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レンズの味を紹介

古いレンズには魅力的な味がある

 中古レンズにハマって、いろいろなレンズを買いました。レンズの数がかなり増えて、楽しい写真生活を送れています。

 古いレンズは、デジタル専用設計のシャープなレンズと違って、いろいろな欠点を持っています。シャープでないとか、解像感が低いとか、フレアーが出るとか、写りが全体的に柔らかいとか、ぼけが変だとか。とくに開放での写りに差があり、いろいろな意味で面白いです。

 こうした欠点は、記録用の写真を撮る目的で使うなら、単なる欠点でしかありません。でも、写真で何かを表現しようとする目的では、魅力的な味に変わってしまいます。それも、非常に魅力的な味に。

 写真表現にこだわっている人なら、レンズの大事さを痛感していると思います。少しでも面白いレンズを手に入れて、表現の幅を広げたいと思うでしょう。そうした人の手助けとなるよう、私の持っているレンズの中から、レンズの味を紹介したいと思います。気に入ってるレンズを中心にしながら、気に入らないレンズも含めて。

フォーサーズ機で使った際の味に限定

 レンズの味を調べるためには、いろいろな条件下で実際に撮影してみなければなりません。当然、使用するカメラのフォーマットなど、レンズの使用状況に大きく関係してきます。私の場合は、フォーサーズという規格のカメラ(現状はE-1)を使っていますから、この条件下での評価となります。

 持っているレンズのほとんどは、35mm版(ライカ版)用です。それに比べてフォーサーズは、面積で1/4しかありません。つまり、イメージサークルの中心部の1/4だけ使っているわけです。周辺部を使わないことで、周辺ほど悪くなるレンズにとっては、欠点が目立ちにくいでしょう。同様に、周辺減光や口径食も、中心部分だけ使うために改善されます。ただし、周辺減光に関してだけは、CCDへ光が斜めに入ってくる場合もあり(広角レンズほど多い)、逆に大きくなるレンズもあります。

 逆に、1/4の面積で同じ大きさに伸ばすことになります。長さ方向では2倍に引き伸ばすことに等しいですから、解像度が半分に減ります。解像度の低いレンズにとっては、その低さが2倍に強調されて目立つ結果となります。

 実際、フィルム時代のレンズには、高解像度で設計および製造されたものが少ないようです。レンズの持つ解像度が、デジタルに追いついてない状況が多発しています。フォーサーズ機で使うと、他の一眼レフに比べ、それが強調されます。

 まあ、高解像度を求めるなら、デジタル専用設計のレンズを使えば良いので、古いレンズには別な特徴を求めた方が、使っていて楽しいでしょう。両方を揃えることで表現の幅が広がりますから、とても望ましい状況だと思います。

レンズの味は、他の機種でも似た結果に

 同じレンズを使ったとき、フォーサーズ機での写りと、銀塩の35mmフル版での写り、さらにAPS-Cサイズのデジタル一眼レフでの写りには、違いがあるのでしょうか。私の結論としては、多少の違いは生じますけど、レンズの特徴はそのまま出やすいと思っています。つまり、デジタル一眼レフでも、レンズの味がほぼそのまま生かせるのです。

 写りの柔らかさ、良し悪し両面での解像感、前景や背景のぼけ味、点光源のぼけ方、通常条件でのフレアーの出方、グラデーションの出方、などなど。同じレンズを使う限り、その味を含んだ写真に仕上がります。多少の差はあっても。

 もちろん、生かしにくい味もあります。周辺減光の大きさは、CCDのサイズが小さいほど軽減されるので、デジタル一眼レフが不利になります。口径食がひどい場合も、同様に軽減されます。

 味には含まれないかも知れない、逆光での弱さは、デジタル一眼レフで強調されます。CCDがフィルムよりも反射するので、フレアーが強烈に出たりします。一眼レフのファインダーではフレアーが少ないのに、実際に写った写真でフレアーが多量に出ることを経験していることでしょう(ちなみに、デジタル専用設計のレンズでは、後ろからの光の反射に対しても、何らかの対策を施しているそうです)。古いレンズを使う場合には、フードを利用し、さらに手で光をさえぎることで、たいていの場合はフレアーを大きく減らせます。

 こうした特徴を持ちますから、フォーサーズ機で得られたレンズの味は、他の機種を使っている人にも役立つと思います。とくにデジタル一眼レフで。一般的な撮影条件では、かなり似た写りになるでしょう。

写真表現との関係も含めて解説

 1本のレンズが持つ味を、すべて一気に調べられるわけではありません。自分が使っている条件の中で、少しずつ分かってくるだけです。その意味で、レンズごとの味を全部挙げようとは思っていません。自分の使っている範囲内で分かったことだけ、少しずつ増やしていこうと考えています。

 レンズの味を語る場合、どうしても写りだけに集中しがちです。それだと、私には面白くありません。大事なのは、レンズの味を上手に生かして、写真表現につなげることです。その辺も含めて、書きたいと思います。

 当然のことですけど、レンズの違いが一番現れるのは、開放付近です。絞るにしたがって、レンズの味は消えていきます。そのため、開放での写りの話が多くなるはずです。

(作成:2005年6月24日)
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