12.念力計と物理霊媒


「未知の事柄というのは、まだ発見されていない事柄に過ぎません。」
死後の世界からの交信


ヴィ:さあ教授、これがこの前持ってくるといっていた機械、念力計です。これが感度調整で、最初はこの最大感度で実験してください。そしてこの0点調整つまみで、二つのメーターが0になるように調節します。準備ができたら真中のターゲットに意識を送ります。右回りのイメージを送れば右の針が、左回りのイメージでは左の針が振れるようになっています。

O:なんだか怪しいものを持ってきたな。いったい誰が作ったの。

ヴィ:日本人のSさんが、自分の理論を証明するために作ったものです。まずは持ち帰って試してみてください。

O:あれっ、ここで実演してくれるんじゃないんだ。

ヴィ:結局意識が物を動かすことを証明する機械ですから、私がやっている横で教授が「そんなの動くはずはない」という意識を送ったら、その結果は動くのか動かないのか全くわかりません。これはやはり教授が一人だけのときに自分で実験してもらいたいですね。もちろん、たまには動かせない人もいるでしょうから、教授のゼミの学生たちにも貸してみてください。4、5人試しても誰も動かないというのはあり得ないでしょう。

O:そこまで言うならとりあえず借りていこうか。君が望むような結果が出たら、私のやってきた物理は間違ってるってことだから、そのときは辞表でも書こう。

ヴィ:そんなことは言わないでください。私のせいで職を失う人がいるなんて堪えられませんよ。

O:いいんだよ。実際は動かないに決まっているんだから。

ヴィ:今度お会いしたときに、嘘偽りのない体験談が聞けるのを楽しみにしています。それでは今日の本題に移ります。

 物質化は、白っぽい蒸気に見えるエクトプラズムが、霊媒の口や他の場所から発散される過程に関係しています。このエクトプラズムを利用して、他界の知的存在は、その振動を人間のレベルまで下げることができるのです。

O:始まったな。何の根拠もない世迷いごとが。

ヴィ:これは今までの多数の科学者たちによる結論です。

O:ほー。しかし、物質化という現象が存在するかどうかもわからないのに、いきなりそう言われてもな。

ヴィ:今から解説と共に、有無を言わせぬ例証をたくさんあげていきます。

 十分なエクトプラズムがあるとき、向こう側から来た知的存在が物質化して、そして固体化することが可能になります。ペットや亡き友人・家族たちが姿を現し、生きている存在のように見えるのです。死亡した人々・動物の物質化、空中浮揚、花やコイン、その他の物質のアポーツ、これらの極めてまれにしかみられない「物理心霊現象」は、他界した人々からの詳しく特定の情報と同じように、完全に調べあげられた事象です。

O:ちょっと待った。アポーツって何?

ヴィ:今までそこに無かったものが突然現れることです。

O:君はそんなことが本当に起きると思ってるの。

ヴィ:はい。

O:アポーツに、なんだって、空中浮遊? アインシュタインが聞いたらびっくりするな。そんなことが起きてきたなんてのは、世界中で君一人しか知らない事実なんじゃないか。

ヴィ:そう思うのは、教授がこの分野を勉強したことがないからです。今までの歴史を紐解くと、10万人にひとりがこの贈り物を開発する能力を持ち、通常は20年ほどの修練の末にやっとそれを開花させているようです。いわゆる物質主義の「研究者」たちは物質化霊媒を「ほとんどサディスティックに」扱い、1950年代以降、物理心霊現象を「地下に」追いやってしまいました。その結果、最近の西洋の物理霊媒たちは、ただ内密に友人たちと親類のために交霊会をしています。1990年にイギリスで設立された、物理心霊現象のための協会、ノアズ・アークは、今や1700人のメンバーを持ち、世界中に150の支部があります。初期の物理霊媒たちは、いわゆる調査者に服をすべて脱がされて身体検査を受け、口には水を含まされ、目隠しをされ、縛り上げられ、際限のないテストを要求され、多大な身体的苦痛を味わされてきました。ノアズ・アークはそのような仕打ちから霊媒たちを守るために設立されたのだと、協会代表は述べています。

 また、奇しくもこの教会を設立したロビン・フォイが始めたスコールグループによって、1990年代のイギリスにおいて、誰もが認めざるを得ない心霊現象があり得ることを示す一連の証拠が形作られました。SPRから出ている、この証拠を述べた「Scole Report(スコールレポート)- 1999」を読んだだけでも、たいていの人は死後の世界を受け入れざるを得なくなるでしょう。

O:ほう、それはすごいな。是非読んでみたいものだ。

ヴィ:でも残念ながら、この報告書や、その他のスコールグループ関連の書籍はまだ翻訳されていません。

O:「まだ」という言葉は適切ではないな。これからもずっと翻訳されないだろう。出版者も馬鹿じゃないから。

ヴィ:教授は調べもせずにスコールグループが偽者だと言うのですか。

O:いいや。そんなつもりはない。ただ、本物である確率が1%以下であるものを出版しようとする酔狂な会社は、そうそうないと言いたいだけだ。

ヴィ:今、教授はエジソンの発明を否定しようとした科学者たちと同じような状態になっています。もう少し論理的になってください。

O:そういう言い方をするなら、言わせてもらおう。だいたい物理霊媒とかいっても、暗闇でなければ現象を起こせない。突然灯りを点けると霊媒が健康を害すのでやめて欲しい。これは、明るいとトリックがばれるから暗闇でやらせてくださいと言っとるようなもんだろ。私は間違っているかね。

ヴィ:その言葉も、白昼堂々と現象を何度も起こした霊媒や、実際に灯りをつけられたせいで亡くなった霊媒の例を聞けば、もう口に出なくなりますよ。

O:ああそう。じゃあ早く聞かせて。

ヴィ:それでは、と行きたいところですが、すみません、今日はちょっと用事があって。小一時間ほどで戻ってきますので、その間この念力計で遊んでいてください。

O:この忙しい私をさしおいて、用事だって。一体何の用なんだ。些細な用事だったら許せないぞ。

ヴィ:実は妻が今オーストラリアから来ていまして、ちょっと買い物に付き合わなければならないのです。何せ、彼女は全く日本語がわからないので。

O:なんだ。そういう理由なら別にすぐ戻ってこなくてもいいよ。また来週にしよう。

ヴィ:そう言っていただけると助かります。いやー、やはり人生において一番大事なのは最愛のパートナーですね。教授も奥さんが一番大事でしょう。

O:・・・。君がうらやましい。

ヴィ;えっ、何んですって?

O:いや、いいんだ。別に。さて、しょうがない。私もうちに戻ってこの念力計を試すとするか。それにしても、また変な機械を渡してくれたもんだ。

***一週間後***

ヴィ:教授、例の念力計はどうでした?

O:ああ、あれか。確かにわけのわからない力でメーターが動くことは認める。ただ、まだ結論は出せない。もっと厳密な実験をやってみないとな。これはもう少し借りていてもいいの。

ヴィ:いいですよ。気の済むまで実験してください。そうすれば意識がものに影響するという真実に気づきますから。

O:しかしヴィクター、これが本当にそういう機械ならノーベル賞ものだよ。

ヴィ:そうですね。

O:で、そのSさんはノーベル賞を受賞したの?

ヴィ:していません。

O:そうでしょ。絶対どっかに穴があるんだよね。

ヴィ:まあ、私にはその穴は発見できず、どう考えても私自身の意思に従って動いているようにしか思えませんでしたが。いいでしょう。こころゆくまで実験してみてください。また今度、別な感想を聞けるのを楽しみにしていますよ。

 ではこの前の続き、物理霊媒について話させていただきます。数少ない、物質化を起こせるほどの能力に恵まれた霊媒たちは必ず、とても豊富なエクトプラズムを持っています。懐疑論者たちはエクトプラズムの写真はすべてトリックで、たいていはガーゼのような粗い綿布を口の中に入れておき、交霊会中にそれを引き出すのだと主張しています。確かにそのようなことを行なった詐欺霊媒はいたでしょうが、エクトプラズムは実在し、数々の驚嘆すべき物理心霊現象の基礎になっていることを示すかなりの数の証拠が、ノーベル賞を受賞した生理学者を含む第一線の科学者によって提出されてきました。

 ミュンヘンの医者、フォン・シュレンク・ノッチング男爵は、エクトプラズムが多量の白血球と色々な上皮細胞で構成されていることを示しました。物質化現象が起きている間、エクトプラズムは霊媒と交霊会の出席者たちの身体から提供されます。アイルランドのベスファルト工科大学とクィーンズ大学の機械工学講師であったW・J・クロフォード教授は、エクトプラズムについて長期間に渡る入念な研究を行ないました。彼は三冊の古典的な研究書「The Reality of Psychic Phenomena(物理心霊現象の現実)- 1916」、「Experiments in Psychic Science(心霊科学実験)- 1919」、「The Psychic Structures in the Goligher Circle(ゴライヤーサークルにおける心霊現象の構造)- 1921」を書き表しています。物質化現象の間、彼は霊媒の体重が54キロから30キロにまで落ちたことに気づきました。文中の他の例では、霊媒の体重が7キロから18キロ減った事実が報告されています。近年の研究者ジョージ・ミークも、交霊会中に霊媒と出席者たちの体重が一時的に減るのを確認しています。彼自身の実験において、研究チームを構成する内科医、心理学者、その他の総勢15人の体重が、合計で12キロほど減りました。

O:面白いね。物質化ダイエットか。「確実に体重の減る交霊会」とか銘打ったらたくさんの人が集まるだろうな。

ヴィ:教授、私はまじめに話しているのですが。

O:おお悪い。とてもそうだとは思えなかったんで。

ヴィ:自分にとって異質な知識に接したとき、教授のような反応を見せる人たちがたくさんいます。そしてこのような人たちこそが、科学の進歩を遅らせ、人類の成長をも遅らせてきた張本人なのです。

O:言ってくれるね。そこまで言うのなら、私の体重も少し減らしてくれんか。最近少し太りぎみなんだよ。

ヴィ:どうしてそう短絡的なんです。だいたい交霊会中に体重が減っても、終われば戻ってしまいますよ。もっと科学的な態度で話を聞いてください。

O:だって、ヴィクターが科学的な話をしているとはとても思えないんだよな。

ヴィ:教授、出ていってください。そして念力計でも試していてください。

O:待ちなさいよ。私は君に本当の科学を・・・。 

***ヴィクターはついにO教授を部屋から追い出してしまった***

ヴィ:さあー、これで意味の無い茶々を入れる人はいなくなりました。落ち着いて聞いてもらえます。

 もう一人、エクトプラズムについて広範囲にわたる研究を行なったのは、パリのソルボンヌ大学生理学教授、ノーベル賞受賞者でありフランスの権威ある研究所のメンバーであったシャルル・リシェ教授です。手術の間に外に取り出されている器官を指し示すギリシャ語「エクトプラズム」という言葉を、この未知の物質に対して用いたのは彼です。その観察によれば、エクトプラズムは始め、目に見えなく触ることもできませんが、この状態でも赤外線カメラで撮影可能で重量を測ることもできます。次にそれは蒸気または液体、ときには固体になり、オゾンのような匂いを発します。最終的にエクトプラズムが見たり触ったりできる状態になると、見かけはカーテンの布地として使われるモスリンのようで、触るとくもの巣の束のような触感があります。ときには湿っぽくて冷たく、まれに乾いて固い状態にもなり、その温度は通常、およそ華氏40度(約4.5℃)です。リシェはこう結論付けています;

「エクトプラズムの出現が純然たる科学的事実であることを示す、十分な証明が存在します。確かに我々はこの物質を理解していません。しかしこの研究が非常にばからしいというのは、この世にばかばかしい真実があると言っているようなものなのです。」


 クロフォード教授は、彼が調査した霊媒たちは皆、テーブルを浮かせたりものを引き寄せたりするのに、エクトプラズムで杖や支柱、カンチレバーを作り出したのを発見しました。彼の著書「心霊現象の構造」には、エクトプラズムがテーブルを持ち上げるのに使われている写真が載っています。機械工学の教授として、彼はこう書いています;

「すべての力学的結果は例外なく、霊媒の体から交霊会の会場へと伸びる梁の力学として考えたときに納得のいくものだった。」


 エクトプラズムの鍵となる性質のひとつに、ある種の形状をとっているときは非常に光に感じやすい、というものがあり、光をちょっとでも当てると、まるで伸ばしきったゴム紐が元に戻るように霊媒の体へと戻っていきます。こういう事態が起きると、霊媒の体に打ち傷や切り傷が現れたり、傷口から出血したりします。イギリスの心霊科学関係の大学で行なわれた交霊会において、出席者の一人がエクトプラズムに乱暴に触れたとき、霊媒エヴァン・パウェル氏は即座に胸に重傷を負いました。この光に対する敏感さのために、ほとんどの霊媒は暗闇か赤外線の中で作業しなければなりません。しかしながら、何人かの素晴らしい例外がいました。これから、懐疑論者たちが決して却下することができない、三人の驚嘆すべき物質化霊媒の例を紹介します。

 この続きは、来週、教授を交えてお話ししましょう。正直言って私は楽しみです。あの機械は確かに動きます。その事実に向かい合うとき、教授は何を言い出すのか・・・。

***翌週***

ヴィ:教授、どうしました。機嫌が悪そうですね。先週、追い出したことをまだ怒ってらっしゃいますか。

O:いや、あれは、別に、どうでも、   、いいことだ。

ヴィ:でも、すごく不機嫌そうですよ。そういえば、念力計はその後どうです。

O:・・・。

ヴィ:あの念力計のメーターが意識によって動くことがわかったんですね。

O:まだ結論は早い。それよりこの前の続きを聞かせて。

ヴィ:いい傾向です。自分が今まで学んできたことを見つめ直す気になってきたようですね。

O:そんなことは言っとらん。

ヴィ:いいんですよ。それでは実在した物理霊媒の話に移ります。

 ダニエル・ダングラス・ホームはスコットランドに生まれ、合衆国で育った物理霊媒です。1854年から1874年までの20年間、彼はイギリスとヨーロッパで友人・知人たちのために交霊会を開きましたが、それに対して金銭を受け取るのは拒否し続けました。彼はヨーロッパでも特に注意深く観察された霊媒であるにも関わらず、この期間中に何らかの不正行為が見つかるということは全くありませんでした。交霊会には上流階級の人々、アルフレッド・ラッセル・ウォレス、ウィリアム・クルックス、フランシス・ガルトンといった文学の巨匠や傑出した科学者たちが出席しています。イングリスの心霊研究の歴史にはこう書かれています;

「有名な奇術師たちも交霊会の種を明かそうと訪れたが、皆、落胆して帰っていった」


 ホームのきわめて突出した特徴は、日の光やガスライトの下で、初めて訪れた家の中でも現象を起こすことができた点です。このような状況下で彼は;


 一連の交霊会を続けるうちに、ホームは実験室でその力を再現するように依頼され始めました。ロシアのアレクサンダー・フォン・ボートレロー、イギリスのウィリアム・クルックスがそれぞれ行なったテストにおいて、彼は各種の計量機械で計ることが可能な念動効果を生み出しています。

 教授、聞いていますか?

O:ん、そんなおとぎ話を熱心に聞いてもしょうがないだろう。

ヴィ:言ってくれますね。でも、白状してくださいよ。念力計は動いたのですよね。

O:ヴィクター、あの機械はいったい何なんだ。私が自分でやったときは、念じた覚えも無いのに動き出したりしてなんだかわからなかった。でも自分の意識と、メーターの動きとの間にある種の相関があるのは感じた。で、何人かの学生に持ち帰らせたらみんな動いたと言ってな。その中でひとり優秀なのがいた。この男は私の目の前で自由に動かしてくれたよ。あれだけ見事にやられると、この機械は確かに意識に反応しているとしかいいようがないな。

ヴィ:それではもう一度質問します。教授は意識がものを動かすことができる事実を信じますか?

O:あー、そうだよ。信じるよ。こう言えばいいんでしょ。「私は意識がものを動かすことができる事実を認めます」とな。

ヴィ:素晴らしい!

O:だからって、意志の力で体を浮かせるなんてのは別の話だ。

ヴィ:どうしてです。念力計の延長に物理心霊現象があるとは思えないのですか。

O:それはりんごを持ち上げられるなら、トラックも持ち上げられるだろうと言っているようなものだ。

ヴィ:しかし教授は今まで、りんごを持ち上げる力も完全に否定して来たのです。この機会に是非、今まで無視していたこの方面の物理に首を突っ込んで欲しいものです。

O:このSさんは論文を出しているのかね。

ヴィ:ええ、何点か公になっている初期の論文と、彼の研究会の会員だけが読めるものとがあります。これがそうです。

O:どれどれ。何、タキオン? いきなり読みたくなくなる言葉が出てきたな。

ヴィ:確かにこの言葉は、一部の人々にわけのわからない使い方をされているため、怪しい言葉になってしまっています。愛を運ぶタキオンとか。でも教授ならこの言葉の正しい意味をご存知ですよね。

O:相対性理論によれば光より遅い我々はどんなに加速しても光より速くなることはできない。しかしもし仮に光より速い粒子があったとしたら、それは光より遅くなることはできない。こうした、常に光以上の速度で動く超光速粒子をタキオンと呼ぶ。この存在は理論的には許されるが、決して実在するものではない。

ヴィ:待ってください。いったい誰が、タキオンが実在しないことを証明したのですか。

O:誰もしとらんが、だいたいそんな存在はあり得ないだろう。

ヴィ:しかし、タキオンが存在するという仮定の元に作り上げた念力計が、実際に動いているのですよ。

O:ううむ。

ヴィ:とにかくSさんの理論を読んでみてください。

O:そうすることにしようか。

弁護士の論じる死後の世界


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