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神奈川月記9605

冠省
車検切れのタイミングで考えるはずだったバイク交換,すっかり乗り気だぞ。雑誌記事を集めるようになっていやがる。そういうのは提灯記事が多いんだからね。なに,出る物みな全て絶賛するのが座付きライタの仕事だ。スペックさえ載っていれば後はその絶賛具合から判断できる。PC業界ほど阿漕じゃあない。
欲しいのはスズキの250cc単気筒・ジェベルXCである。ジェベルの綴りは"DJEBEL" で,頭文字Dは発音しない。元はアラビア語で「山」のことらしい。アラビアに山なんかあったのか,月の沙漠のイメイジが強いけど。アララット山はトルコだっけ。
XCはクロカンだと。クロカンと言っても夜間野外で交合することではなく,クロスカントリの略である。
オフロウド バイクのカラリングにはろくなものが無い。このXCも今ふたつ。選択肢もふたつ,スペシャルホワイトNO2/パールスズキディープブルーのコンビとスペシャルホワイトNO2/フロリーナイエローだ。なんじゃいこりゃなんじゃいこりゃ。白/青と白/黄でええやんけ。
どっちもどっちという感じで丙丁つけがたく(そんなに悪く言うな)おれには決めかねる。何人かにご意見を伺って,しかしとどのつまりは鶴の一声で白/青に決まった。
オフ車はサスペンションのストロウク長(ウィールトラベル長)が長いほど偉い。馬力より重視されるくらいだ。1mmでも長ければそのぶん高性能を謳えるので各社きそってこれを伸ばす。脚が伸びるのだから必然的にシート高も高くなり,XCなら88.5cm・外車は平気で90cmを越える。ライダの体重でサスが沈む分と靴底の厚みの分を引き若干股割りになる分を足さないといけないから,自分の脚の実測値と比べても実感が湧かない。88cmだった前のジェベルでは跨って両足を下ろすとおれの踵は浮いていた。せめて片足が楽に接地できるようでないと信号待ちすら不自由である。このクラスのバイクに乗るには身長170cmは欲しい。
これではいかんと言うので以前スズキには車高調整装置の付いた機体があった。サスのイニシャル量を油圧で変えて,走行中でも5cm弱全高を上下できるのである。たった5cmと軽んずるなかれ,シートで5cmの差は身長で10cmの差だ。 170cmのボーダが160cmになるのである。身長160cm台を掬えばどんなに市場が拡大するか想像に難くないだろう。
一時停車やガレ場走行のときに車高を落として足つきを良くし,通常はハイポジで長大なサスストロウクの快適走行を楽しむ。大変なギミックだがいざ発売して購入者にアンケイトを採ってみると,一度上下させてみた後はロウに下げっぱなしでハイそれまでヨ,皆ちっとも活用してなかったらしい。がっくし。このへん前に何度か書いたか。
んじゃ良ーよとスズキははぶてて(たんじゃないかなあ)調整装置を外し,代わりにわざわざ標準車高と低車高の2モデルを用意するようになった。シート高を下げるには普通シートのアンコ抜きをやるのだが,それで悪路や長距離を走ると尻がまっぷたつに割れてしまうので,スズキはRサスの支持位置変更とFサス固定部の寸詰めで実現している。サスストロウク量は極力のこし最低地上高(エンジンブロック底部までの高さ)を犠牲にしたものだから標準でも低車高でも乗車姿勢は変わらないはずだ。
最低地上高は低車高で25.5cm,辛うじてオフロウド車を名乗れるプロポウションである。おれの規準だとエンジンユニットが前後の車軸を結んだ線分より上になければオフ車ではない。エンジンを持ち上げるのは地面の瘤に極力ぶつけないため・渡河時に水没させないためだ。シート・ハンドル・ステップの位置関係はライダの上半身をだいたい垂直に立たせ,跳ねまわる車体を抑えるのにひっきりなしに行なう体重移動のニュートラルを出す。オンロウド車ヨーロピアンスポーツは舗装道路が前提なのでエンジンをもっと下ろして重心を下げられる。ただ旋回性能に関わるのでそう極端には下ろさない。ライダは前傾姿勢を採って空力抵抗を避けるのね。アメリカンはとにかく長大な大陸横断道路を居眠りしてても走っていくような直進最優先のプロポウション,地上高は小さいほど良い。ライダはふんぞり返ってスロットルを開ける以外なーんもせんのが基本である。
おれのようにヨーロピアンとオフロウドの間をふらふらしたり,また別にオン車が辛くなってアメリカンに転向したりといったケイスはままあるが,オフとアメリカンとの両刀使いはまず考えられない。ま,同じ趣味に見られながら(ライダでない人たちにね)オフロウダとアメリカンライダくらい隔たりのあるものもないだろう。お互い解りあうことは決してないのである。
てなこと言っても力んでも,カネの無いことにはどうしようもない。今月はおれの部屋の賃貸契約の更新で2箇月分を払わねばならんかったのだが──悪習だ──その余裕が無かった。ちくそ,車検代も買い替え代も出せずに,単にコテツを売り払っただけという結果にならんだろうな。


シャープザウルスにとうとうカラ液晶モデルが登場,最上位機種は15万円だそうである。わー,誰が買うんだ。おれの周りのザウルスユーザは口を揃えて,カラだと却って見難いなどと見る前から言っている。
カラ ザウルスが酸っぱいかどうかはさて措きおれにとっては現行モデルでも高嶺の花だ。ファクスモデムの付いたのは9万円するし通信機能を省いたのでも6万か。サイズも中途半端で,どうせなら日立のポシブルくらい大きいほうが嬉しい。
最も買う気を萎えさせるのは,すぐに新しいハードが出て着実に前モデルを時代遅れにする販売計画だ。そりゃPCだってそうなんだけど,PCはさすがに買い替えを諦められるお値段だし他人が最新機を嬉嬉として操る姿を見る機会が少ない。あんまり嫉妬しなくて済む。下取り制度があれば良いのにねえ。
PDAというより家電の乗りで,大ヒットするだけあってたいへん使い勝手が良ろしい。ただおれは人との約束に飛び回る職種ではないので,はっきり言って使い道が無い。PCにオーガナイザがあればもう充分なのだ。
それでもあちこちに電話する際いちいちオーガナイザを立ちあげて住所録を開くのはかったるい(憶えろよ)。オーガを常駐させておくような贅沢は難しいし,うっかり席を離れてて誰かに覗かれたらおれの秘密がばればれになる。ほとんど日記帳なのだ。それで住所録とToDo・英和/用字辞典くらいがあって2万円台なら買っても良いと思うようになった。そういうのならシャープがWIZというザウルスの機能落ち版を出しており,モデムが要らなきゃこれで充分である。
しかしながらザウルス サイズでもちょっと大きすぎる。おれは鞄を持つのが嫌いで,と言うより両手を自由にしていたいので通勤するにも手ぶらである。元元おれの商売はシャーペン1本サラシに巻いておれば良いのだ。鞄をお持ちの皆さん一体全体なにを毎日もち歩いておるのだ。
凡百の電子手帳とPDAを分かつのはペン入力による手書き文字認識であろう。いくら高性能でも米粒のようなボタンを押して操作するのは厭だ。それはパームトップのPCでも同様である。そして,実はこれが最も重要なのだが,入力した情報を全てバックアップに吸い上げられないといけない。赤外線通信は要らん,有線でも良いからPC相手にアップ/ダウンロウドできるのが望ましい。
ザウルスは最初からパス。WIZは甘木さんが持っていて,バックアップの取れないことが判っている。胸ポケットに入るようなのが良いなーとぼんやり探していたら,カシオがザウルスないしWIZを真似っこしたのをいろいろ出しているのが目に留まった。
カシオの情報ペンシリーズでRX-20というのがどうやらWIZと同等の機能でPCとデイタをやり取りできるようだ。デイタロウディング用のソフト(for Windowsのみ)は付属で接続ケイブルは別売り。どういうつもりだ。本体に比して異常に高価なケイブル込みで激安店なら3万円といったところ。2・3日まよったが結局かってしまった。
Yシャツの胸ポケットにちょうど入る大きさで150g。動作用に単4アルカリ2本・メモリ保護用にボタン電池をひとつ使い,どちらかが生きていればデイタは保持される。5分ほっておくと勝手にスイッチが切れるが,次に電源を入れれば入力作業途中に切れた場合でもそこからリスタートする。ペンで電源のオンオフはできないで,左脇のスライドスイッチ(ちょっと重い)をいちいち操作してやらないといけない。手書き認識は思ったより優秀で,丁寧にやれば鷹の字も判別した。ToDoはただのメモであり,カレンダ(1901年から199年間)と連動していないのが残念。ドラッグ&ドロップによるスケジュール変更もダメ。電源オンの度に未遂のToDoと本日の予定(スケジューリング)件数を表示させられる。文字種はワープロ並み。全角が11×12ドットしかもカシオということでやや品が無い。液晶パネルにバックライトは無く,光線の具合によっては顔が映りこんだりテカったりして見づらいことがある。漢字・国語・英和・和英の辞典があってこいつは重宝する。もちろん電卓や時計もある。
ユーザが入力できるのは本体に用意されたフォーマットに則った定型デイタだけで,プログラミングもアドオンのアプリを載せることもできない(だからPDAとは言えないのかもしれない)。また不要な機能を削除することも適わない。困るのはカードゲイムがみっつも載っていることで──ひとつはお馴染みのソリティア──こんなものにメモリを遣っているとは許しがたいが,やはり消去はできない。何が困るってついついやってしまうのだ。これのせいと言って良かろうが,連続75時間もつという動作用電池が1箇月たらずで切れたん。
白眉はやっぱりPCとのリンクだ。PC側はRS-232Cである。接続ケイブルのRX側はステレオミニジャックにしか見えない。リンク用の付属ソフトはデイタをcsv形式でイン/エクスポウトするので,パラドクスと筆まめとオーガナイザとてんでばらばらに突っ込んであった住所録をいったんエクセルに集めて整え,これを食わせてRXに落とした。非常に楽ちんである。これと手書き認識のあまりのおもしろさに猿となって書き込んだ生死も定かでない旧友の分とで150件あまり,全容量の5%も遣っていない。
値段とサイズ(重量)を思えば満足すべきおもちゃだろう。これでプッシュフォンのダイアラが付いていれば完璧だったねえ。

不一

1996年5月30日


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頭文字Dは発音しない
 「Initial DはSilent D」とルビを振りたいんだけど,HTMLでできんのかいな。『頭文字D』はしげの秀一のクルママンガ。この人,作品自体は上上なのにタイトルがなー。

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ハイそれまでヨ
 青島幸男ですね。『ニッポン無責任男』のテーマ。

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てなこと言っても力んでも
 TV版『いなかっぺ大将』後テーマの1節。昔のマンガはむちゃくちゃできた。

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1本サラシに巻いて
 『月の法善寺横丁』だっけ。ちょっと自信ない。今回歌詞パクり多いな。

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written by nii. n