日常茶飯

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目次

個人情報保護法

 個人情報保護法が四月に全面施行されることに関連して、先日一寸書いたが、 それで思い出したことがある。
 今では個人情報を保護する法律のひとつぐらいあって当然と思えるが、 以前はそう云う法律は全くなかった。 それが住基ネットが現れて俄(にわか)に個人情報の扱いに関心が集まった。 その経緯から住基ネットとの絡みで出て来たような印象を受けるがそうではない。 これは国際ビジネスの常識と関係するもので、いわば外から来たのだと記憶する。 うろ覚えで恐縮だが記す。
 確か98年だったと思うが、EU(欧州連合)がある法律を発効した。 「EU個人データ保護指令」と云う法律で、 個人情報の保護が手ぬるいとみなした国や企業に、 EUで集めた個人情報の移転を禁じる条項が盛り込まれている。 当時、スウェーデン政府は即座に米国航空会社に対し、 スウェーデン国内で収集した搭乗者の食事メニュー、健康状態を含む個人 情報を米国内の予約センターに移転することを禁じたと云う。
 このEU指令は日本政府を驚かせたろうが、もっと驚いたのは企業であろう。 今や日本の輸出産業は多国籍企業である。 これがEU指令に違反するとなると、 EU域内の現地法人の採用、人事異動の情報から顧客情報まで日本の本社に送る事が出来なくなる。 さらには、電子商取引などへの悪影響を及ぼしかねない。 関係する企業は直ぐに対策を打ち出し、個人情報の管理についての規定を定めたと仄聞した。 今や個人情報保護はビジネスと密接に関係するのである。 また98年と云えば既に一昔。 この事から見て、去年に起きた色々な個人情報の漏洩事件を思い起こすと、 そう云った企業は国際ビジネスとは無縁で国内にしか関心のない、田舎者の経営をやっていたのかと思える。
'05年01月15日

雑記帖 ・ 無題

 ▼ 金曜ロードショー『ドリヴン』を見た。 シルベスター・スタローンは老けたけど、久し振りに見るバート・レイノルズはもっと老けたな。 実際のカーレースの映像とCGとを合成したシーンには、 良く出来たのもあるがゲームソフトの場面のようなものもあった。
 マッチョで売り出したアクション俳優は、腹が出て年を取ったときが難しくなる。 『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスなんかは比較的上手に転身した。 『クリフハンガー』のときのスタローンはまだアクションを演っていたが、 この映画ではそれを脱皮して元レーサー役をよく演技していた。 この映画はスタローンが制作と脚本を担当し、 その脚本は1994年に事故死したアイルトン・セナに捧げるために書いたと云う。 なかなか面白かった。

 ▼ 去年は顧客の個人情報が漏れると云う事件が色々とあった。 なかには大量の個人情報を流出し、お詫びに1人当たり500円を配ったと云う話も聞いた。 調べてみると、個人情報が流出した際の損害賠償の判例が出ていることを知った。 1999年に発覚した、乳幼児健診システムの開発を委託していたソフトメーカを通 じて、京都府宇治市の住民票データが流出し、名簿業者に売られたという事件の裁判である。
 これは、開発を受託したソフトメーカが下請けに丸投げし、さらに孫請けされた。 開発作業は孫請け企業の社屋内で行われていたそうで、 アルバイトの大学院生が自分のMOディスクに住民票データをコピーし、名簿業者に売却したと云う事件。 この事件で、被害者が行った損害賠償の請求で、 大阪高裁は1人当たり1万5000円の支払いを命じた(2002年7月確定)と云うものである。
'05年01月14日

IPアドレス

 メールソフトの設定で、大きなサイズのメールはパソコンに取り込まないようにしているので、 ウィルスメールを受け取らずに済む。 ウィルスを添付したメールは普通、サイズが数10キロバイト程度あるのでそれよりも小さめに メールのファイルサイズを制限していると、 本文と添付されたウィルスを切り離してヘッダだけを取り込んでくれる。 受け取ったヘッダを見ると、差出人のアドレスとX-IP欄のIPアドレスのドメインが違うので、 差出人を詐称したウィルスメールだと分かる。 違っていてもスパムの類だろう。 IPアドレスは、Cygwin の whois コマンドを使えば何処のドメインかを知ることが出来る。
 ウィルスメールは、去年の秋から12月の半ばまで時々やって来ていた。 決まって同時に2通来て、差出人のアドレスは違うがIPアドレスは同じなので、 そういう方針で送りつけるのだろう。 この期間、どれも同じIPアドレスなので固定IPアドレスを持つ人だと分かった。 それなら相手は一人だから、そのシッポを掴んだような気分になった。 年末からは来ないので、 どうやらシッポの付いた御本人が漸(ようや)くウィルスの感染に気づいたのだろうと思っていたら、 今度は別のお客がやって来た。
 実在しないアドレスに送りつけ、 受け取ったドメインのメールサーバが「宛先不明」と送り返すウィルスメールが来たことがあるが、 今度のはそう云う「宛先不明」のメールを詐称するウィルスメールだった。 ヘッダのX-IPは役立つね。
'05年01月13日

雑記帖 ・ 記事から

 ▼ マイクロソフトが毎月一回公開するセキュリティ・ホールに関する修正プログラムは、 米国時間第2火曜日だそうである。 つまり、明日12日に公開される予定。 先週、その予告記事が日経BP社の「ITPro」に載っていたが、 全部で3件中、最も危険なセキュリティ・ホールには、最悪の「緊急」の深刻度が設定されていると云う。

 ▼ CNNの記事によると、米マイクロソフト(MS)が ウィルス駆除ツールを、今月11日から無料で配布すると発表したそうだ。 MSは、ウィルス対策ソフト大手のシマンテックなどと競合するものではないと強調。 このウィルス駆除ツールでは、ウィルスの感染そのものは防げないとして、 大手が販売しているウィルス対策ソフトの導入も呼びかけている、と云う。 これって役立つのかな。

 ▼ ロイターの記事によると、米IBMは、同社が所有する500の特許を寄付し、 ソフトウエア開発者が無料で使用できるようにする計画であることを明らかにした。 この計画は、技術革新を新段階に引き上げることを目的に、 企業による特許の寄付を加速させるためのものだ、と云う。 「ITPro」および、ソフトバンクの「ITmedia」により詳しい記事が載っている。 ここで云うソフトウエア開発とは、オープンソース・ソフトウエアを指すものだが、 これまでに特許が障害になる可能性が云われてきた。 実際、ドイツのミュンヘン市が特許への懸念から、 市役所のデスクトップ・パソコンをLinuxに移行する計画を一時中断した。 現在は再開したようだが(「ITPro」記事)。 画期的なことなのかも知れない。

ITPro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/

ITmedia
http://www.itmedia.co.jp/

CNN.co.jp
http://cnn.co.jp/

ロイター
http://www.reuters.co.jp/home.jhtml
'05年01月11日

文字コードの問題など(続き)

 昨日の欄は、パソコン内にある文字を検索する話で、案外これは必要になる。 ファイルの検索ならWindowsの機能で簡単に済むが、任意のファイルに含まれる特定の文字を一度に検索する 全文検索となるとUNIX伝来のコマンドを使うかスクリプト言語などを使って出来る。 ところが、コマンドプロンプトが文字コードのユニコードに対応していないので困る。
 そこで、高機能テキストエディタを変わりに使うことにした。 現在使っているエディタは秀丸エディタで、この欄を書くのにも使っている。 以前は、WZエディタ ver 3.0 を使っていた。 8年前の年代物なんだけど、MS-DOS時代に有名だったVzエディタのWindows版である。
 ver 4.0 になった時、メーカーが特別優待販売のハガキを送ると云ってたので、 待っていたら、ちっとも送って来ない。 それでバージョンはその儘(まま)になっている。 何不自由なく使っていたが、 去年の11月にこの欄のページの文字コードをユニコード(UTF-8)に変更してからは秀丸を常用するようになった。 古いバージョンのWZエディタがユニコードに対応していないからである。
 これら高級エディタには、当然grep程度の機能はある。 指定したディレクトリおよびサブディレクトリにあるすべてのファイルについて、 含まれる文字列を検索することが出来る。 使ってみるとなかなか便利で、 作業の連続性と云う面からも、今までのようにコマンドプロンプトからテキスト処理をするよりは、 エディタで行う方が効率が良いような気がして来た。 そうなると、 これまで見向きもしなかったエディタのマクロ機能を覚えてみようかと欲が出て来そうである。
'05年01月10日

文字コードの問題など

 コマンド操作の話なので、興味がない人には申し訳ないが、 ホームページを持っている人には参考になるかもしれないと云う話題です。
 昨年11月始めに、この欄のページの文字コードをシフトJISからユニコードに変えたことは何度か書いた。 その理由と結果として良かったと云う話も記したので省略するが、 一寸した問題に気づいた。
 先日ページの手直しをした。 何年も前に書いたプログラミングの解説ページで、 あるファイルの拡張子が、.html ではなく .htm になっていることに気づいて、 .html に変更しようと思った。 なぜと云うに、これが実につまらない事なんだけど、デフォルトの Web ブラウザは Mozilla なのだが、 どういう訳か拡張子 .htm だと IE に関連付けられて目障りだったから。 それで、そのファイルの拡張子を書き換えた。
 ところがそれだけで済まないのがホームページのファイルで、 このページをリンクしている他のページも変更しないといけない。 何を書いていたか忘れているので、こう云う時は、UNIX伝来のコマンド grep である。 これは Borland のコンパイラにも付属している(それを使っている)。 コマンド・プロンプトで、
grep  -n  [そのファイル名]  *.html
とやると、そのディレクトリにあるHTMLファイルの中から「そのファイル名」を含むファイルと行番号 (オプション -n )をずらずらとリストアップしてくれる。 これで変更すべきファイルとその場所が分かる。
 さて本題です。 以上の話は、文字コードがシフトJISの場合は問題はない。 ところが、Windows 2000 のコマンド・プロンプトはユニコードには対応していないのである。 そう、ユニコードのファイルについては grep が使えないことに気づいた。 Windows 2000 はユニコード対応だと云うけれど、 コマンド・プロンプトでこういう作業を想定していないのかな。 プログラムをいじるだけならシフトJISだけで済むよね。 でも、コマンド・プロンプトはそれだけじゃないのに。
 もう一つ、Web ページを作成してくれるソフト、「ホームページ何やら」と云うのは 上のような問題が起きた時、変更すべきヵ所を検索できるのだろうか。 知らないので、使っている人がいたら教えてもらえると有り難い。 このお話続く。
'05年01月09日

エドワード三世

 へェーなのだ。 去年の暮れに白水社から刊行されたシェークスピアの『エドワード三世』は初邦訳の戯曲だそうだ。 新たにシェイクスピア作と認められた歴史劇だと云う。 以下は、今日の日経新聞文化欄に基づく。
 日本でシェークスピア劇は坪内逍遙以来の翻訳の歴史を持つが、戯曲の数は37というのが常識だった。 小田島雄志訳の全集も37だし、蜷川幸男演出の全作品上演の数も37。 ところが90年代後半、コンピュータを用いた文体研究などが進み、40とみるのが一般的となってきたと云う。 『エドワード三世』の場合、ソネットや他戯曲のセリフとの類似、一連の歴史劇との連続性の検証により 修業時代のシェークスピアが全編執筆したと云うのが最新の研究だそうだ。 『エドワード三世』の訳者で、英文学者の河合祥一郎氏は、「今まで訳されなかったのが不思議です」と 新聞紙面で驚いてみせた。 更に翻訳が遅れたのは「日本人が最新研究に疎い」からと云うので、またヘェーと驚いた。
 こんな重要な見直しが起きるのはなぜか。 英文学者の蒲池美鶴氏によると、37作品のうちシェークスピアによる純粋なオリジナルは何と3作だけ。 他はすべて、他作家の作品からの引用があると云う。 当時は模倣と引用は日常茶飯事だったようだ。 また共同執筆作品も多く、 一部の執筆だけでもシェークスピア作と認めるのが今では通例となっているそうだ。 そう云えば、井原西鶴の作品だって、西鶴自身の作は『好色一代男』のみだと森銑三は唱えた。
'05年01月08日

門松の竹

 今日までが松の内だそうで、正月が終わって、今日は七草粥を食べた。 尤(もっと)も食べたのは朝ではなく夕飯だった。 本来は縁起を担ぐものだろうけど、ここのところ忙し過ぎた胃を休ませたと云うのが実情であった。
 ところで松の内の期間に飾る門松のことだが、中央を占める三本の竹の先端の切り口は、 地域によって違いがあるそうだ。 竹槍のように斜めにスパッと切ったものと、節のところで水平に切ったものがある。 この違いは、戦国時代の武田信玄と徳川家康の戦(いくさ)に由来するのだとか。 そもそも門松の形そのものが、竹(武田)を松(松平)が包囲する造りになっている。
 こういう謂(い)われがある。 元亀三(1572)年十二月二十二日、三方ヶ原の戦いで徳川勢は武田軍団に敗退する。 このとき家康はほうほうの体で浜松城に逃げ帰る。 城に入った家康は絵師を呼び、情けない自分の姿を描かせたと云う。 年が明けた元亀三(天正元)年の元旦、武田方から使者が来て歳旦の句が届けられた。 そこには「まつかれて たけたくひなき あしたかな」と記されていた。
 普通に読めば、「松(松平)枯れて 竹(武田)類なき 明日かな」となる。 三方ヶ原で家康を打ち破った信玄の自身を表した句である。 これに家康と重臣は肩を落とした。
 ところが、そのとき、「そは間違いぞ。正しくはこう読むのだ」と進み出た武将がいた。 徳川四天王の一人、酒井左衛門尉忠次である。 彼は朗々と読み上げた。 「松枯れで 武田首なき 明日かな」。 当時のことだから、元の句には濁点は付いていない。 だからどう濁点を付けるかは勝手である。 「松平は枯れないで、武田の首がなくなる」と云う意味に転じて、徳川方は意気揚がった。 そして、二年後の天正三年に長篠の戦いで武田軍は織田・徳川連合軍に敗れる。 徳川方では、この忠次の解釈を長く讃えるため、元旦の門松の竹を斜めに切ってその吉例とした。 爾来、御三家、親藩、譜代大名の地ではおおむね、竹は斜めに切ってある。 一方、山梨を含め外様大名の地では、竹の頭は水平のままが多いと云う。 以上は、網淵謙錠著『史談百話』の孫引き。
'05年01月07日

「夏目家の糠みそ」

 昨夜はTBSドラマ「夏目家の食卓」を見た。 漱石と鏡子夫人役は、お茶のCM「伊右衛門」のコンビが演っていてけっこう楽しめた。 虚実ない交ぜハチャメチャのホームドラマで、これはまさに久世光彦ワールドである。
 面白がって見たが、何だか物足りない気もした。 時代が違うのに芥川龍之介が出ていたが、まあそう云うことはどうでもよい。 それよりも、明治の日本家屋はどういう間取りになっていたのか、 そのあたりをどれだけキチンと扱っているのか気になった。 また漱石は子供七人の大家族だったが、 それを子供二人に省略していたけれど、 寧ろ大家族で卓袱台(ちゃぶだい)を囲むような演出の方が面白いかもしれないとも思った。 尤も、漱石は書斎に食事を運ばせていたそうだけど。 食事の献立をテロップで入れていたが、もっと一週間分ぐらいのメニューを並べて出して欲しかったな。
 このドラマのことは年末に何かの広告で知っていた。 原作は夏目鏡子述・松岡譲筆録の『漱石の思ひ出』と、もう一つ漱石の孫娘の半藤末利子さん (松岡譲と漱石の長女筆子の四女)の『夏目家の糠(ぬか)みそ』だそうで、 そして、『糠みそ』はPHP文庫にあることを知った(ドラマのおかげ)。 年が明けてから買って読んでみると、これが面白い。 描写が生き生きとしている。 人物もさることながら、その時代の情景が良く描かれている。
 「早稲田に移ってからは、夏目と染め抜かれたハッピを着た年輩の植木やさんが毎日のように来るようになって、云々」 なんて云う記述がある。 ハッピは昔の職人が着た印半纏(しるしばんてん)のことだろう。 夏目入りの印半纏は、おそらく夏目家が植木職人に贈ったもので、普通は盆、暮れの二回出したと云う。 竹田米吉の『職人』に描かれる昔の職人姿を彷彿させるようだ。
'05年01月06日

ネットワーク端末

 今年4月から、個人情報保護法が完全施行される。 そうなると会社から持ち出したノートパソコンが盗難に遭い個人情報が流失する事態になれば、 もはや盗難の被害者面(づら)することは出来ず、違法行為で処罰される事にもなる。 寧(むし)ろ、持ち出し可能なノートパソコンに個人情報を入れること自体許されないようになるのかもしれない。 これに関連して、昨日の日経新聞の記事が目を引いた。
 「日立、パソコン利用全廃」と云う見出しの記事で、 パソコンメーカでもある日立が、社員が業務で利用するパソコンを全廃すると云う。 変わって情報漏洩防止型のネットワーク端末に切り替えるそうだ。 記事によると、このネットワーク端末はハードディスクを持たず、 ソフトウェアやデータは全て本社サーバーに蓄積される。 社員には認証装置を配布し、利用のたびに使用資格を確認。 資格がないと端末の電源が入らない仕組みになっていると云う。 本社サーバーに不正にアクセスされない限り情報漏れの危険はないそうだ。 パソコン生産の6割が企業向けの日立は、新型端末の外販にも早期に踏み切ると云う。
 ネットワーク端末は、インターネット普及期に米オラクルが構想を推進したそうだが、 当時はブロードバンド通信環境が未整備で頓挫してしまったようだ。 ブロードバンド環境が低コストで可能になった今こそ機は熟したと云える。 現在国内では米サン・マイクロシステムズが99年からネットワーク端末を販売していて、 今後は他のパソコンメーカーも製品化に動くと見られているそうだ。
'05年01月04日

雑記帖 ・ 年末年始

 ▼ 年末の二十九日から元日までパソコンの電源は切ったまま、 電子メールのチェックなどもせずに過ごした。 年末年始ぐらい、パソコンもネットにも一切関わらずに居るのも新鮮で気持ちが良い。 二日の晩に電源を入れて、年末年始のメールのダウンロードとウィルス対策ソフトのデータを纏めて更新する。

 ▼ 今年になって新しく変わったテレビCMに、ジャズ・ボーカルのスタンダード「煙が目にしみる」が流れていた。 懐かしいな。 あれっ何処のCMだったけ。

 ▼ 去年の八月中旬から読んでいた『百鬼園戦後日記』を終えた後、 それ以前の日記である『東京焼盡』を後から逆に読んでいたが、九月になって中断した。 何処まで読んだか忘れたし、読んでいた感覚を失ったので、年末二十九日に改めて『東京焼盡』を今度は初めから読む。 それを今日、読了する。

 ▼今日は初詣に出かけた。 三日の午前中だからか、余り混雑していなかった。 この一年間の無病息災を願い、帰りにお守り三つ買う。
 内田百閒(ひゃっけん)は持病の心臓病を患っていたせいか無病息災ではなく「一病息災」と云った。 次のように書いている。 「病気を自慢らしく云ふのではないが、又決して悟つてなぞゐるわけでもないけれど、 病気と云ふものは、あの世へ行く道筋であり、或は近道でもある。 無病息災の人人はその道に踏み迷ひ、 そつちへは行かないのか知らと考へてゐる内に有病の君子と同じ方へ動いてゐる事に変りはない。 どうせいやな所へ同じ様に行きつくものなら、寧ろその道筋だけでも踏み馴らした方がよくはないか。 無病息災は字面の上でも重複冗語(トートロジー)に見える。 一病息災で結構であるからその一病を大切にし、一病の道の果てを目の届く限り眺める様に心掛けたい」。
'05年01月03日

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