季のステージも今月12日から電通劇場 [海]で公演中である。
 矢張りこれは映画よりもステージでのミュージカルの方が見応えがある。 映画はスクリーンに映された平面の世界だけど、ステージは3Dである。 天井から巨大なシャンデリアが落ちて来る。 鏡の中から現れたファントムが、歌姫クリスティーヌを鏡の中へ連れ去ってしまう。 手品のような演出には驚いた。 尤も、ミュージカル映画は余り観ないから偉そうなことは云えないけれど。 前に観たのは『ムーラン・ルージュ』で、あれはなかなか面白かった。
 何年か前に劇団四季の『オペラ座の怪人』を観た時は、 観客席は中央前の上席で、 頭上を見上げると巨大なシャンデリアが吊り下がっていた。 何かの弾みや手違いで、落っこちて来ないかと内心ヒヤヒヤしながら舞台を観てた。

映画『オペラ座の怪人』(非常に重い。ブロードバンドでないと駄目だろう)
http://www.opera-movie.jp/

劇団四季『オペラ座の怪人』
http://www.shiki.gr.jp/applause/operaza/index.html
'05年01月28日

起動できない

 何年も前になるが、パソコンがフロッピーディスクを認識できず困ってしまった。 それで、フロッピードライブ・クリーナーと云うのを買ってヘッドを掃除したら、 何と読めるようになった。
 フロッピーディスクに似たクリーナーは、シャッターを開けると セルロイドのペラペラ円盤の替わりに布製の円盤が入っている仕掛けである。 クリーニング液を2、3滴落としドライブに挿入する。 すると、OSはフロッピーだと思い込んで騙(だま)されて、ヘッドが読み取ろうとガサガサと遣(や)り出す。 暫くすると、「ディスクはフォーマットされていません。フォーマットしますか」 と、エラーメッセージが出るので、「いいえ」をクリックすればクリーニングが完了する。
 ドライブ・クリーナーは他にCD-ROMなどレンズを掃除するものがある。 ディスクの裏にブラシが付いていて、レンズの汚れを取るそうだ。 この仲間にMOディスク・クリーナーも市販されているが、これは MOドライブの説明書によると、装置内部を汚したり傷つける恐れがあるため使用しないでください、 と書いてある。 CDに比べてMOディスクは構造が複雑なのでそうかも知れない。 説明書では、MOドライブではなくてMOディスクをクリーニングするキットを使うようにと書いている。
 話は変わって、お皿のCDで起動する Linux、KNOPPIX を時々使っているのだけど、 それがバージョン3.4から起動できないのである。 CD-ROMから起動するのに自身のドライブを認識出来なくてコケてしまうのだ。 何度も遣るが駄目なので、窮して冒頭のフロッピーディスクの事を思い出した。 駄目もとと思ってディスク・クリーナーを買って掃除してみたが、矢っ張り駄目だった。 トホホ。
'05年01月26日

法律に胡座(あぐら)をかく

 なぜ犯罪に時効があるのか教わったことがある。 時効を過ぎれば罪は問われない。 そうならないように警察や被害者は、一刻も早く犯人を捕まえる努力をし、犯人を逮捕、起訴しなければならない。 法律があるからと云って法律に胡座(あぐら)をかいてはいけない。 それが法の精神である、と聞いて唖然とした。 余り分かったと云う気にはなれず、 寧ろ法律屋はこんな事で威張ってみせるのかと、 思わず嗤(わら)ってしまった。
 モノを盗めば泥棒だが、情報を盗んでも罪にはならないことは随分前から承知していた。 それでも、刑法の解釈や法律の整備は少しは進んだかと、新聞の解説を読んでみた。 カード会社の社員が顧客のカード情報をCD-Rに記録して持ち出した場合、 どんな罪になるかと云う事例の解説が昨日の日経新聞に載っている。
 答えは、CD-Rが自分の所有物なら罪にならない。 会社が管理しているCD-Rに情報を記録して持ち出した場合は窃盗罪、 自分で管理していた会社の備品であるCD-Rだと横領罪になると云う。 事実、1350万円の被害となった昨年9月のUCカード情報流出事件では、 業務委託先の社員が会社の用紙に書き込んで会員情報を持ち出した。 紙の窃盗罪にするのか、それとも他の罪が成立するのか、四ヶ月経っても法的処分が決まらないと云う。
 昨年2月、キャッシュカードを盗まれ預金200万円を引き出された被害者は、 警察官に「あなたが盗まれたのは、プラスチックのカード。 被害届はカードの盗難と云うことで書いておきます」と、 法律上はお金が盗まれたことにはならないと強弁されたとか。 刑法では、偽造・盗難カードでATMから預金が引き出されると、被害者は銀行となる。 銀行が管理するATMから盗まれたと解釈するらしい。
 旧一万円札の原価は20円だそうだ(新札はもっとするだろう)。 モノに固執するなら、一万円札が盗まれて20円の被害とするなら辻褄が合うように見えるが、 そうしない。 原価20円の紙片に1万円の価値を与えるのは日銀の信用と云う付加価値があるからだろう。 一体、法律に胡座をかいているのは誰だ。
'05年01月25日

くり返し新しい

 「くり返し新しい百閒の世界」と云うコピーで現れた、 ちくま文庫の『内田百閒集成』全24巻は、毎月一冊刊行されて去年の秋に2年がけで完結した。 百閒の全集は、没した1971年に講談社の全10巻と、15年後の福武書店の全33巻がある。 また文庫版では現在は絶版だが、旺文社の全41冊、福武書店の全29冊が刊行されている。 さらに平成になって各出版社から文庫が幾つも出て来て、とりわけこの数年は賑やかだった。
 内田百閒と云う作家は、何度でも蘇りそのたびに新しい作家として登場するかのようである。 それでは、現在出版されている文庫版を数えてみよう。
 まず、岩波文庫が2冊、中公文庫が『ノラや』、『御馳走帖』などの改版で4冊、 講談社文芸文庫2冊、新潮文庫の『百鬼園随筆』、『阿房列車』のシリーズが5冊に、 ちくま文庫が25冊。 全部で38冊になる。 その他に、筑摩書房から文庫版の日本文学全集の第五巻は『内田百閒』である。 果たして、売れ行きはどうでしょうかね。 岩波文庫の『冥途・旅順入城式』は90年に第一刷が出ているが、 本屋で見てみたら去年発行の分は第21刷とあった。 売れているんだなぁ。
 ついでに他の作家が著書の中で内田百閒について触れたものを、著者名だけを並べてみる。 現在出版されている文庫と、新書についてのみ挙げることにする。 そうなると、群ようこさん、佐野洋子さんや小川洋子さんは落ちてしまうけれど (あれっ、みんな同じ「ようこ」さんだ)。 以下、順不同の敬称略。
 阿川弘之、大岡信、川上弘美、池内紀、江國滋、嵐山光三郎、 黒澤和子、司馬遼太郎、高橋義孝、出久根達郎、堀川弘通、高峰秀子、 丸谷才一、佐藤忠男、寒川猫持、中条省平、山本夏彦、赤瀬川源平、 矢野誠一、永六輔、三島由紀夫、齋藤孝、夏目鏡子、瀬沼茂樹、 半藤一利、土屋嘉男、中村明、山田風太郎、宮脇俊三、山本善行、久世光彦、山口瞳、 で終わり。 知っているだけ書いてみたが、もっとあるだろうけれど、これだけ揃えばもう充分。 ホントたいしたもんだ、内田百閒先生。端倪(たんげい)すべからざる人物である。
'05年01月23日

襲名

 3月に十八代目・勘三郎を襲名する歌舞伎の中村勘九郎さんが恒例お練りをした。 勘九郎さんは、新しいもの野心的なものを作りながら、伝統的なものも守っているところがいい。 丸谷才一さんの『ゴシップ的日本語論』(文藝春秋)所収の対談は面白かった。 一部を一寸だけダイジェストして引く。

丸谷: 夏目漱石の小説がなぜすごいかというと、 日本にまだ本格的な小説というものがない時代にロンドンへ行って、 当時イギリスで生まれつつあった新しい小説の外観を学び取りながら、日本の現実を見つめて小説を書いた。 文学運動の現場で自分も参加して創造していったところがすごい。 あとからモダニズム小説を勉強して真似した人とはおよそ程度が違うわね。

勘九郎: ぼくも新しいものをやりたいと思う一方で、 昔の文献を当たると、これは宝庫だと思うんです。 五代目菊五郎の藝談なんかすごくおもしろくて。 だって彼は直接黙阿弥に芝居書いてもらった当人じゃないですか。 だから彼の言うことは一番原作者の気持ちに近くて正しいですよね、まあね。

丸谷: 創造の現場にあったんだからね。

勘九郎: たとえば「弁天小僧」(『白波五人男』)の浜松屋の場で、南郷力丸が「亭主を呼べ」っていきり立つと 「主(あるじ)幸兵衛、只今それへ参りまする」って襖がスーッとあいて出てきますよ。 みんな何のためらいもなくそうやっているんですけど、 五代目さんの本を読むと、「鶴蔵という人の幸兵衛がとてもいい」とある。 この人のは、店先が騒がしいんで、襖をあけてじっと覗いているんですって。 それから「只今それへ……」となって出てくる。

丸谷: なるほど。そう聞くとあの場面は納得がいく。


歌舞伎俳優名鑑より 中村勘九郎
www.actors.or.jp/meikan/members/actors/a0147_kankuro.html
'05年01月22日

漢字かな変換ソフト

 ソフトウェアの新製品を紹介する冊子が郵送されて来た。 ワープロソフトの「一太郎」と、かな漢字変換ソフト「ATOK(エイトック)」 のバージョンアップの案内である。 一太郎 2005 と ATOK 2005 が来月に発売されると云う。
 私は古いバージョンのユーザーで、 一太郎はパソコンに入れてはいるが滅多に使わないからバージョンは忘れたが、 ATOKの方は普段使っている。 いまタスクトレイのアイコンを見ると16とあるから、「ATOK 16」を使っているのだろう。 余り使わないけれど、ワープロと表計算はパソコンを代表するソフトである。
 何年か前に、裁判官が判決文を自宅のワープロで書き上げたファイルをフロッピーディスクに入れて、 裁判所のプリンタで印刷してみると、推敲途中のものを間違って持ってきたことに気づき、 判決が中止になったと云う記事を新聞で読んだ覚えがある。 また米国の連邦裁判所では、こんな椿事(ちんじ)が起こった。 向こうでは、紙に印刷するのではなくデータファイルを配布するのか知らないが、 ワープロ・ソフトは当然マイクロソフトの Word である。 その判決文が書かれたファイルに、編集履歴の記録が残っていて、 (最終)判決文とは全く違った判断が以前には書かれていたと云うことで話題になった。 おっと、脱線しそうなので話を戻す。
 一太郎はかつて日本語ワープロソフトの代表だったが、今は Word が主流である。 一太郎のシェアがどの程度か知らないし、マイクロソフトを嫌って使う人がいるかも知れないが、 衆寡敵せずかも知れない。 今ではオープンソースのフリーソフト OpenOffice.org もある。 しかし、漢字かな変換はATOKの方が良い。 なのにちっとも知られていない。 普通は Windows 付属のIMEを使っている人が多いだろうが、 何故ジャストシステムは「IMEで漢字変換して腹立ちません」と云う類のコピーを遣らなのいか、 僭越(せんえつ)ながら意外である。
'05年01月21日

迷惑メール対策

 常用のメールソフトには迷惑メール(スパム)のフィルタ機能が付いていて、 迷惑メールを直ちにゴミ箱に移すことが出来る。 更にウィルス対策ソフトにも迷惑メールを判定する機能がある。 でも、これって莫迦(ばか)げている。 メールを受けるパソコン側でやるものではないと思うなぁ。 矢っ張り迷惑メールは、そのひとつ手前のメールサーバーの所で遮断してくれる方がよい。 初めから迷惑メールを見ずに済ませたい。
 プロバイダが「スパムブロック・サービス」を始めてから、迷惑メールは余り来なくなった。 効き目はあるが完璧ではない。 新手の狼藉者がサーバーのフィルタを潜り抜けて来ることがある。 盗っ人猛々(たけだけ)しいが、 いずれフィルタの機能も向上するだろう。 これはプロバイダに頑張って貰うしかない。
 もう一つ重要なのは、迷惑メールの法的規制である。 「特定電子メール法」が施行されて2年が経ち、今年は法改正の予定である。 実はこの法律、ちっとも役立たずの木偶(でく)の坊なのだ。 去年、総務省の研究会がまとめた素案では、 法の適応範囲を広げること、罰則の強化を挙げている。
 ケータイのショートメールの類は規制の対象になっていない。 それらを規制対象に加え、 個人のアドレス宛に限定していたのを事業用のアドレスにも拡大するそうだ。 メールの内容にも規制の網をかける。 一旦、間違いや友人を装った内容のメールを出し、 受信者が返信すると広告宣伝メールを出すと云うものも対象にする。
 また違反者の取り締まりは、 まず総務省がメールで警告を出し、これを無視して送信を繰り返した場合に ようやく措置命令が下る。 そして刑事罰は、この措置命令を無視してさらに送信を行なった場合に適用される、と云う 何とも間怠(まだる)っこい。 それをいきなり刑事罰を科せるように検討していると云う。 即効性、実効性のある改正法になることを期待するのみである。
 こう云うことは、法律とプロバイダがやることであって、 末端の利用者がやることではない。 頑張れ総務省、プロバイダと取り敢えず云っておく。頑張れ!
'05年01月20日

自治体 vs ITゼネコン

 NHK「クローズアップ現代」の、『自治体 vs ITゼネコン』を見た。 地方自治体のコンピュータ・システムは汎用機(大型コンピュータ)が中心で、 これは大手コンピュータ・メーカーの寡占市場である。 メーカーが納入する汎用機はプログラムが非公開で、 他のメーカーが保守・改修に関わることができない。 そのため競争入札が行われず、 自治体はひとたび導入すると、高額な保守・改修費用を、 メーカーに謂われる儘(まま)払い続けていく構図になる。 こんな高コスト構造を廃し、小型サーバ(番組ではSunの製品だった)を導入するなどして、 メーカーとの関係を見直す自治体も出てきている、と云う内容だった。
 なかでも、ある地方自治体を少し詳しく取り上げていて、これがなかなか面白かった。 決済システムを構築するのに、県庁の職員が自ら仕様書を書き、 業務内容毎に分散させたシステムにすることで、それぞれ競争入札にかけ、 地元の小さなソフト会社でも参加できるようにした。 そうして掛かった費用は一億円。 対する汎用機メーカーの見積では十四億円だった。
 ところで汎用機メーカーと云うのは、富士通、NEC、日立のことになるけど、 それを「ITゼネコン」と呼んでいたが、なぜそう云うのか見ていて何だかよく分からなかった。 県庁の内部文書の中にも「ITゼネコン」の言葉が使われていたが、 所謂(いわゆる)ゼネコン汚職などの悪いイメージの連想で云っているのかしら。
 ゼネコンと云うのは、もともと業界の言葉で、 汚職事件などで度々マスコミが使ったので誰もが知るようになった。 ゼネコンを、「ゼネラル・コンストラクタ」(総合建設会社)のことだと誤解する人は多いが、 本当は「ゼネラル・コントラクタ」(総合請負業者)である。 全体を設計する、工事全体の指揮者のような役で、これには下請け・孫請けなどがある。 コンピュータ業界も下請け・孫請けはあるから、 それに擬して「ITゼネコン」と云うのかとも思ってみたが、 尤も本物のゼネコンの方は下請け・孫請けの系図の世代数は一桁上だそうだ。
'05年01月18日

アルゴリズムの特許

 今朝は Web ブラウザ Mozilla のブックマークを整理するため、 閉鎖したホームページやリンクの切れたものなどをチェックした。 その中でフリーソフトの画像ビューア「GV」の作者、 とびた氏のホームページを何年ぶりだろう見てみたら、 半年前に四年ぶり更新されていた。 それで、LZW圧縮アルゴリズムの特許の期限が半年前に切れたことを知った。
 これは画像ファイル形式のGIFフォーマットで使われているアルゴリズムである。 もしアルゴリズムと云う言葉に不慣(ふな)れなら「技術」と読み替えるとよい。 もともとGIFファイルは米国のパソコン通信サービス CompuServe 社が開発したもので、 昔からよく使われている画像形式のひとつである。 それが何年か前にLZW圧縮アルゴリズムの特許を持つ米国UNISYS社が、 フリーソフトについてもライセンス契約を要求した。 それで、2000年以来「GV」からGIFファイルの表示機能が削られていた。 その特許の期限が2004年6月20日をもって切れて今は、 とびた氏の「GV」にGIFファイルとTIFFファイルの表示機能が復活している。
 画像圧縮アルゴリズムの特許の問題は、 GIFフォーマットと並んで昔から普通に使われているJPEGフォーマットについても存在し、 こちらは現在も進行中である。 JPEGファイルはデジタル・カメラで普通に使われている。 2002年にソニーは、JPEG特許を使用するためのライセンス契約を結び、 約20億円の特許使用料を支払ったとされ話題になった。 JPEG特許については、三重大学の奥村晴彦さんのホームページに詳しいのでURLを以下に記す。 ページ内のサイトマップを辿って下さい。 アルゴリズムに特許と云うのは変な話なんだ。

とびた氏のホームページ
http://www2h.biglobe.ne.jp/~tobita/

奥村晴彦氏のホームページ
http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/
'05年01月16日

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