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撮影時に役立つ注意メモ

撮影時に注意を怠っているのが、出来の悪い原因

 何度も撮影に行っていると、写真の出来が良いときと悪いときがあります。出来の良し悪しは、気に入った写真が何枚も撮れたり、ほとんど撮れなかったりという形で現れます。

 最初のうちは、「悪い出来のは、単にそのときの調子が悪いだけ」と思っていました。調子が悪いから、良い作品が撮れないのだと。しかし、あるとき気付きました。「写真の出来が悪いのは、撮影時に注意を怠っているからだ」ではないかと。つまり、深く考えずにシャッターを押しているからではないかと。

 過去の撮影を思い出してみると、確かにそのとおりでした。あまり考えずにシャッターを押しているので、中途半端な仕上りの写真が多いのです。後から見て、主役をもっと切り取った方がよい写真や、別なアングルから撮った方がよいが、たくさん見付かりました。

撮影時の注意メモを用意する

 理由が分かれば、対処が可能となります。撮影時に注意を怠らないようにする方法を考えればよいのです。思い浮かんだのは、撮影時の注意点をメモの形で用意し、撮影の最中にときどき見る方法でした。

 メモの内容は、本サイトで紹介している撮影時の注意点です。メモの形に適するのは箇条書きなので、以下のような内容を作りました。

・被写体の発見
  ・ときどき上を見たり、360度を見渡す
  ・下から覗いたり、上から見下ろしたりしてみる
  ・被写体の一部を、頭の中で切り取ってみる
・被写体の切り取り方
  ★写真がシンプルになるように、要素をできるだけ削る
  ・主役のどの部分を強調するか考えて、切り取る側を決める
  ・削っても想像できる箇所は、積極的に削る
・表現の完成度を高める
  ★被写体から思い浮かぶ情景を想像してみる
  ★主役のどこに絞るべきか、感じた点を深く考える
  ・主役の撮影アングルを幅広い範囲から見直す
  ・使える脇役を入れ、邪魔な要素を排除する
  ・背景をぐるりと見渡す感じで、背景の細部を検査
    ・DiMAGE 7iのEVFは低解像度なので注意深く見る
  ★全体として、雰囲気の再現または生成を大切に
・表現に適した画質に仕上げる
  ・中心となる側を選ぶ:ハイライト、シャドー、中間
  ・中心となる側の明るさに注意して、適正露出を決める
  ・必要ならコントラスト補正を加える

 この中で、★印を付けた事柄が、とくに大事な点です。注意力が低下している際に忘れそうなものを、優先して選んでいます。事柄の数が多いので、絞り込む目的で付けました。頑張っても全部を注意しきれないとき、★印の事柄だけを考えて撮影するためです。

 この内容をプリンターで小さく印刷し、撮影時に持っていきます。実際には、撮影用のバッグに何枚か入れておくだけです。こうすれば、持っていくのを忘れることがありませんから。

 このメモは、撮影を開始するときだけでなく、定期的に見ることが大切です。少なくとも1時間おき、できれば30分おきに。時間を正確に測る必要はありません。撮影の合間に、ときどき目を通す感じで利用します。

自分に合った注意点を入れる

 私が用意したメモの内容には、シャッター速度や絞りに関する注意点は含まれていません。写真歴が長いため、こうした事柄は自然に考えるような癖が身に付いているからです。

 当然ですが、どのような注意点が必要かは、人によって異なります。自分に合った事柄を数個から十数個選び、メモとして用意すればよいでしょう。ショットごとに絞りを考える癖が付いてない人は、「絞りを必ず確認してから撮影する」をメモに含めるとか。そして癖が付いたら、事柄を別な内容に入れ替えます。

 メモの内容で意外に重要なのは、事柄の個数です。慣れてないうちは、注意点が多すぎると、すべて守れなくなります。最初のうちは、本当に守るべき点だけに絞り、それだけを考えながら撮影しましょう。慣れてくるにしたがって、事柄の数を増やせばよいのです。あくまで、自分に合ったペースで。

初心者には毎回役立つ

 メモを利用したときの効果ですが、写真歴が長い人なら、注意力が低下している際に役立ちます。あまり考えずに撮影するのを防ぎ、写真の出来の悪さを減らせます。

 ところが、初心者だと話は別です。初心者の場合は、撮影時の調子に関係なく、注意すべき点が数多くあります。しかも、毎回です。それを忘れないようにするのに、こうしたメモが役立つはずです。

 写真の腕を上げたいと思っている人なら、撮影してないときに本を読むなどして、注意すべき点を勉強してくるでしょう。しかし、実際に撮影が始まると、勉強したことを一気に忘れがちです。その結果、いつもと変わりない写真を撮ってしまうのです。

 こうした撮影時に忘れを防ぐのに、注意書きのメモを役立てます。勉強して分かった注意点をメモに書き、撮影に持っていきます。それを撮影途中に読むことで、事前に考えてた注意点を撮影に生かせ、作品の出来がよくなります。当然、写真の上達が早まるでしょう。

(作成:2003年7月14日)
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