オーボエ奏者、ホリガー

 ハインツ・ホリガーは今世紀の生んだ最高のオーボエ奏者です。その実力は大変なもので、更に彼は作曲家としても、素晴らしい才能を遺憾なく発揮していて、多くの作品を発表しています。ハンガリーから亡命してきたヴェレシュという作曲家にベルン大学で習い、ピエール・ブーレーズにもバーゼルで習っています。
 オーボエはベルンでも習っていますが、パリでピエール・ピエルロについての研鑽が大きいでしょう。
 彼のオーボエ奏者としての存在がいかに偉大かと言えば、武満徹をはじめ、現代を代表する作曲家がこぞって彼のために作品を作り、ホリガーが初演していることでもわかります。
 その意味で、現存する演奏家の中ではチェロのロストロポーヴィッチと並ぶ存在だと言っても良いでしょう。

 難解な現代音楽は苦手という方は、代表的なアルビノーニのオーボエ協奏曲集などはいかがでしょうか。イタリアのイ・ムジチ合奏団との共演でいれたもので数々のレコード賞を受賞しています。
 甘美なマルチェルロのオーボエ協奏曲も録音していて、これまた数多くのレコード賞をもらっています。
 テレマンの「忠実な音楽の師」やニコレ等と録音したクープランのコンセール集もスイスの音楽達が、実に楽しげに語り合っているかのようで素晴らしいものです。

 こういった現役のCDに名盤が目白押しというのも、彼がいかに素晴らしい音楽家かということの証でもあります。

 彼は、ベルン州のランゲンタールで生まれています。少し行きにくいというか、幹線から少し離れているのでしょうか、オルテンで乗り換えて行った記憶があるのですが、随分前のことで、写真も見つからず、ちゃんと整理しておけば良かったと今頃になって悔やんでおります。

 しかし、ここはドイツ語圏のはずですが、ものの本によるとフランス語圏にて育ちとありますので、別のところで育ったのでしょうか。詳しい文献がなく、残念です。

 ベルンの大学でオーボエと作曲を勉強していますが、この時に習ったのがハンガリーから亡命してきた作曲家にして民族音楽学者、そして希代の名教師のヴェレシュという人だったのです。
 音楽との誠実な関わりをモットーとする彼からの影響は大きかったようで、(別に作品が似てるなんてことはありませんが)オーボエ奏者となってからも、作曲を真摯にとらえ、問題作を発表し続けていることは注目しても良いでしょう。

 ともかく、彼はベルンでの修業の後、パリ音楽院でピエール・ピエルロについてオーボエの技術に更に磨きをかけ、一九五九年のジュネーヴ国際音楽コンクール、そして一九六一年、難関で有名なミュンヘン国際音楽コンクールで優勝し、演奏家としての前途洋々たる船出をしたのです。
 一九六四まではバーゼル交響楽団の主席奏者を勤めていますが、その後はソリストとして文字通り大活躍しています。

 一九三九年生まれですから、まだまだの年です。これからもいい音楽をたくさん聞かせてくれることでしょう。