updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

4010. 派遣労働者でも労働組合はつくれますか
   日本国憲法第28条は、労働者の団結権、団体交渉権、争議権を認めています。
 派遣労働者も労働組合をつくる権利があることでは、一般の労働者と何ら差別はありません。労働組合に加入したり結成したりすることで、派遣労働者としての交渉力を高めることは、労働法としては望ましいことになります。
 派遣労働者が弱い立場にたつ最大の理由は、孤立していて団体交渉などができないことです。個人でいるのは、たしかに気楽ですが、その分、孤立してしまうことになり、無権利なままになってしまいます。
 派遣労働者が連帯して労働組合を結成することができれば、こうした無権利な地位を改善することができます。

 派遣労働はそのままでは職場でも孤立してしまいがちです。仲間と話合えることや、何かあったときには相談にのってもらえるなど「保険」の意味もあって、地域の個人加盟の労働組合に加入する人も増えています。
 派遣110番の相談事例でも、実際に問題が解決した例のほとんどは、地域の労働組合の援助を得て派遣元や派遣先と交渉したり、組合の顧問弁護士が交渉に同席した場合もあります。こうした第三者の助力を得たときにはじめて派遣元・派遣先も事態をまともに受け止め、問題が広がることを嫌って和解に至ることになるのです。
 派遣労働者が個人では、派遣元や派遣先と交渉しても、まともに相手にしてもらえず、満足を得る解決に至ることはきわめて少ないのが現実です。

 派遣労働者の多くは、これまで労働組合とは無縁であったと思います。そのため、労働組合に相談するのをためらう方もあると思います。しかし、実際は逆です。労働組合が、憲法の団結権の主体でありながら、正規従業員だけの利益を守って、無権利なまま周囲で働いている派遣労働者のための取り組みをしてこなかったことこそ問題だと思います。

 それでも、労働者派遣法が制定されるときに、派遣労働者の無権利を予想して、反対運動に積極的に取り組んだ労働組合がありました。こうした労働組合の多くは、現在に至るまで派遣労働者の権利問題に継続して取り組んでいる例も少なくありません。

 例えば、民間放送で働く労働者を組織する組合の全国組織である「民放労連」は、早くから派遣労働者の権利や雇用問題に取り組んできました。労働者派遣法反対でも指導的な役割を果してきたと言えます。『がんばってよかった 派遣から正社員へ』(かもがわ出版、1995年)には、関西地域の民間放送局で働く派遣労働者の組合=民放労連近畿地区労組の取り組みの事例をいくつか紹介しています。この近畿地区労組は、個人加盟で、放送局に下請や派遣で働く労働者が会社を超えて加入する組織です。

 他にも、全港湾、運輸一般、全国一般、電算労(コンピューター・ユニオン)、観光労連、私鉄総連、音楽家ユニオン、医労連などが、労働組合として派遣労働の問題に取り組んでいます。
 最近では、JMIU(全日本金属情報機器労組)は、昨秋から、派遣労働の実態把握や偽装派遣の是正申告、正社員化などに取り組んでおり、注目されています。
 派遣労働者の組織である、派遣ユニオンが東京地区でできていますが、地域労組(地域労連、コミュニティ・ユニオンなど 大阪労連、ユニオンひごろ)などで派遣労働者の相談活動に取り組む事例も増えています。
 派遣労働者の組合組織として考えられるものとしては次の例があります。

 (1)派遣元での労働組合

 ビルメンなど常用型の派遣労働者が、派遣元(派遣会社)で労働組合を組織している事例があります。登録型の場合に、派遣労働者が派遣元で労働組合を組織している例はほとんど聞きません。派遣会社の営業担当者などの労働者が組合を組織する例も多くはないと思います。とにかく、あちこちの派遣先に散らばって働く派遣労働者が、仕事の場でもない派遣元で労働組合を結成することはきわめて困難なことです。
 医療事務などの派遣(本来は対象業務外なので請負形式?)をする会社では労働組合があるということでしたが、ユニオンショップで強制的に組合に加入させられているのに、組合費だけ徴収され、組合としては何の活動もしてくれない、という相談もありました。

 (2)派遣先での労働組合

 派遣労働者も、実際に仕事をしている派遣先で働くものとしての連帯も生まれます。できれば、派遣先で労働組合に加入できれば、それが望ましいと考えられます。
 民放労連では、早い時期に、派遣先での派遣労働者の組織化を進め、正社員化の取り組みを含めた運動を展開しました。そのときにも、派遣先の正社員で組織する親組合に直接組織する以外に、派遣労働者だけの地域労働組合を労連の傘下に作って共同しての取り組みを進めています。

 (3)地域労働組合

 派遣労働者として、最も組織しやすい労働組合の形態は、地域労働組合です。
 登録型の場合には、とくに、複数の派遣会社に登録していたり、派遣会社への帰属意識も弱いですし、派遣先もバラバラですので、派遣元での組織は事実上不可能です。一定の地域で、誰でも加入できる労働組合に個人で加入することになります。もし、トラブルがあったり、労働条件の改善の交渉などには、地域労組の代表が労働者と共同で派遣元や派遣先と団体交渉を進めることになります。
 派遣労働者が多い、東京などでは、派遣労働者だけで組織する地域労組も現れています。
 また、電算労、観光労連、私鉄総連などで、労働組合としての労働者供給事業を行っている例もあります。営利的な派遣会社に比較して、手数料部分が少なく賃金が高いこと、労働基準法、社会保険法などの法律の規定をきちんと守ることなどのメリットが指摘されています。

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