日本列島・全国郷土玩具の旅

----長崎県篇・第4回----

---- NAGASAKI(4)----






平戸の鬼洋蝶や、前回の長崎の凧(ハタ)、そして、平戸から五島、壱岐にかけては唐人凧、バラモン凧など、風変わりな凧が作られていますが、これらの凧は「海外から渡来した」「外来の凧」とされています。壱岐の凧は収録できませんでしたが、平戸と五島の凧を掲載しました。

平戸の鬼洋蝶
 上部には目玉の大きな怪物が牙をむきだして、下の武士の兜に食いついています。武士が刀を振りかざして、怪物に立ち向かっている姿が多色で描かれています。
 「ようちょう」とは鬼を退治する膺懲(ようちょう)のことかともいわれますが、その語源は不明です。この絵は、渡辺綱(わたなべのつな)が羅生門の鬼と戦っている場面といわれていますが、それは、平戸周辺を治めていた松浦藩の始祖が渡辺綱であったことからと思われます。
 凧絵は「表洋蝶」と「裏洋蝶」があり、表洋蝶の図柄は怪物の下に兜の錣(しころ)だけが描かれています。表凧は武士の子供用、裏凧は町人の子供用だったといわれています。なお、この凧がいつ頃から作り始められたかは、いまのところ不明です。
 現在の作者の三輪さんは3代目です。この凧は平戸市内の土産店でも売られています。
 製作者:三輪義人:北松浦郡江迎町末橋408-10..TEL: 0956-65-2735
五島のバラモン凧
 五島列島の南端、福江島の福江市の坂井さんがこの凧を作っています。
 五島のバラモン凧は、上の鬼洋蝶の骨組をさらに複雑にした形です。絵がらも同系統の凧なので、上部に鬼というか大きな目玉の怪物が、牙をむきだして兜をくわえ、兜のしころの下には、雲龍や渦巻き雲が描かれています。
 形の変わった「日の出鶴」は、これは祝儀用の凧です。
 五島は「かくれキリシタン」の信仰の島としても知られていますが、そんな関係からか、このバラモン凧の形や図案のどこかに、クルス(十字架)がかくされているともいわれています。
 バラモンという言葉はインド。紋様や彩色はポリネシアやミクロネシアなど南方的で、その上、絵柄は武者絵が描かれているという、珍しいデザインです。
 なお、岐宿町あたりでは趣味的に凧作りをしている人もいるようです。
 製作者:坂井義春:福江市吉九久木町1368..TEL: 0959-72-6260

(参考)壱岐島の鬼凧
 製作者:土肥茂一:壱岐郡勝本町勝本浦291..TEL: 09204-2-0068
 九州物産商事:壱岐郡郷ノ浦町東触597..TEL: 09204-7-4580
鯨の潮吹き(廃絶)■
 「長崎くんち」として知られる諏訪神社の祭礼で、7年に一度、神社に奉納される山車の玩具化で張り子でできていました。昭和32年の年賀切手の図案にもなり、古くから親しまれいましたが、いまは廃絶の玩具です。
天狗面(廃絶)■
 おなじ諏訪神社には「長崎の天狗面」がありました。天狗というよりは鬼に似た面で、8センチ位の小型の張り子です。戦後まもなく廃絶しました。


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(1999.8.15掲載)