updated Sept 10 1997


【紹介】最近、読んだ本、送っていただいた本 社会保障・介護関係

(社会保障・介護関係)

木下秀雄『ビスマルク労働者保険法成立史』有斐閣、1997年、6400円+税
 大阪市立大学法学叢書

伊藤博義編『福祉の労働Q&A』有斐閣、1997年、1700円+税
 有斐閣選書

高島昌二『スウェーデンの家族・福祉・国家』ミネルヴァ書房、1997年、3800円+税
 21世紀に社会保障

坂本重雄『社会保障改革 高齢社会の年金・医療・介護』勁草書房、1997年、2700円+税
 21世紀に社会保障

橋本佳博・玉村公二彦『障害をもつ人たちの憲法学習―施設での社会科教室の試み』かもがわ出版、1997年、1800円+税
 知的障害をもつ人たちの施設での社会科教室の実践。初めて選挙権を行使するまでの感動のドラマ。憲法50年を迎えて人権の本来の意義が問われている。民主主義を単なる多数者の支配と誤解して、少数者の権利を侵害していても鈍感な日本の現実。声高に問題を提起するのではなく、知的障害者の憲法学習の実践から権利の意味を問いかけている。

公文昭夫『政府・財界の社会保障大リストラ戦略 許すな医療保険改悪 介護なき保険 年金改悪』学習の友社、1997年、900円
 現在進められている社会保障の総改悪の問題点を鋭く指摘。政府・財界が進める雇用破壊政策と社会保障の破壊。日本社会の危機を告発している。

一番ヶ瀬康子・川井龍介編『厚生省「福祉汚職」 福祉は誰のものか!』労働旬報社、1997年、1544円
岡光厚生事務次官を頂点とするシルバー汚職の根本原因を追及する9人の福祉関係者による徹底討論。国民の切実な福祉を食い物にする官僚を生み出したものは何かを明らかにする。

高藤昭『社会保障法制概論 少子・高齢・国際化時代を視座に』龍星出版、1997年、2884円
 この本は、理論書『社会保障法の基本原理と構造』(1994年、法政大学出版局)によって、高藤社会保障法理論を確立された著者が、一般向け、また、学生向けのテキストとして社会保障法を分りやすく解説されている。いま、社会保障をめぐる状況は厳しさを増している。豊富な知識に基づいて国際的な視点から日本の社会保障法の概要と問題点が明らかにされている。住宅保障や国際社会保障などの部分は、従来の体系に安住せず独創的な理論を追求するもので大きな説得力をもっている。

『情と熱と知と−京都市職員労働組合民生支部五〇年の検証』京都市職員労働組合民生支部、1996年、2500円
 京都市の福祉事務所、福祉施設、保育所などで働く職員の労働組合の五〇年の歴史が生き生きと伝わってくる。50年を迎える労働組合が組合史をまとめているが、この本は福祉の向上のために努力してきた市職員の情熱がよく伝わってくる編集。「ああ、この人も民生支部の出身か」と何度も感じ入るほど、京都の福祉を支えてきた人々の水準の高さがよくわかる。全体として読みやすい。とくに巻末の略年表は研究にきわめて有益。

上野勝代『子ども、お年より、女性が輝く国ノルウェー』かもがわ出版、1995年、1500円
 オスロでの生活を経験して、北欧の小国ノルウェーの女性、子ども、高齢者、そして著者の専門である住いとまちづくりについての興味深いレポート。社会における女性の役割の大きさに改めて驚かされる。ノルウェーの実情を知れば知るほど、経営効率と競争の原理、政治・官僚の腐敗がまかりとおり、国民の人間らしい生活からますます離れようとする日本の現実の問題点を強く感じさせる。

藤本武『アメリカ資本主義貧困史』新日本出版社、1996年、9000円
 資本主義の盟主であるアメリカの貧困問題を歴史的に分析した大著。著者の鋭い批判力に基づいて、アメリカの貧困の概要を明らかにする。徹底した実証的立場から、官庁統計も批判的に利用できることを示す。労働・社会保障の面で、日本が跡を追っているアメリカ合衆国。その実情を知るために不可欠の書。

『特集 貧困な生活保護を変えるために』法と民主主義 No.311、1996年8月/9月、1000円
 生活保護裁判の歩みから最近の生活保護裁判までを特集。

相澤與一『社会保障の保険主義化と「公的介護保険」』あけび書房、1996年5月、2300円
 1995年の社会保障制度審議会勧告は、憲法に具体化された社会保障の理念から大きく逸脱する危険な内容を含んでいる。社会政策の視点から、この点を鋭く分析し、批判する。

本沢巳代子『公的介護保険 ドイツの先例に学ぶ』日本評論社、1996年8月、3605円
 公的介護保険の法制化をめぐって多くの書物が出ているなかで、ドイツについて日本でも最も詳しい研究者である著者の最新の単行書。日本の現在の介護保険論議が、官僚主義的であることを批判し、国民レベルでのオープンな論議を提案している。ドイツの論議を熟知している著者の指摘だけに説得力がある。関係者だけでなく、広く読まれるべき書物。

吉本哲夫、白沢仁、玉村公二彦『障害者プランと現代の人権』全国障害者問題研究会出版部(tel 03-5285-2601)、1996年8月、1854円
 21世紀の障害者施策を方向づける障害者プラン作成までの経過と、プランの問題点、世界の障害者法の紹介など、人権の視点からの問題分析と提起。京都社会保障法研究会のメンバーで、精力的な研究を続けている玉村さんが共著者に。分かりやすいので、ゼミや講義のサブテキストとしても活用できる本
大脇雅子、神尾真知子、廣瀬真理子、古橋エツ子『介護保険? 家族保険! 一人ひとりの生き方と生涯保障』京都・法政出版、1996年4月、1000円
 介護保険の議論に欠けている視点。なぜ、高齢者だけなのか?いろいろな家族が存在するなかで、一人ひとりの自由な生き方を支えるために、「家族保険構想」を提起する。労働をも視野に入れた議論に説得力。狭い公的介護保険論議に新たな視点を示す。

荒木誠之編『テキストブック 生活保障論』法律文化社、1996年4月、2,369円
 大学の講義テキストであるが、社会福祉・社会保険の各分野の新しい問題にも触れる。

清正寛・良永弥太郎編『論点 社会保障法』中央経済社、1996年5月、3,600円
 最新の社会保障の講義テキスト。後期の講義にも参考に使いたい。というよりも、各分野ごとの叙述は、専門論文に匹敵。300頁を超える本格的な解説書。

副田隆重・浜村彰・棚村政行・武田万里子『ライフステージと法』有斐閣、1996年3月、1,648円
 労働・家族・社会保障など、身近な問題を法的に考えるための、学生向けの法学案内書・テキスト。基礎ゼミに適当な入門書。


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