日常茶飯

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#14 
目次

きぬたの音

  みよし野の 山の秋風小夜(さよ)ふけて
  古里さむく ころも擣(う)つなり

 大きな根かぶを台にして、その上で衣物(きもの)をトントントンと敲くきぬたの音は、 幼い頃の記憶に残っている。 さびしい様な、なつかしい響きであった。 酒倉の空いている所に台を据えつけ、おばさん達がころもを擣(う)つ。 離れた所で聞いていた耳の底の響きがよみ更って来る樣である。


 内田百閒、晩年の随筆「みよし野の」(『日没閉門』所収)の冒頭の一節である。 きぬたの音なんて、何とも床しく懐かしいような響きがある。 勿論、きぬた(砧)は知らないが、布のつやを出したり、やわらかくしたりするために 布をのせて槌で打つ木や石の台、または、それを打つことだそうだ。 冒頭、

み吉野の山の秋風さ夜更けて ふるさと寒く衣うつなり

は新古今集に収められた参議雅経の歌で、小倉百人一首にも入った名歌である。 百閒の文章には床しい言葉が現れる。 その床しさは古歌の裏うちがあるからで、 「みよし野の」は、 郷里岡山で六高の学生時代、レストラン三好野と浩養軒で評判の美人の双璧の思い出を 綴ったものである。 その老愁の境地は、まだわからないけれども、 この名文は次のように終わって余韻を残す。


 世の中の移り変わりで、消えて無くなる物の多い中に、呼べども戻らぬ一つ、 きぬたに幼時の思い出をからめて、三好野のお照さんや浩養軒のおえんちゃんを煩わした、 老いのくり言、きぬたの音の如くさびしいな。
'04年10月14日

ウィルスメールや迷惑メールの見方

 今年の初め頃、私のメールアドレスの記述をトップページから引っ込めて、 別のところに置いてみた。 去年からワームというのが流行り、これは検索とメール機能を持ち、差出人を詐称する。 感染するとディスク内のメールアドレスを収集し、自身をメールに添付して送り、 収集したアドレスで差出人を詐称する。 そこで、トップページにメールアドレスがあると感染したPCに晒される機会が多いから引っ込めた。 すると最盛期には日に200通ほど来ていたのが、日を追う毎に減った。 今ではあまり来ない。 勿論、ウィルスメールが以前ほど蔓延しなくなったのかもしれないが、 そのへんの事情は知らない。 兎に角効果ありである。
 五月の連休の頃、この欄で、ウィルスメールの本当の送り主を見分ける方法について書いた。 メールのヘッダには通信路の記録が残っているから、 ヘッダを見れば、どこの組織(会社や役所や学校やプロバイダー)から送られてきたか が分るといった内容だった。 メールのヘッダを表示するには、例えば Outlook Express では、 メールを選択しマウス右クリックでプロパティの詳細を開けばよい。
 ところで、最近このメールのヘッダの形式が変わったようだ。 詳しいことは知らないが、より詳細な情報が記録されるようになった。 以下は、内容は以前に書いたことと同じである。 その中に「X-IP」と云う項目があって、

X-IP: 123.45.67.89

などと数字を「.」(ドット)で区切った、IPアドレスがある。 これが、差出人のIPアドレスである。 IPアドレスが分れば、ドメインを知ることが出来る。 UNIX系のOSだと、「whois」コマンドでドメイン情報を調べることができる。 WindowsでもRedHat社のCygwin(フリーソフト)をインストールすれば、 同じコマンドを使うことが出来る。
 もっと簡単にドメイン情報を調べることも出来ると云うのが新しい話で、 日本のドメイン情報を管理するJPNICのサイトで、IPアドレスを入れて検索することが出来る。 これは、ウィルスメールに限らず、スパムメールや迷惑メールについても使える。 少なくとも、どこのプロバイダーや、所属する組織名が分る。

JPNICの「Whois GateWay」
http://whois.nic.ad.jp/cgi-bin/whois_gw

'04年10月12日

祝祭日

 祝祭日(国民の祝日)なので休みであるが、本当は少々迷惑している。 祝祭日の分だけ平日は減る。 平日が減った分だけ、残りの平日は忙しくなる。 先週末テレビを見ていたら、「三連休です」と喜々としていた。 ひとりぐらい迷惑そうな顔をしてもよさそうだが、誰もしないし、しても撮さないんじゃないか。
 体育の日は、40年前の東京五輪の開催日が10月10日だったことに因んだものとは、 今日の産経抄で知った。 連休にするために、祝祭日をふらふら移動させるから、日付が段々と曖昧になる。 ぜんぶで15日あるのは知ってても、その都度カレンダーで確かめないと分らない。 名前の付け方も曖昧で、下手である。 明治天皇の誕生日を文化の日としたり、 昭和天皇の誕生日をみどりの日とするのは不可解だし、 なんで海の日なんだろう。 5月のゴールデン・ウィークを、ぜんぶ連休にするために、こどもの日の前日は名無しの休日になった。 だからと云って、祝祭日が楽しくないなどと云っている訳ではない。
'04年10月11日

台風22号

 今度の台風22号は、過去十年間で東日本方面に上陸した台風と比べても、最も勢力が強いクラスだそうだ。 また、勢力が強い割に小型のため、接近すると急激に風雨が強まる可能性があると云う。 気象庁のホームページの天気図を見ると、秋雨前線が、列島の九州から関東にかけて沿うように、 太平洋側で弓なりに張り出している。 その南から、台風が前線を押し出す形で近づいて来るのが分かる。
 天気図を見ていたら、いまから約二千二百年前の「ザマの会戦」を連想した。 北アフリカの大国カルタゴと新興国ローマとで一世紀以上にわたる「ポエニ戦役」の行方を決した会戦である。 カルタゴの将は、スペインから象と大群を率いてアルプスを越えローマに攻め込んだ、稀代の名将ハンニバル。 対するローマは、若き知将のスキピオ。 この二人の武将は、「現代に至るまでのすべての歴史で、優れた武将を十人あげよと言われても、 二人とも確実に入るにちがいない」と、塩野七生さんは書いている。 そして歴史上まれな名将どうしの会戦が「ザマの会戦」である。 この会戦で、百戦百勝のハンニバルを破る、スキピオが最終段階でとった陣形が、 今の秋雨前線と台風の配置にどことなく似ているのだ。
 ゆっくり読んでいる、塩野さんの文庫版『ローマ人の物語』は、カエサル登場で「三頭政治」 の時代に入り、カエサルはガリヤ戦役に赴き、キケロは追放され、 所謂「泣き虫キケロの段」を過ぎたあたり。 明日は、読書して過ごそうか。
'04年10月08日

Mozilla 1.7.3 日本語版

 最新のMozilla日本語版が公開された。 リモートで任意のコードが実行される脆弱性などが修正されている。 下記の Mozilla Japanからダウンロード出来ます。
 Mozillaは、タブブラウズ機能が便利なのだ。 リンクを右クリックして、タブで開くことが出来る。 複数のページを読み比べるときに便利である。 また、ポップアップブロック機能やCookie マネージャでサイトごとに コントロールできるのがお気に入り。
 Mozillaを使うようになったのは今年からで、それまではNetscape 7 だった。 話がこのように進んで思い出したが、 一昨年の年末に、Netscape 7 とウィルス対策ソフト 2002 が喧嘩することを発見した。 発見は生易しいものではなかった。 Windows 2000 が次第に不安定になり、やがて起動した途端に死んでしまう。 何度かOSをクリーンインストールしても同じ事が起こり、ようやく突き止めた。 これ、Netscape 4.7 だと問題はないのである。 そこで、ウィルス対策ソフトのサポートに問い合わせたら、 返事は丁寧だが内容は「Netscape 7 に関しては、動作確認をしていないので知らぬ」と。 更に、「お客様の場合、以下のご利用方法の何れかになるかと存じます。 一. Netscape 7をご利用のまま、ウィルス対策ソフト 2003 にアップグレードしていただく。 二. ウィルス対策ソフト 2002 をそのまま使いたいのであれば、以前の Netscape をご利用いただく」。 勿論、サポート期間内なのでアップグレードは無償で出来たのだが。 「知らぬ」と云ったが、この回答で動作確認をしていたのを白状してしまった。


Mozilla 1.7.3 ホームページ
http://www.mozilla-japan.org/products/mozilla1.x/

'04年10月07日

看板に偽り

 食品に「カロリーゼロ」「無糖」「シュガーレス」と表示されていれば、 カロリーや糖分は入っていないかにみえる。 しかし、実際は完全にゼロでなくてもこう表示できるのだそうだ。 四日の日経の記事にあった。
 表示方法は法律で決まっている。 健康に重大な被害を与えるような表示違反があれば、法律に基づき、 勧告や改善命令あるいは懲役や罰金も科される。 ゼロでないのにゼロと表示できるのは、成分を検出する際の誤差を考慮したためで、 基準値を超えなければ許される。 それでも日本は、法律のゼロの範囲は広いと云う。
 ところで、「砂糖不使用」とは、単に砂糖を使ってないという意味だそうだ。 砂糖無添加と云ってもハチミツをたっぷり使っているかもしれないのだ。 嘘はついてはいないけど、騙される人もいるだろう。 これでは「広告」の得意な手口である。 広告は都合の良いことは大きく掲げ、悪いことは小さく、あるいは沈黙する。 それでいて、嘘はついていないので許される。
 俗に、「たてまえ」と「本音」と云う。 そして「たてまえ」は大事だと云う。 なぜなら、それを看板に掲げれていれば、真に受けて信じる人がいるからだとか。
'04年10月06日

実験「タテヨコの論」

 以前、高島俊夫さんの「タテヨコの論」(文春文庫『お言葉ですが…②』所収)を引用した。 文章の縦書きと横書きとでは、「思考の通路」が違うという話で、 縦書きで書かれた原稿は、本でも縦書きになっていないとダメだと高島さんは書いている。 同じく、横書きのものはヨコに読まないと読みづらいと。 この「タテヨコの論」の実験を先ほど一寸(ちょっと)してみた。
 筑摩書房のHPに、PR誌「ちくま」のWeb版がある。 その中に俳優の長塚京三さんの連続エッセイ「老年前夜」を一時間ほど前に読んでいた。 表題をクリックすると、小さなウインドウが開く。 縦書きで目次が現れて、最初の「必殺ノ一段」を読んでみた。 縦書の文章に背景画は原稿用紙になっている。 自宅ベランダに咲いている花を狙って、乱暴狼藉のかぎりを尽くすカラスに不意打ちを食らわせたという話の、 軽妙で味わいのあるエッセイである。 読んでいるうちに、縦書きで読むのもいいなあと思った。 この縦書きウインドウは、ボイジャー社のプラグインを使ったもので、前に電子書籍の「立ち読み」 をしたときにインストールしている。 暫く読んでいて、左上の方にアイコン程度の罫線がある。 マウスでクリックすると、なんと横書きに変わる。 すると文章が読みづらくなった。 頭にスイスイと入らない。 高島さんの意見に納得した。 長塚さんは縦書きなんだな、よくは知らないけれど。 これは、年齢から想像するのではなくて、 ベテランの俳優だからそう思う。 映画やドラマの台本は、昔から縦書きである。 欧米ではどうだか知らないが、縦書きの台本はやりやすい。 稽古の読み合わせで、台本を丸めながら読んでいる場面を見たことがある。
 もうひとつ、横書き派と思われる玉木正之さんの文章を読んでみた。 玉木さんは、時々テレビで見ている。 オリンピック、Jリーグやプロ野球のあるべき姿についての意見は、筋が通っているし、 「まともな人」だと思っている。 読んだのは、最後の目次「スポーツ・ジャーナリズムの将来…」で、 タイトルからして長すぎる。 明らかに横書きの人。 七月はじめに書かれたものだが、これが最近のプロ野球の騒動を彷彿とする内容である。 玉木さんの主張に同意する。


筑摩書房のURL(上のリンクの「ちくま」をクリックすると行けます)
http://www.chikumashobo.co.jp/top.html

ついでに見つけた、玉木正之さんの公式ページ
http://www.tamakimasayuki.com/index.htm
'04年10月03日

蕎麦談義

 昔のことはよくは知らないが、盛り蕎麦(そば)は、セイロを重ねて二枚、三枚と食べてたようだ。 今と違って、値段は安かったとみえる。 馴染みの蕎麦屋は、ちょっと遠いのでそんなにしょっちゅう行くことはないが、 昔の名残であろうメニューに一枚半や、二枚もある。 少しだけ割安になる。
 はじめの頃は、箸でつかむのに難渋したが、錬磨の甲斐あって今ではすらすらほどける。 何のことはない、真ん中の頂上から順に取って行けばよかったのだ。 つゆはちょっとつけるのが通(つう)なんだそうだが、それはおかしい。 つゆにも濃いのと薄いのがあって、その加減によるだろう。 濃いと辛いからちょとつける、そうでなければ遠慮することはない。 ただし、生山葵(わさび)はつゆに入れないで、蕎麦に直接つけて食べるのがよい。 その方が山葵の風味が生きるし、後に蕎麦湯で割って飲むときのため、つゆは濁さないのがよい。
 馴染みの蕎麦屋は、店に入るタイミングがいつも難しい。 もともと狭くて席は少ないので、昼時になると直ぐにふさがってしまう。 それでも蕎麦屋というものは、直ぐに食べて長居はしないところで、 時間を見計らえば空いている筈だが、その間合いについては未だ錬磨していない。 某月某日の休日に開店時を見計らって入ってみたら、お客は三、四人ほどだった。 ところが、食べ終わり出された蕎麦湯は、まだ薄いから蕎麦粉を足してあると、店の者が云った。
'04年10月02日

イグ・ノーベル賞

 ノーベル賞のパロディがあるとは、十年ぐらい前に何処かで聞いたか読んだかして知っていたが、 カラオケを発明した日本人がその平和賞に選ばれて今日、米ハーバード大で授賞式が行なわれたと、 ニュースで云っていた。
 そのイグ・ノーベル賞とは、ignoble を掛けてもじったもので、「愚かなノーベル賞」と云うことらしい。 「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられる賞だと説明していたが、 記憶では少し皮肉を込めた意味合いがあったような気がする。 この賞のことを知ったのも、受賞者が日本人というか気象庁で、 ナマズと地震の関係について長年の研究に贈られた(と記憶しているが)。 阪神・淡路大震災より前だったと思う。
 ノーベル賞の方でも、いろいろと可笑しい話がある。 授賞式はスウェーデン国王臨席のもとに行なわれ、 その時国王は階段の上にあり、受賞者は階段を上っていって壇上で金メダルと賞状、 賞金の小切手を受け取る。 その後階段を下りることになるが、普通に降りると国王に背を見せ失礼になるのでどう降りるか、 と云うのがあった。
 授賞式の後には、学生主催の余興「カエル跳び」がある。 これは一昨年の、田中さんと小柴さんの受賞のときに有名になった話でよく知られている。 受賞者は、カエルの衣装を着て学生たちの前でカエル跳びをやる。 これをやると「カエル勲章」が貰えると云う話だったが、 田中さんたちはやらずに貰えたとインタビューで答えていた。
 ノーベル賞の話題が出るほど暦は秋になった。 既に来年のカレンダーが売られていた。 ついこの前まで暑い夏の余韻を過ごしてたが今日は十月一日。
'04年10月01日

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