否も応もなく、僕はボウリングへの誘いを受けました。しかし、どうする、約束は明日なのだ。ひそかにレッスンに通う余裕もない。みすみす恥をかきに行くことになるのか。
ここは、書物に助けを求めるしかありませんでした。本というものは不思議な力があります。今回も、何か解決策を提示してくれるはずだと思われました。
僕の部屋には、だれにもらったか『ボウリング入門』なる新書本がありました。今はこの本だけが命綱。第1ページ目から、なめるように活字を追って行きました。
筆者のいうとおりに、投球フォームをまねてみる。「ボールは図のような軌跡を描いてころがるので……」なんて記述があると、目を閉じてそのイメージを思い浮かべてみる。その実、僕はボールもピンも、本物を見たことすらないのでした。
これでは「畳の上の水練」ならぬ「畳の上のボウリング」です。でも、畳の上だろうが何だろうが、今はやらねばならぬ。タイムリミットは近い!
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