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神奈川月記9604b

冠省
 小型車 (排気量51〜125cc)のナンバ プレイトは黄かピンク・大きめの中型車(251〜400cc) と大型車(401cc以上) のそれは白地に緑の縁取りで,ひと目で区別が付く。いわゆる原付と250ccクラスのプレイトとは大きさこそ違えどちらも白無地なので混同する4輪ドライヴァがあるかもしれない。
 まぁ車格から判別できるだろうが,最近は中型スクータがよく売れているから「スクータ=原付」の簡易識別法に甘んじていると,わし原付じゃないけん速いんよねの人が他者の目測などお構いなしに突っ込んでくる。自動二輪で任意保険に入っている奴は半数も居ない(これ本当)。ゆめゆめ近付こうと思うてはならぬ。
 大型車の免許(限定解除)は県にひとつかふたつしかない試験場で待ったなしの一本勝負をモノにしないと取得できない。合否は当人の技量もさりながら試験官のキャラとバイオリズムに大きく左右され,受験者の容姿・年齢・職業・性別に差別がある(ように見える)。この制度が大型ライダの量的抑制と質的向上に寄与したことは否めないが,公正とは言いがたい。それがこの秋から教習所でも限定解除ができるようになる。
 限定解除が極端に難しくなったのは暴走族対策に手を焼いた警察がライダ減らしを謀ったものであり,このたび緩和されるのは自国の大型バイクが売れない理由に日本の免許制度を挙げた合州国からの外圧のせいと言われる。どちらも憶測の域を出ないが首肯できる理由だ。更に若年層の人口減で経営の危うい教習所業界からの内圧も囁かれている。
 国産の公道用バイクは250cc・400cc・750ccに集中して外の排気量はあまり見られなかった。近年は900や600といった半端な数字が当たり前に登場している。欧米でポピュラな排気量体系だ。限定解除が比較的容易になることで厚みを増すはずの購買層にヴァリエイションを供するためだろう。それとも輸出向けの設計で国内も賄おうという魂胆かな。
 この免許制度改訂で大排気量化が進み,車検制度も上方シフトするという噂があった。250ccの分水嶺が400ccに移り,中型車の車検は全廃になるというものだ。車検で食っている整備工場には打撃かもしれないが,買い換え需要の見込めるメイカは助かる。お上がどちらに利するかは推して知るべしだろう。実のところコテツを買うときこの噂にちょっと期待していた。しかしどうもガセだったようである。甘木コロす。
 要するに車検代が惜しいのだ。
 ただコテツには未練がある。おれの腕前で限界性能を云云するのは滑稽だしデザインだけの話ならまた250のカタナに戻しても良いわけであるが,400カタナの外乱への強さを知った後ではちょっとつらい。250カタナが軽く半車線は持っていかれるような突風にも400カタナは動じないのだ。荒れた路面や滑るペイント・マンホール蓋にも振られにくい。段違いに安全性が高いのである。それほど多くのバイクに乗ったわけではないけれども,Bike Of Bikes・Bike Of Two Decadesの称号を差し上げよう。墓の中に1台もっていくとしたらこのカタナである。
 少し大仰に言って車検と強制保険と諸諸の消耗品交換で10万円かかるとすれば──車輪がふたつだからクルマの半分で済むというものではない──その10万円とコテツの下取り価格とで新車の250が何とかなりそうである。しかも永遠に車検代を節約できる。そしてこの手が遣えるのは今回だけだ。次は下取価格が付いてこられないに違いない。
 おれは車検代を嫌っているのであって,安全をケチろうと言うのではない。6箇月毎の点検を受け,その上に車検までというのがどうも納得いかないのだ。250と400で同じ車格のカタナを比べれば400たらざるを得ないが,もともと外乱だらけの環境を走るためのバイクはあるのである。
 DR250から1年おくれでジェベルもフル モデル チェインジ。ジェベルはコテツの前におれが乗っていた250cc単気筒のオフロウド車である。極めつきの駿馬であるが,たったひとつだけ欠点があった。ツーリングモデルを標榜しながらフューエル容量が9lしかなかったのである。それが17lとなって一気に解消。無人島に1台もっていくとしたらこのジェベルである。
 大容量タンクを載せたジェベルはヤマハTTそっくりである。いかんのは前後ウィールが紫色であることだ。紫てあーた。前のジェベルはシンプルな配色で恰好よかったな。「一番まともな人」という印象があった。
 デッドラインは今年10月。さーて,どうしようかな。7月に出るらしいホンダの新バハを見てから決めるか。

不一

1996年4月26日


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甘木
 月記にしばしば登場するこの甘木くんは特定個人を指すときの仮名です。ただその特定個人が毎回ちがう。結果的に複数人格・性別・年齢を併せ持つ不特定個人に育ちます。この手法はどうも夏目漱石の発明らしいんですが,筆者は内田百鬼園の著作で知りました。なぜ「甘」と「木」を充てるのかは縦書きにしてくっつければすぐ解る(だから横書きだとあんまり意味が無い)。

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written by nii. n