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シチリア王国の歴史 <History目次へ>

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ロベルト・ギスカルド
Roberto il Guiscardo


アプーリア、カラブリア及びシチリア公(1057-1085)

狡猾な野郎にして、東西の皇帝を翻弄した英雄。



"il guscardo"=「狡猾な奴」というあだ名が付いたこの男には、こんなエピソードが残っている。
ノルマン人の一団が棺を担いで葬送の列をくみ、丘の上の修道院に登っていった。見たところ、武器はもっていない。棺からは死臭が漂っている。葬式をあげてほしいという彼らの願いを聞き入れ、修道院は彼らを中に入れた。
祭壇の上に棺が置かれ、葬式が始まった。すると、棺の中の死体が突然に起きあがる。棺の中には、死体のふりをしていた騎士と、剣が隠されていたのだった。参列していた連中は、次々と剣をとって修道士たちに襲いかかる。かくして、ロベルトはその修道院を手に入れた。

ロベルトは、鉄腕グリエルモの異母兄弟にあたる。
ドロゴーネ、ウンフレードに次いでノルマン人リーダーの後継者となり、やがて南イタリア全体を征服し、その君主となった。
闘えば負けなしの希有の英雄だった。南イタリアを固めると、弟のルッジェーロを助けてシチリア征服に乗り出し、また、自身は東へと向かう。狙うはビザンツ帝国。
迎え撃ったのは、帝国を立て直した有能な皇帝として知られるアレキシオス1世。それに、強力な助っ人ヴェネチア艦隊。それでも”ギスカルド”の方が上だった。1082年、バルカン半島のデュラキオンを獲得。ギリシャへと軍を進める。

ロベルトの快進撃を止めたのは、イタリアの内情の変化だった。
東の皇帝アレキシオスが金をばらまいて、ロベルトの本拠地での反乱をあおった。また、神聖ローマ皇帝ハインリッヒ4世が南下してきた。そのため、皇帝と対立していた教皇グレゴリウス7世から、ロベルトに対する救援要請があったのである。あの”カノッサの屈辱”で勝利したグレゴリウスだったが、ハインリッヒから何度も反撃を食らっていたのだった。
イタリアに戻ったロベルトは、南イタリアの反乱軍を蹴散らし、ローマへと向かう。
ハインリッヒによるローマ遠征は何度かあったが、そのうち、ロベルトが迎え撃ったのは2度。
ただ、ハインリッヒの方は、2度ともロベルトの進軍を聞いて北へと逃げてしまった。だから、両者の決戦はなかったのだが、これもまた、ロベルトの不敗神話を彩るエピソードとなった。皇帝は、震え上がって逃げ出したのだと。

東西の皇帝をうち負かしたロベルト・ギスカルド。しかも、ローマ教会史に華々しい業績を残したあのグレゴリウス7世から何度も破門されながら、決してへこたれず、後にはそのグレゴリウスをローマから救出し、自身の保護下に置いた。要するに、ヨーロッパの頂点に立つ連中をことごとくやっつけたわけだ。
そして、”世界の恐怖”とも言われたロベルト・ギスカルド。
よほど凄い奴だったんでしょうな。


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