
第8回
●「紅白歌合戦」で聴きたかった曲●
1999年、50回の節目となった「紅白歌合戦」は、前回に比べて視聴率が6.4ポイント下がり、50.8%だったそうです(第2部、関東。ビデオリサーチ調べ)。
僕は毎回、「紅白」の視聴率が出ると、スタッフに感情移入して一喜一憂します。だから、6ポイント以上も数字が下がったのは、悔しく悲しい。とはいえ、長い目で見れば、これは「変動の範囲内」だと思います。前々回の1997年は50.7%で、それに比べれば、今回はまだしも高いのですから。また、地域によっては、仙台・静岡などのように、前回より今回のほうがなお高いところもあります(すべてビデオリサーチによる)。
余談ですが、静岡や名古屋での「紅白」の視聴率は、毎年比較的高いのです。これ、どうしてでしょうね。東海地方は、「紅白」を好む風土があるのかな。それにひきかえ、北海道や九州北部の視聴率は、毎年低調です。この違いは何によるのでしょう。サンプルに問題があるわけではないと思いますが。
今回、視聴率が振るわなかった一番の原因は、何といっても、宇多田ヒカル嬢に出場を断られたことだろうと思います。郷ひろみがゲリラライブを敢行し、SPEEDが解散を決め、「モーニング娘。」が「LOVEマシーン」で人々を元気づけた1999年、「紅白」の見どころはけっこうあったといえます。しかし、ヒカルちゃんにあれだけ派手に振られては、視聴率に影響しないわけがない。海老沢会長が「今回は50%行けばよいほうでは」と予言したことが、悲しいかな的中してしまいました。
出場を辞退した歌手に対する恨みつらみは、すでに「『紅白』に出ない人々」に書いたので、もう繰り返しません。しかし、それにしても「Automatic」を「紅白」で聴きたかった。宇多田ヒカルのない「紅白」は、ミルクを入れない紅茶のようなものでした。
この際、「死児の年を数える」ようですが、「過去、『紅白』で聴きたかったのに聴けなかった曲」一覧を作ってみました。実際の出場歌手・曲目と比べてご覧ください。「大ヒットし、エポックメイキングとさえ言いうる曲なのに、ついに『紅白』で歌われなかった曲」と思うものを挙げてみました。
1990 |
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1991 |
CHAGE&ASKA 「SAY YES」 |
1992 |

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1993 |
CHAGE&ASKA「YAH YAH YAH」/松任谷由実「真夏の夜の夢」/サザンオールスターズ「エロティカ・セブン」/THE虎舞竜「ロード」 |
1994 |
Mr.Children「Innocent World」/広瀬香美「ロマンスの神様」 |
1995 |
スピッツ「ロビンソン」/サザンオールスターズ「あなただけを〜Summer Heartbreak〜」 |
1996 |
Puffy「アジアの純真」/久保田利伸withナオミ・キャンベル「LA・LA・LA LOVE SONG」/今井美樹「PRIDE」 |
1997 |
KinKi Kids「硝子の少年」 |
1998 |

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1999 |
宇多田ヒカル「Automatic」 |
このほか、B'zとかZARDとかもあるのでしょうが、これは僕がよく知らないため判断不能。だって彼ら、顔を見せないんだものな。
表に挙げたもののうちでも、僕が重要だと思う度合いにはばらつきがありまして、THE虎舞竜「ロード」なんかは、必ずしも不可欠というほどではないかな、と思います。でも、チャゲアスの「SAY YES」、ミスチルの「Innocent World」、広瀬香美「ロマンスの神様」、スピッツ「ロビンソン」、Puffy「アジアの純真」、そして宇多田ヒカル「Automatic」は、絶対に欠いてはならないはずのものです。「紅白」にこれらがないなんて信じられません。
表中には年によって空白がありますが、それは「紅白」が主だった曲を確保していたと思われる年。前回1998年など、僕は人選に不満を言っていましたが、よく考えてみると、ぜひ聴きたいと思う曲は「紅白」で聴けたのでした。実際にこの年は高視聴率だったのですが、充実した出場者・曲目と無関係ではないでしょう。
そういうわけですから、次回は、大事な歌手に逃げられないよう、スタッフにぜひお願いしたいもの。歌手を「うん」と言わせるノウハウの蓄積って、NHKにはないのでしょうか。「紅白」は歌謡史の1ページ、その歴史に欠落があっては困る。どうか、いろいろ知恵を出していただきたい。
(2000.01.05)
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