日本全国郷土玩具バーチャルミュージアム:民芸館:山形県篇(3)


  鶴岡市は元和8年(1622)鶴が丘城に酒井氏が入府してから200年余続いた城下町です。それだけに庄内藩士や藩士の妻や娘、御殿女中たちの手になる手工芸品の多くが残されてきました。
 よく知られているものに、庄内姉様・御殿まり・板獅子・絵ろうそく・押し絵 など、、また歴史は浅くなりますが、いずめこ人形もあげられます。
 これらのほとんどが、鶴岡公園(鶴岡城跡)のそばの「致道(ちどう)博物館」の売店と「鶴岡市物産館」で販売されています。

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荘内姉様■■めごちゃ
 この姉様は、江戸時代に庄内藩の子女の手すさびに、「おひなごと人形」として作られてきたものです。荘内姉様の特色は、古紙で髪形を作り、墨とニカワで塗りかためたつややかな髷(まげ)を結い上げるところにあります。顔は布製、千代紙の着物を着せています。
 新海町の野田敏さんが、祖母から習ったのを思い出して、作り始めたのが今日の「庄内姉様」で、敏さんは87才でなくなられ、その娘の靖子さんやお弟子さんがそれを受け継ぎました。致道博物館で売られているものは、太田正子さんの作で、致道博物館では「庄内あねさま教室」を開いています。また、その教室で学んだ高橋千恵子さんの作が、鶴岡市物産館で売られています。
 「荘内姉様」には「めごちゃ」と呼ぶ小型(全長8cm)の姉様もあり、1枚の紙に7、8体が連なっていて、1体ずつ切り離して遊ぶようになっています。
製作者記録:野田靖子:鶴岡市新海町3-15 TEL: 0235-23-8153
製作者記録:太田正子:鶴岡市家中新町10-18  致道博物館内 TEL: 0235-22-1199
製作者記録:高橋千恵子:鶴岡市新海町18-19 TEL: 0235-22-4222

御殿まり
 御殿まりも、また城中暮らしの女子の手なぐさみとして作られてきたものです。色糸でかがり、麻の葉や菊などの模様を縫いとった豪華な糸まりです。
 この伝統の手法は、市内の上野さんが「御殿まり教室」を開いて教えています。
記録:上野佐喜「上野御殿まり教室」:鶴岡市本町1-5-36  TEL: 0235-22-8140
板獅子
 これも、藩内の下級武士が手内職として始めたものでした。手もとの板を持って上下に振ると、獅子の口がぱくぱくと開いて音がします。
 獅子は黒(雄)と赤(雌)があり、もとは魔除けとして、正月の初市などで売られたものです。
記録:製造販売:丸金(株)・阿部圭太郎:鶴岡市大東町22-13 TEL: 0235-22-0570
荘内の絵ろうそく
 山形県の「絵ろうそく」はその美しさでよく知られています。この、庄内と酒田(次ページ掲載)で製造されています。
 絵柄には唐獅子・浮世絵美人・御所車・四季の花模様など、約50種ほどあります。
記録:製造:冨樫ろうそく店(冨樫雄治):鶴岡市山王町10-52 TEL: 0235-22-1070
いずめこ人形
 この人形は、大正初期に大滝武寛という人が売り出したのが最初と云われています。「いずめ」とは「飯詰」の字があてられていて、東北地方での冬期の飯の保温具で、飯櫃(めしびつ)ごと入れられる藁製の入れ物です。それを利用して乳児をこの中に入れ。揺りかご代わりにしたその姿を「いずめこ」と呼んだのです。
製作者記録:村木せつ「民芸の村木」:鶴岡市本町3-4-32 TEL: 0235-22-1328
建前雛
 以前はこの人形には、棟上げ式の用具の紅白の晒木綿や扇子など一式がついていたものですが、今はこの「建前雛」だけを売ってくれるようになりました。
製造販売記録:松田徳治「マツタストア」:鶴岡市本町1-2-3  TEL: 0235-22-1510
鶴岡土人形(瓦人形)■(廃絶)
 江戸末期に尾形喜助もしくは藤七の代に始められたとされている。原形には、当時、北前船で上方から運ばれてきた伏見人形を型抜きして使われましたが、彩色や技法に独自の持ち味も持つ人形が作られました。
 100種類以上の型があったそうですが、昭和33年、最後の作者、尾形喜一郎の死により廃絶しました。
 鶴岡の「押し絵雛」が、御殿まりと同様に、城内の子女や家中の娘たちの手芸品として作られていたものです。戦後も一時、物産館でも見られたことがあるそうですが、現在は市販されてないようです。
 しかし今も、市内で趣味としてかなりの人が作っているといわれます。
◆(註)記事中の制作者の記録は、1995年頃の調査資料ですので、ご了承下さい。

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(1996.08.01掲載/2001.05.23/2002.07.03/改訂)