updated May 1 2000
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

4200. 派遣労働者が増えていきますが、〔派遣先の〕労働組合として何ができるのでしょうか。
 労働者派遣法が改正され、派遣業務が自由化されました。経営者は、厳しい経営のなか人件費を節約しないと競争に勝てないので、やむを得ず退職従業員の補充は正社員の新規採用ではなく、派遣導入を基本方針にしたいと言います。人員削減で業務量が多く、組合員のなかでも派遣導入を求める声が強くなっています。労働組合として派遣についての知識もなく、十分に議論できません。
 
 派遣労働者の問題は、他人事ではありません。派遣導入問題は、派遣先の従業員自身の問題です。
 たしかに、ギリギリの人手不足のなかで、人手を増やして欲しいという声は当然です。しかし、正社員に代わって派遣労働者を導入するという提案があったときには、派遣先の労働組合としては、経営側の危険なねらいを見抜き、場当たり的な対応ではなく、長期的な視野で、しっかりと対応することが必要です。

 (1)まず、派遣労働は、あくまでも「一時的な業務増に対応する」ために導入することが基本です。外国で派遣労働を「一時的労働(temporary work)」と呼ぶのは、この点からです。長期に及ぶ業務(恒常的業務)には正社員を充てるべきであると考えなければなりません。「派遣を長期で受入れる」というのは、矛盾した考え方であることをしっかりと押さえること、「長期に受入れるなら、派遣を正社員に」というのがポイントであることを理解しておく必要があります。
 (2)とくに、「派遣期間」が重要な意味をもっています。99年改正によって自由化された業務については、派遣期間は、派遣先の同一事業所の同一業務について1年までと厳しく規制されています。派遣会社や派遣労働者が入れ替わって、それぞれは1年を下回っても、その業務に1年以上継続して派遣を受入れることはできません(労働者派遣法40条の2)。労働組合としても、ある業務について派遣期間が1年を超えていないか監視することが必要です。
 (3)もし、1年を超えて派遣が継続していれば、労働者派遣法に違反することになりますし、労働者派遣法では、正社員として派遣先が直用する努力義務を負います(40条の3)。労働組合としては、1年を超えて派遣先での直用を望む派遣労働者の力になって、派遣先にその派遣労働者の採用を求めることができますし、労働組合が支援すれば直用される可能性が拡大します。できれば、法律の通り、1年とせずに、労働協約などでより短い期間(3ヵ月や6ヵ月)に設定して、それを超えたときには、派遣労働者を正社員にするように取り決めることも考えられます。
 (4)無権利で低い労働条件の派遣労働が広がれば、逆に、正社員雇用は、人件費がかかって雇用調整できない厄介な雇用形態とされ、不要な存在になっていきます。派遣労働者の雇用の安定や労働条件を改善することは、正社員の雇用や労働条件を守ることに直結していることを理解することが必要です。できれば、派遣労働者が、派遣先の労働組合に加入できるように、組合の規約を見直したり、団体交渉の課題に派遣労働者の雇用や労働条件の改善を挙げるべきでしょう。派遣労働者の労働条件が正社員に近づけば、派遣労働者を正社員にする可能性も広がります。
 (5)派遣労働者からの悩みで多いものの一つは、派遣先の従業員が、優越的な意識で、まるで派遣労働者の使用者のように振る舞ったり、人格を無視してイジメやセクハラ的な態度をとるというものです。派遣労働者をいじめたり、セクハラの対象にするような職場環境は、派遣労働者だけでなく、正社員にとっても望ましいものではありません。労働組合としても、派遣労働者の受入れについての基礎知識を身につけ、経営者にも派遣先事業主としての責任を果たさせる等、職場モラルについて討議を呼びかけることが必要です。
 (6)日本の労働組合は、正規従業員だけを組織してきました。派遣労働者は、同じ職場で働いていても、外部社員であって、同じ労働組合の組合員にするのに抵抗感があるようです。派遣労働者が無権利なまま広がって、労働組合に未加入のままであるのは、こうした派遣先労働組合の鈍感な対応によるとも言えます。
 できれば労働組合としても、派遣労働者に連帯して、労働組合に組合員として迎えたり、その悩みを受け止め、労働条件の改善、とくに長期業務の場合には直用化(正社員化)に取り組むべきです。
 (7)私たちは、すでに『がんばってよかった 派遣から正社員へ』(かもがわ出版)で、以上のような立場から、派遣先での労働組合が援助して派遣労働者の労働条件改善や、雇用確保、とくに、正社員化の取り組みを進めてきました。できれば、既に、派遣労働者の問題に取り組んでいる労働組合や、地域労働組合とも連携をとり、派遣労働者の問題についての経験や公共職業安定所の利用等、ノウハウも取り入れることが必要です。
 (8)現在、正社員自身のリストラが進行して、代わって派遣労働が拡大しています。問題の本質が誰の目にもあきらかになってきました。派遣労働者の問題が、正社員の問題であることをしっかりと理解する必要があります。いまこそ、「セハ」(正社員と派遣労働者の)連帯を強めて、労働者全体の雇用と労働条件を守ることが必要だと考えます。
 (9)派遣先の労働組合として、派遣労働者を組合員にすることが簡単でないとしても、以上の視点から問題を取り上げることはできると思います。また、派遣労働者の悩みに耳をかたむけ、改善に努力をすることが、労働組合としての意識や自覚を高めることになります。

 なお、関連する項目がありますのでご覧下さい。
 4010. 派遣労働者でも労働組合はつくれますか
 4020. 労働組合をつくるには、どうすればよいのですか
 4050. 派遣先での労働組合活動はできますか
 4070. 派遣先に団体交渉を申し入れようと思うのですが
 4080. 不当労働行為にはどうすればよいでしょうか
 4090. 組合活動を嫌って契約を解除されたのですが

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