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きょうのことばメモへ三省堂国語辞典
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99.05.12

キレイをつくる

 「きれいだ」はいわゆる形容動詞で、ふつうは「きれいだ」「きれいだった」「きれいである」「きれいになる」「きれいな人」のように、「だ・で・に・な」などの活用語尾をつけて使われます。
 ところが、最近は「だ」を取って、「きれいを〜」というふうに名詞として使う例が増えてきています。美容関係の広告などから広まったのでしょうか。

からだのキレイをつくる
メタボ成分でトリプルケア(キリン「メタボ・ウォーター」ラベル 1999.05.09 東京中野で採集)

といったぐあいです。
 インターネットで調べると、まだまだ出てきます。『きれいを約束する好感ヘア255』(主婦の友社、1998)などという本もありました。
 埼玉県北本市に住む人から教わった例では、新聞に挟んであったチラシにこうあったとか。

素敵を贈る「母の日」(ダイエー・折り込み広告 1999.05.05)

 「素敵」も、「きれい」と同じく、「素敵だ」とか「素敵な」というふうに活用語尾を付けて使うのがふつうで、「を」が付くのは珍しい。もっとも、「まあ、きれい」とか「まあ、素敵」と、感動したときには「だ」も「な」も付きませんが。
 「きれい」は典型的な形容動詞のはずですが、「だ」や「な」などが取れて、「きれいを」「きれいが」などと使われる例が多くなると、名詞との区別は薄れてきます。そうすると、「きれいだ」のように活用語尾を付けた形で1単語なのか、「きれい」だけで1単語かという問題が起こってきます。
 中学生は、先生から「文を単語に分けなさい」という問題を出されて、点数をつけられます。しかし、これは可哀相なことかもしれません。
 日本語にも、「単語」というものはたしかにあると思います。でも、正確にどの部分までが1単語かとなると、「きれい」の場合のように、なかなか認定が難しいのです。日本語の単語とは、まるで近づくと見えなくなるシンキロウのようなものです。
 学校では、「書い|て|おく」は3単語、「書い|とく」は2単語だと教えられます。しかし、「とく」が1単語なら、「ておく」も1単語で悪くはないでしょう。場合によっては、「書いておく」全体で1単語と主張することもできそうです。
 どこまでが1単語かということは、文法を考えるうえでは、実はどれも大差なくて、具体的に問題になるのは、索引を作ったりするときぐらいのようです。


追記 「文字のスナップ」052に関連写真を載せてありますので、このページにも引用しました。(2001.08.12)

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