updated May 28 1999
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)

質 問 と 回 答 例 (F A Q)

2500. 労働者派遣法の改正で1年以上の派遣はできなくなるとのこと。長く働けないと不安です。
派遣で10年近く働いています。いまの派遣先には2年になります。契約更新をしてもらえるかいつも不安でしたが、今度の労働者派遣法改正で法律では同じ所に続けて派遣されるのは、今なら長くて3年、法律が改正されれば、派遣は1年までに限ると聞きました。これまでも派遣は3年までといわれてきましたが、もうすぐ34歳になり、次の契約更新があるか心配していたのに・・・。今度の法改正で同じ所に長くいてはいけないのでしょうか。最近ちょっと不安を感じています。

 労働者派遣法「改正」をめぐるご相談、ご質問が集中しています。今回の法「改正」の問題点については、派遣110番のHPに関連記事を掲載していますので、ご覧ください。

 また、現行法での3年を超える派遣については、FAQに回答例があります。
 2300 4年も同じ派遣先会社の同じ部署で働いているのですが(3年を超える派遣) それを読んでいただいていることを前提に、以下、コメントします。

 まず、現在(1999年5月)、労働者派遣法の見直しが国会で論議されていますが、まだ成立していません。
 5月21日に、衆議院で一部修正可決され(修正案・附帯決議)、参議院での論議が始まったところです。

 次に、ご質問の、

> 法律が改正されれば、派遣は1年までに限る

 という理解は正確ではありません。

 現在の26業務で既に派遣されている方には、基本的に関係がありません。新たに自由化される業務について一年以内に限るという趣旨です。

 10年近く派遣社員として働いておられるとのこと、担当されている業務が判りませんが、労働者派遣法が対象にしている26業務であると推測します。そうであれば、ご質問のような1年に限るという法改正の内容は関係がありません。

 26業務以外に新たに拡大される、現在は派遣できない業務での派遣が自由化されるときに、新たな派遣について1年までの短期派遣に限定されるということです。この場合に、1年を超えたときに、派遣先は、直用の努力義務を負うということにしか過ぎません。

 したがって、1年以内の短期の派遣が増えることとなり、派遣労働者全体としては短期派遣が多くなり、派遣は一年までという常識が定着しかねません。その結果、派遣労働者の雇用の安定は全体として不利になることが却って心配されます。

 労働者としては、待遇や仕事のやりがいなどの状態に満足していれば、同じ派遣先に3年以上であっても、いまの派遣先の職場を変わりたくないと思われるのは当然です。派遣労働者の側としての希望は当然のことだと思います。

 3年や1年というのは、明らかに派遣労働者の希望や現実を反映した規制ではありません。派遣労働者にとってはかえって雇用が不安になる危険があります。端的に言って、日本では、派遣労働者の雇用の不安定を余計に強めるものだと思います。この点は、国会での意見陳述でも強く指摘しました。

 以上の理由から、今回の法改正で一年以上の派遣で、長く働けないというのは、法律的には、ご相談者には直接には関係がないと推測します。派遣元や派遣先の一面的な法改正の利用(改正を口実にした契約更新の拒否など)には反論できます。
 要するに、「一年までの派遣」というのは、すでに派遣労働者になっている方には直接には関係がない、ということに確信をもってください。

 しかし、最近の5月20日のNHK「クローズアップ現代 急増する派遣社員」でも、国谷キャスターから、ご相談者と同様にかえって派遣労働者の雇用が不安定になるのではという質問がありました。 ところが、驚いたことに、その番組の解説者であった、日本労働研究機構(労働省の外郭団体)の伊藤さんという人は、
 「派遣労働者というのは、あちこちと職場を変わることを前提にした雇用、正社員とは区別された雇用だから仕方がない」と言った趣旨のことを平然と言い放っていました。
 労働者派遣法改正を推進している労働省の基本的な考え方を反映していると思いました。

 これが、労働省や経営側の本音だと思います(労働者派遣法は決してそこまで規定していません。労働者保護が建て前としてはあります)。そうなると、労働者ががんばらないと、まさに、ご心配のような状況が生まれることになります。

 この派遣110番にも、3年までということを逆手にとっての解雇の相談が増えています。

 連合や全労連など労働組合の側も、派遣は短期としていますが、これは雇用全体を守ることが前提です。労働組合として同時に、登録型労働者派遣の禁止も主張しています。ただ、この登録型労働者派遣の禁止=常用型派遣に限るという趣旨は法案には盛り込まれていません。労働組合の主張は、ドイツのように、派遣会社に長期に継続雇用させて派遣労働者の保護を図るという考え方です。

 労働者派遣法の建て前を貫くならば、ご相談者のような同じ派遣先への10年近くの派遣の場合には、派遣先との間に雇用関係が成立しているとするべきだということになります。ドイツなどの外国の労働者派遣法はすべてそのような直用義務を定めています。ところが、現在の法案では、派遣期間を超えても派遣先の正社員として自動的に雇用する義務は「努力義務」となっているだけです。しかも、新規に拡大された業務での一年以内の派遣に限られ、ご相談者のような既に長期に派遣されている方は逆に対象外となっています。

 5月20日のクローズアップ現代では、19年間も派遣されていた受付業務の女性(小川美弥子さん)が、高齢を理由に解雇されたという事例を紹介していました。500万円の損害賠償を請求しておられるということです。
 その理屈は、長期間の派遣によって派遣先に実質上の雇用責任が発生している。社員番号も小川さんに与えられているし、半年間の契約でも19年間も更新してきたため、直接の雇用契約が成立している、という主張です。

 この派遣110番とは直接に関係がない事例ですが、私たちは、まさに、ご相談の事例や、この小川美弥子さんのような事例を扱って、派遣から正社員への取り組みをしてきました。

 その事例は、『がんばってよかった 派遣から正社員へ』(かもがわ出版、1995年)にまとめています。

 時代の流れは、まことに残念ながら、正社員が派遣社員化にされる動きに進んでおり、派遣労働者が正社員になることは考えられないほどになっています。

 しかし、一〇年も受け入れるということは、本来、正社員として採用するべき労働者ということです。それを、何時までも派遣の地位にとどめておくこと自体が労働者派遣法に反しています。

 法違反であれば、他の国では、当然に派遣先に直接採用されると定められています。日本の労働者派遣法は、そうした派遣先の義務を定めていない点で、世界でももっとも遅れた内容になっています。是非、外国並の労働者保護の内容を盛り込むように、派遣で働いておられる方自身がもっと声をあげてください。

 小川さんのような当然の権利主張をする派遣労働者が各地で増えること、派遣労働者自身や私たち派遣110番が取り組んでいるように、派遣労働者であっても、簡単には解雇を許さないことが大切です。あきらめずに、派遣労働者も労働組合を作って、連帯の取り組みをしなければ、事態はますます不利になっていくと思います。

 派遣労働者のなかでも労働組合結成などの動きも広がっています。たしかに、宣伝では、派遣は縛られないことがメリットだとされます。確かに、個人でいること、現状のままでいいという若い派遣社員の方の気持ちはわかりますが、声をあげ手を結んでがんばらないと、時代が動いていますので、経営側に一方的に好都合な方向にどんどん押し流されてしまうと思います。派遣社員の雇用や地位、労働条件はますます悪くなっていくと心配しています。これをはねかえすのは、結局、労働者自身の主体的な取り組みしかありません。

 是非、派遣労働という働き方について、これまでの経験やご自分の状況を改めて見なおしていただき、ご指摘の「不安」について、マスコミなどにも訴えるなど声をあげていただきますようにお願いします。

【関連ページ・リンク先】
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 2440.派遣労働者が派遣先の正社員に雇用されるのは?
 8025.派遣終了後に派遣先から直接雇用したいといわれたら?
 8030.「正社員に」なることを勧めるのは、職業安定法違反?


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