和歌入門附録 和歌のための文語文法

活用表 動詞についての留意点 助動詞の種類と機能 助詞の種類と機能 仮名遣

助動詞の種類と機能 6

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助動詞一覧表

過去・完了 推量 打消 自発・可能・受身・尊敬
使役・尊敬 その他(指定・比況・希求)

指定 なり たり 比況 ごとし 希求 まほし たし

指定(断定)

なり

未然形
連用形
終止形 連体形
已然形
命令形 上にくる語の活用形
なり なら なり
(に)
なり なる なれ なれ 連体形・体言
【接続】
【機能】
【来歴】

助詞「に」と動詞「あり」が結合して出来た。古くは漢字で「也」と書かれることが多かった。

【助動詞との結合例】
【補足】

たり

未然形
連用形
終止形 連体形
已然形
命令形 上にくる語の活用形
たり たら たり
(と)
たり たる たれ たれ 体言
【接続】
【機能】
【来歴】

格助詞「と」と動詞「あり」からなる「とあり」の約。漢文訓読文などに見られ、和歌にはほとんど用いられなかった。

比況

ごとし

未然形
連用形
終止形 連体形
已然形
命令形 上にくる語の活用形
ごとし ごとく ごとし ごとき 連体形・助詞「が」「の」
【接続】
【機能】
【来歴】

同一を意味する体言「こと」が濁音化した「ごと」に、形容詞化する接尾辞「し」が付いて出来たものと言う。平安時代には主に漢文訓読文に用いられ、和歌での用例は余り多くない。

【助詞との結合例】

希求(希望)

まほし

未然形
連用形
終止形 連体形
已然形
命令形 上にくる語の活用形
まほし
まほしから
まほしく
まほしかり
まほし まほしき
まほしかる
まほしけれ 未然形
【接続】
【機能】
【来歴】

奈良時代に「見まくほしき」などと言っていた「まくほし」から転じた語。平安時代に現れ、和歌にも盛んに用いられた。鎌倉時代になると次第に「たし」に取って代わられるが、和歌では「まほし」を使い続け、近代に至る。

【特殊な用法】
【補足】

たし

未然形
連用形
終止形 連体形
已然形
命令形 上にくる語の活用形
たし たく
たかり
たし たき たけれ 連用形
【接続】
【機能】
【来歴】

上記のように万葉集にもそれらしき用例はあるが、孤立例である。文献にしばしば現れるのは平安時代後期から。次第に「まほし」に取って代わるが、歌人たちは俗語と見なしていたらしく、和歌に用いることを嫌う傾向があった。現代口語の願望の助動詞「たい」に繋がっている。


助動詞一覧表

過去・完了 推量 打消 自発・可能・受身・尊敬
使役・尊敬 その他(指定・比況・希求)


公開日:平成19年3月19日
最終更新日:平成19年4月11日