1999年5月21日、労働者派遣法の見直し案が衆院を通過しました。

 5月11日の参考人意見陳述で指摘した、「労働者保護に欠けたまま自由化を進めるという見直し案の本質的な問題点」は変わっていません。

 参議院では、法案の重大な問題点を改める抜本的修正が必要だと考えています。

 以下、1999年5月19日の衆議院労働委員会で採択された労働者派遣法修正案と付帯決議の内容を、速報として掲載します。

労働者派遣法 衆議院修正案

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する修正案要綱

  一 一般労働者派遣事業の許可の基準の追加(第七条第一項第三号関係)
   一般労働者派遣事業の許可の基準として、個人情報を適正に管理し、及び派遣労働者の等の秘密を守るために必要な措置が講じられていることを追加するものとすること。

 二 労働者派遣の役務の提供を受ける期間の制限の規定に抵触することとなる最初の日の通知がない場合の労働者派遣契約の締結の禁止(第二十六条第六項関係)
   派遣元事業主は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする者から当該期間の制限の規定に抵触することとなる最初の日の通知がないときは、当該者との間で、当該業務に係る労働者派遣契約の締結をしてはならないものとすること。

 三 派遣労働者を特定することを目的とする行為の制限(第二十六条第七項関係)
   労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならないものとすること。

 四 健康保険の被保険者の資格の取得等の確認及び雇用保険の被保険者となったことの確認の有無に関する事項であって労働省令で定めるものを派遣先に通知しなければならないものとすること。

 五 派遣元責任者の業務の追加(第三十六条第四号関係)
   派遣元責任者の業務として、派遣労働者の等の個人情報の管理に関することを追加するものとすること。

 六 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の適用に関する特例(第四十七条の二関係)
   労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の就業に関しては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律中の職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮並びに妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置の規定を適用するものとすること。

 七 派遣先に対する雇入れ勧告等(第四十九条の二第二項及び第三項関係)
 
  1 労働大臣は、派遣先が労働者派遣の役務の提供を受ける期間の制限に違反して労働者派遣の役務の提供を受けており、かつ、当該労働者派遣の役務の提供に係る派遣労働者が当該派遣先に雇用されることを希望している場合において、当該派遣先に対し、当該派遣労働者を雇い入れるように指導又は助言をしたにもかかわらず、当該派遣先がこれに従わなかったときは、当該派遣先に対し、当該派遣労働者を雇い入れるように勧告することができるものとすること。
  2 派遣先が1の勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができるものとすること。

 八 罰則(第六十一条第三号関係)
   派遣先が労働者派遣の役務の提供を受ける期間の制限の規定に抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行った派遣元事業主に対し、所要の罰則を科すものとすること。

 九 施行期日(附則第一条関係)
   施行期日を、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日とするものとすること。

 十 その他
  その他所要の修正を行うものとすること。


衆議院付帯決議

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法律の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 適用除外業務を政令で定めるに当たっては、その業務の実施の適正を確保するためには労働者派遣により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務について、中央職業安定審議会の意見を踏まえ適切に措置すること。

 二 請負等を偽装した労働者派遣事業の解消に向けて、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準について一層の具体化、明確化を図るとともに、厳正な指導・監督に努めること。

 三 派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の中途解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときは契約解除の少なくとも三十日前に派遣元事業主にその旨の予告を行わなければならないこととするとともに、この予告をしない派遣先は派遣労働者の三十日分以上の賃金に相当する損害賠償(解除の三十日前の日と予告をした日との間の日数が三十日未満の場合はその日数分以上の賃金に相当する損害賠償)を行わなければならない旨を指針に明記し、その履行の確保を図ること。

 四 派遣元事業主は社会・労働保険加入の必要がある派遣労働者について加入させてから労働者派遣を行うべき旨及び派遣先は社会・労働保険に加入している派遣労働者を受け入れるべき旨を指針に明記し、その履行の確保を図ること。
 また、派遣労働者を含む短期雇用労働者に係る社会・労働保険の在り方について検討すること。

 五 派遣労働者の職業能力の開発・向上を図るため、派遣元事業主による一層の教育訓練の機会の確保が図られるよう、適切な指導等に努めること。


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