藤原好風 ふじわらのよしかぜ 生没年未詳

父は陸奥守滋実、または散位正野とも。寛平十年(898)、左兵衛少尉。延喜十一年(911)、従五位下。延長四年(926)、出羽介。勅撰集入集歌は、古今集に一首のみ。

春宮帯刀陣(たちはきのぢん)にて、桜の花の散るをよめる

春風は花のあたりをよきて吹け心づからやうつろふと見む(古今85)

【通釈】春風は花の咲いているあたりを避けて吹け。桜が自分の心から散るのかどうかを見ようから。

【語釈】◇春宮帯刀陣 皇太子護衛の舎人が控える詰所。◇心づからや 心は桜の心。

【他出】興風集、古今和歌六帖、俊頼髄脳、綺語抄、万葉集時代難事、定家八代抄、僻案抄、桐火桶

【主な派生歌】
風ならで心とを散れ桜花うきふしにだに思ひおくべく(藤原定家)
もる山の時雨の秋を見てしがな心づからや紅葉はつると()
このねぬる朝けの風も心あらば花のあたりをよきて吹かなむ(九条道家[続後撰])
たちまよふ吉野の桜よきて吹け雲に待たるる春の山風(九条教実[新勅撰])
心から散るといふ名の惜しければうつろふ花に風もいとはず(藤原為理[新後撰])
うつろふも心づからの花ならばさそふ嵐をいかがうらみむ(伏見院[続千載])


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日