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ハンチングをかぶったおじいさんと、黒い革ジャンのおじさんが、私の方を見ながらヒソヒソ話をしている。これは気を付けなければ。
私がその場を立ち去ろうとしたとき、おじいさんが話しかけていた。「そのカメラ、見せてくれませんか。」やはり、ねらいは首から下げていた金目のものだったか。思わず、一歩後ろに下がる。そして、おじいさん曰く「決して触ったりしません。」
というわけで、とりあえず話を聞くことに。
私のカメラはContaxG1といって、レンジファインダー式のちょっとレトロなデザインのもの。”Contax”は元々ドイツの古いブランドだけれど、今は本家ドイツでは製造されておらず、日本の京セラが復活させたようなブランドになっている。94年に古い時代のContaxを思わせるG1が登場。ヨーロッパでも評判になった。
で、このおじいさん、本家Contaxで働いていたこともあって、60年間Contaxを使い続けているという話。最新技術で復活したレンジファインダー型Contaxに興味津々だったらしい。
愛機を危険にさらす
まあ、それだけじゃ信用できませんわね。
でも、おじいさんの質問や表情で、だんだんホントの話だと思えるようになった。レンズの"Carl Zeiss"(これもドイツブランド)の銘を見つけると、うれしそうに「レンズはドイツ製?」と聞いてきた。でも私が"Made in Japan"の刻印を示すと、がっかりしたように苦笑しておられた。
値段はいくらですか?日本ではもっとやすいんでしょう?次から次へと質問責め。そして、この質問を聞いて、私はすっかりこのおじいさんを信用できると思った。それは「内蔵コンピューターには絞りやシャッタースピードのデータが記録されるのか」という質問。私が「記録されません」と答えると、また残念そうな表情。私自身、そんな機能を付けて欲しいと思っていたから、何の根拠もないのだけれど、妙に共感してしまい、すっかりおじいさんを信用することに。
で、私は首からカメラのストラップをはずし、おじいさんにカメラを差し出すという危険な行為に及ぶ。しかし、私が「どうぞ」と言っても、最初の約束通り、決して触ろうとしなかった。結局、私が手に持った状態でファインダーの中を覗いてもらった。
さて、もう一人のおじさんの方だけれど、彼は息子さんらしかった。おじいさんから近づかないように言われていたようだ。私とおじいさんが話しているところから、常に3m以上離れて様子を見ていた。
最後に二人と握手して別れる。何か、警戒心ばかり先に立っていた自分が恥ずかしくなる出来事だった。
レッチェからの場合もやはりSud-Est線がお勧め。Novoli経由で行ける。このあたりは沿線風景がおもしろい。
問題は駅を降りてから。
駅前は近代的な団地が立ち並んでいる。旧市街は駅を出て左斜め前の方向にある。
駅前の大通りの向こう側に階段があるので、それを上がり、団地の中の幅の広い道を直進。大通りに出たら左へ。やがて、広場に出る。その奥に右の写真の門がある。ここからが旧市街。