民芸館‥広島県篇(1)
日本列島・全国郷土玩具の旅

----広島県篇(1)----

----HIROSHIMA----


広島県の郷土玩具ガイド(掲載されていないもの、廃絶品を含みます)
 三次市:三次(みよし)土人形。宮の峡(海)土人形(廃絶)。

 沼隅郡常石:常石張り子。

 尾道市:田面船。三体みこし。べっちゃー面。べっちゃー土鈴。

 三原市:神明だるま。広虫だるま。たこだるま。三原人形(廃絶)。

 廿市:廿市張り子。

 宮島:宮島の諸玩具。鹿猿。宮島土鈴。宮島鳥居。宮島張り子。

 大竹市:紙鯉。流し雛。

■施設■

 日本郷土玩博物館   福山市松永町364-1  TEL:0849-34-6644

 尾道市立美術館 :保田コレクションの郷土玩具の一部を常設展示している。 
          尾道市西土堂町17-19  TEL:0848-23-2281
 
 久井町歴史民俗資料館  御調(みつぎ)郡久井町江本43-1
                    TEL:084732-6883

 だるま資料展示公開  全日本だるま研究会会長のコレクション(3000点余)。
            東広島市西条昭和町12-40 西条中央病院内
            同病院長の私設展示室。事前連絡が必要です。 
                                             TEL:0824-23-3050

 宮島町伝統産業会館 佐伯郡宮島町1165-9  TEL:0829-44-2017




三次宮の峡(海)土人形(廃絶)■
  現在、作られている「三次(みよし)土人形」のもとなったのがこの人形です。宮の海とも呼ぶのは、人形の背の刻印からです。
 宮の峡(かい)土人形の創始者は、大崎忠右衛門で、島根県生まれ、嘉永7年(1854)この広島の宮の峡に移り住み、土人形を作りはじめたのが最初でした。
 忠右衛門の孫にあたるノブと結婚した丸木儀十郎も土人形の制作に励みましたが、一子、儀一を大崎家に残して離婚。その後、儀十郎は良質の土をもとめ十日市(とおかいち)に移り、そこで土人形を作りました。これが、次にのせてある「三次(十日市)土人形」の始めです。
 宮の峡に残ったノブと儀一は、大正5年頃まで土人形を作り、十日市の人形と区別するため「三次宮の海人形本元」の印を背面に入れました。
 したがって、明治中期から大正初期にかけては、宮の峡と十日市の両方で土人形は作られていたことになります。

三次(みよし)土人形
 この人形は、この県を代表するかのような伝統的な郷土玩具といえます。
 さて、上記の丸木儀十郎の人形は評判がよく、また、2代目は京都で日本画を学び、いっそう磨きのかかった美しい作品となりました。こうして、藤一、十九瓶(とくべい)、その妻・昌子、そして現在の、たかしさんに作り継がれました。
 三次土人形は伝統があるだけに種類も多く、現在50種余りが作られています。ここには掲載できませんでしたが、有名なのは、いろいろの「天神」で、台に乗ったものや、松負(まつおい)、梅持、牛のり天神など、10種類があります。また、いろいろの「立ち娘」もすぐれた作品です。

制作者:丸木たかし:三次市十日市町山95-11..TEL:08246-3-7502 

◆三次人形の特徴。彩色。
 この人形は、天神や立ち娘など、その顔の美しさが非常に優れています。
 一般には、土人形の彩色は着物などのまわりの物から始めますが、この人形の場合はまず顔から始めます。
 最初に胡粉(ごふん)とニカワを混ぜたものを塗っては乾かし、それを何度か繰り返した後、絹の布で磨きをかけて、艶を出してから、顔が描かれます。艶のある顔から「光り人形」とも呼ばれました。

常石張り子
 沼隈(ぬまくま)半島の先端、沼隈町の西の小さな集落、常石では古くから「張り子」が作られています。交通の不便な所ですが、郷土玩具愛好家にはよく知られた地名です。
 常石張り子は、とぼけた表情と、それに似合った人形の丸味のある形に、独特のムードや味わいがあります。
 常石の人形は、初代の宮本久平が明治20年頃から「土人形」で始めたのですが、不便な土地柄で運送の度に破損がでるので「張り子」に変えたのだそうです。
 県内の三次や三原の土人形を原形に、一つの型で人形がはれるように突起部分を少なく工夫されたため、全体の形になんとなく丸味を持たせて作られています。
 形の変化をおぎなうため、彩色にいろいろと工夫がされて、その表情の面白さが生まれてきたように思われます。
 この土地で「張り子人形」が作られるようになった要因には、八朔(はっさく)の行事があったと考えられます。八朔(旧暦8月1日)には、男子には張り子の馬を、女子には紙人形を、節供に飾る風習があり、これが自家製から専門家の手にゆだねられるようになったのではないかと思われます。

制作者:宮本喜孝:沼隈郡沼隈町常石421-2..TEL:0849-87-2181



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(1999.2.1掲載)