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被写体の発見力を増す

被写体の発見は2パターンある

 写真撮影のトリガーとなるのは、被写体の発見です。撮りたいと思う被写体が見付かったとき、撮影しようと思うからです。被写体の発見には、大きく分けて以下の2つのパターンがあります(この分類および呼び名は私が勝手に付けたもので、一般的ではありません)。

・直球パターン:そのままで被写体になる
・変化球パターン:何か工夫すれば被写体になる

 直球パターンは、被写体そのものに何らかの魅力を感じたパターンです。どんな魅力を感じたかによって、撮り方を変えます。写真撮影の経験がなくても使えるため、誰もが持っているパターンです。

 変化球パターンは、レンズ、露出、撮る方向、演出などを利用することで、面白い写真に仕上がるパターンです。もちろん、被写体を普通に写したのでは、面白くない写真に仕上がるのを、工夫によって面白くします。これは、例を挙げた方が分かりやすいでしょう。

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 この被写体は、普通に撮影すれば、水流によって植物が揺れている在り来たりの水面です。しかし、露出をハイキーにすることで、幻想的な雰囲気の写真に仕上がりました。水流によって植物が揺れているのを見て、変化球パターンで写真表現に使えると感じ、意識して撮影したわけです。このように、写真撮影の経験がないと使えないパターンといえます。

直球パターンは、多くの写真を見て広げる

 直球パターンは、誰もが使えると述べました。しかし、使える範囲というか、感じる範囲は人によって異なります。写真撮影の経験が増えることで、感じる範囲を広げることが可能です。

 ある程度以上の撮影経験を持っている人なら、次のような経験をしたことがあるでしょう。誰かが撮影した写真を見て、「こういう被写体も、こんな風に撮れば、面白い写真になるんだなぁ」と感じる経験です。その経験を生かすことで、今までカメラを向けなかった被写体を撮影するように変わります。

 これこそ、直球パターンの視野を広げる方法なのです。どんな被写体をどのように撮っているのか考えながら、いろいろな写真を数多く見る方法です。ボーっと見ているのでは効果がありません。自分の写真撮影の参考にしようと、強く意識しながら見ることが大切です。

 今は良い時代になりました。インターネットの普及により、いろいろな人が写真を公開しています。その中には、一部だけですが、素晴らしい写真があります。そうしたサイトを見付け、掲載された写真を考えながら見てください。

変化球パターンは、使える技を増やして広げる

 変化球パターンは、写真撮影の経験がないと使えないパターンです。どれだけ使えるかは、写真表現で使える技の多さに比例します。多くの技を持っているほど、使える被写体を見付ける可能性が高まるのです。

 この技の中には、写真の基礎常識に反するものが結構あります。写真を習い始めた頃、適正露出や正確なピントを学ぶでしょう。しかし、ハイキーやローキーは普通の適正露出から外す表現です。同様にピントも、主要被写体のピントを意識的に外して表現に用いたりします。広角レンズのゆがみ感も通常は出ないように配慮しますが、ゆがみ感を積極的に利用すれば、変な感じや不安を表現できます。このように、写真の基礎常識に捕われないことが大切です。

 自分の技を増やすには、実際に撮影してみるのが一番です。自分が知らない技を使った写真に出会ったときは、その後で必ず試してみてください。できるだけ時間をおかずに。自分で試すと、強く記憶に残ります。そうすれば、被写体を探しているときに思い浮かぶでしょう。

 もう1つ、被写体を探す際の意識も大事です。直球パターンなら、何も考えずに被写体を探していればいいのですが、変化球パターンではダメです。被写体になりそうもない対象でも、どうやったら面白い写真になるのか考えながら見ます。自分の持っている技を順番に当てはめて、どの技なら面白くなるかを見付けるのです。こうした意識で繰り返すと、自然にできるようになります。

 変化球パターンで使う技ですが、変化球パターンの被写体だけに用いるわけではありません。直球パターンの被写体を表現する際にも役立ちます。直球パターンの被写体を見て感じたことを、より明確に伝えられるように、こうした技を使うのです。その意味で、使える技を増やすことは、あらゆる写真での表現の幅を広げます。

(作成:2003年5月9日)
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