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Matera

マテーラ  <1997年> 戻る

案内人たち

ある教会に入ると、椅子に座った若者に向かって、立ったままのおじさんが話しかけていた。話が終わると、おじさんは若者の方をポンと叩いて外に向かって歩き出す。南イタリアらしい光景だなんて思いながら、ほのぼのとした気持ちになっていると、おじさん、どういうわけか私にも話しかけてきた。
”旧市街はもう見たか?おもしろいぞ。案内するよ。”
南イタリアらしい怪しいおじさんだった。
”もう、見た。興味ない。”と返事すると、その後の作戦は直球勝負だった。

”金をくれ”

教会を出ると、道の向こうから若者が私に手を振りながら近づいてきた。革ジャンにサングラスの痩せた男だ。まあ、そういうファッションの連中は多いけれど、その鎖ジャラジャラさせているのと、逆三角形のサングラスは止めておけと言いたくなるような奴。彼は、私の目の前まで来ると、にっこり笑った。前歯が2,3本しかなかった。そして、さっきのおじさんとは違って丁寧な話し方をする。アンバランスな男である。
”旧市街は見ましたか。サッシという大変おもしろい家があります。見せてあげましょうか。”
サッシ サッシというのは、マテーラ観光の目玉、洞穴住居のこと。”昨日見た。結構。”と言って断る。が、私の顔は完全に笑っていた。彼の格好と顔があまりに変だったため、吹き出しそうだった。彼の方は、私の表情を見て、早々にあきらめて去って行った。

私は、その直後、サッシ地区に入って散歩をしていた。すると、このヘビメタ男がちゃんと客を連れてやってきた。三人の親子連れが、ヘビメタ案内人の話を神妙に聞いている。
世間は広い。ひろう神ありである。

管理人

ヘビメタ案内人もいなくなって、1人でサッシの中を歩いていると、セメントで全身真っ白になっているおじさんに出会った。遠くの方から、私に声をかけてきた。
”教会見る?”
サッシ地区の十字架 周囲に教会らしいものはない。遠くに十字架が見えたため、そのことかと思った。”ええ、あの教会に行きます。”と返事すると、首を振ってこっちへ来いと言う。
行ってみると、サッシの中を見せられた。なるほど、中が教会になっている。ガイドブックに、サッシの教会があって管理人のおじさんに頼むと入れてくれると書いてあったのを思い出した。それがその教会だった。しかし、こっちが頼むという問題じゃなくて、向こうで呼び込みをやっている。で、並べてある観光案内の本をおすすめになる。本はいらないと言うと、最後に5000リラのご請求。まあ、おじさんの説明によると、寄付金のようなものらしい。私がなかなか財布を出さないため、おじさんは”みんな払ってもらっている”点を強調。これはちゃんと払うことにした。
私が5000リラを払うと、おじさんはさっさと行ってしまって、外で何やら修復工事をしている。内部にはビザンツ風の壁画がある。ということは、この教会の起源は11世紀以前のものかも知れない。こんな素人のおじさんに修復させちゃって大丈夫なのか。ちょっと不安になる。
サッシへの入り口

普通の人たち

マテーラは、サッシという古い南イタリアの遺構を残しているものの、その周辺に広がる新市街は都会的な雰囲気がある。私の泊まったホテルも近代的で快適だった。そして、宿泊客の多くがぴかぴかのスーツに身を固めたビジネスマンたち。ひなびた田舎町を想像していたけれど、意外に活気のある都会でもあった。

サッシの中のレストランは、大勢の女子学生たちで賑わっていた。南イタリアでも携帯電話が大流行らしい。レストランから携帯電話で友人に連絡する学生もいる。長電話しても電池の心配はない。レストランのコンセントに電源を差し込んでいるからだ。
女子学生集団のテーブルが足らなくなって、ウェイターが私の席のテーブルを一つはずして持って行った。お勘定のときに、”さっきテーブルのことで邪魔したから”と少しおまけをしてくれた。イタリアでは釣り銭をごまかされる話をよく聞くけれど、こういう律儀な店も多い。


<旅行メモ>

バーリからAppulo-Lucane鉄道で。
途中で列車の切り離しがある。とくに、Altamuraでは自分の乗っている列車の行き先に注意が必要。間違えてGravinaに行ってしまう人も多いようだ。