海上女王 うなかみのおおきみ 生没年未詳

万葉集・皇胤紹運録によれば志貴皇子の娘。光仁天皇の姉妹。
養老七年(723)、従四位下。神亀元年(724)二月、従三位。この前後、聖武天皇より恋の歌を贈られており、神亀元年の叙位は聖武天皇の夫人となったことに伴うものかとも思われる(夫人の定員は三名。他の二名は安宿媛県犬養広刀自)。続紀には神亀元年の叙位を最後として記事がなく、以後の消息は不明。

天皇の海上女王(うなかみのおほきみ)に賜ふ御歌

赤駒の越ゆる馬柵(うませ)(しめ)結ひし妹が心は疑ひも無し(万4-530)

【通釈】うっかりすると赤毛の馬が飛び越える柵――その柵を縄でしっかり結び固めておくように、私は固い約束を結んだのだから、あなたの心に少しも疑いはない。

海上王の聖武天皇(こた)へ奉る歌

梓弓(つま)ひく夜音(よと)遠音(とほと)にも君が御幸(みゆき)を聞かくしよしも(万4-531)

【通釈】梓弓を爪弾く夜半の弦音が遠くから響いてくるように、大君のお出ましのお噂を遠くからでもお聞きするのは喜ばしいことです。

【補記】「梓弓爪ひく夜音」とは、夜間、宮中警固の衛士(えじ)が邪気を払うために弓の弦を爪で弾いた音。「御幸」は天皇が海上女王のもとにお出ましになること。


最終更新日:平成15年11月09日